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桂木丈助のヤキモチ

「はあー。楽しかったね、ジョー。」


「ああ、凄く凄く楽しかったよ。倫」


帰宅した俺と倫は、笑い合った。


「あのさ、ジョー」


「何だ?」


俺は、コーヒーを淹れる。


「上條に聞いたんだよ。男同士の事」


「うん」


「ジョーは、私を抱きたいの?それとも、私に抱かれたいの?」


俺は、倫にコーヒーを渡す。


「さあ、そんなの考えた事もなかったよ」


「そうだよね」


「倫は、どっちがいいんだ?」


「わからないんだ。どっちとか、そんなのは…。」


「そっか、じゃあ、あれだな。どっちも試してみるとかしかないな」


「そうなるよね」


倫は、コーヒーを飲み始めた。


「なあ、倫」


「うん?」


「指輪、買いに行かないか?」


「何で?」


「嫌、上條さんと浜井さんの指に光ってるの見てたら羨ましくなってさ」


「いいよ。仕事中は、つけれないけど…。構わないよ」


俺は、倫を足の間に引き寄せた。


「ジョー、どうした?」


「上條さん、倫の事好きだったよな?」


「どうして?」


「上條さんが、倫を見る顔がそんな気がした。それに、俺には入れない二人の世界があった。」


俺は、倫の右肩に顎を乗せる。


「それは、私も医者だったからだよ。それに、上條は私の事情も全て知ってるから…。ほら、話しただろ?彼女の事。それも、上條は知ってるから。だから、別に特別とかそんなのはないんだよ。」


「でも、上條さんはスマートだろ?俺みたいなおっさんじゃないし…。俳優さんみたいだし。白衣だって、めちゃくちゃ似合ってるし。声だって優しいし…。人として素敵な人だから…。敵うところ何て、俺には一つもないよ」


倫は、俺の方をくるりと向いてコーヒーを置いて、顔を覗き込んだ。


「馬鹿だなー。ジョーが、上條に敵わない所なんて一つもないんだよ。」


そう言って、ニッコリと笑った。


「そうなのか?」


倫は、俺のコーヒーカップをテーブルの上に置いた。


「そうだよ、ジョー」


「俺、キスちゃんとしてみたい」


今時なら、小学生でもしてそうなキスを俺は倫にねだっていた。


「確かに、頬にキスしかしてなかったよね」


「うん。だから、倫からしてくれないか?俺だけ、ヤキモチ妬いてカッコ悪いから」


「ジョーは、カッコ悪くなんかないよ」


「倫。キスする前に一つだけ聞いてくれるか?」


「うん、何?」


「俺ね、本当に蕪木の奴隷をやめれた事。倫に、感謝してるんだよ。俺には、普通の人生はあり得ないって思ってたから…。蕪木に支配されて一生が終わるって思ってた。俺の、心の叫びを受け取ってくれてありがとう」


「ジョーの人生が、幸せになれてよかった。私は、それだけでここに来てよかったと思える。」


倫の頬に、涙が流れてくる。


「泣くなよ、倫」


「私も、一つだけ言っていい?」


「何?」


「ジョーと出会っていなければ、

私の人生はこんなに幸せじゃなかった。医者としての人生が終わってからは、彼女への贖罪を探して生きていくつもりでいた。あの日、私の受け持っていた患者さんが急変しなければ、約束の時間よりも早く彼女に会えた。事件が起きる前に、彼女に会えた。そう思えば思う程に、医者ではいれなかったんだ。」


倫の目から、どんどん涙が流れてくる。


俺は、優しくその涙を拭う。


「あの日、ジョーが私に助けを求めた。それは、まるで神様がくれた最後のプレゼントに思った。もしかしたら、この人を助けれたら世界が変わるかもしれない。きっと、上條はそれに気づいてくれたんだ。だから、救急車から降りた私にやるか?と聞いた。私は、すぐ頷いた。手術なんか、一年はしてなかったのに…。それでも、必死だった。そして、ジョーは生きてくれた。今、ここにジョーがいる。それだけで、私は幸福に包まれてるんだよ」


倫は、俺の目から流れる涙を拭ってくれる。


「それが、倫の多幸感か?」


「そうだね。私は、ジョーが生きてるだけで嬉しくて幸せで、胸が締め付けられて…。言葉だけじゃいい表すことが出来ない感情が湧き出てくる。その感情に名前をつけるなら、多幸感なのだと思う」


俺は、倫が撫でてくれる手を掴んだ。


「倫、キスしてくれる?」


恥ずかしすぎて、倫と目が合わせられなくて俯く。


「こっちを見て」


倫は、ニコって笑ってくれた。


涙のせいで、倫がキラキラ光っていて…。


心臓の鼓動が速くなるのを、耳元で感じる。


「倫」


「ジョー」


倫は、ゆっくりと俺の唇に唇を重ねてきた。


頬にされた時以上に、幸せが広がっていくのを感じる。


倫は、優しく唇をなぞるように動かす。


そして、ゆっくりと舌先で俺の口を開ける。


息が、倫にかかってるのを感じる。


倫の口の中の熱をダイレクトに感じる。


キスだけで、こんなに幸せで気持ちがいいと思ったのは彼女としたキス以来だった。


倫は、ゆっくりと唇を離した。


「ジョー、泣いてるの?」


「彼女としか、こんな幸せなキスを味わった事がなかった。だから、俺は倫の事、相当愛してるみたいだ」


倫は、俺の涙を拭いながら言う。


「私も、彼女としたキスでしか味わった事がなかった感情(きもち)を感じた。ジョー、私もジョーの事を凄く凄く愛してるみたいだよ。次は、ジョーからしてくれないかな?」


俺は、倫の涙を拭いながら頷いた。


倫、何度だってしよう。


俺達は、俺達らしくゆっくりと進んでいけばいい。


俺達は、少年のように、何度も、何度も、覚えたてのキスを繰り返した。




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