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健斗の家族

気づくと僕は、寝てしまっていた。


目が覚めて、ニュースを見ていた。


僕達のニュースが読み上げられる。


【昨日、夜22時半ごろに……の桜並木で事件が起きました。……亡くなったのは、前原雄一さん、並木望絵さん、三人の方が重体です。犯人は、その場で逮捕されました。逮捕された一人の少年は、「彼女に振られてムシャクシャしていた」と答えたと言う事です。もう一人の少年は、「殺すつもりはなかった」と答えているという事です。】


淡々と起きた出来事を話すニュースを消した。


少年…少年…少年


頭の中で、加害者の名前が出ないことにイラついていた。


そして、少年だった事にイラついていた。


「あぁー、くそっ」


ソファーを殴りつけた。


健斗さんのスマホを取り出した。


暗証番号、暗証番号…


「やっぱり、これだった。」


スマホの暗証番号は、0325。


昨日の日付、健斗さんが、僕にプロポーズのような同棲を告げた日付。


僕は、健斗さんの鞄の中身をあさる。


こんな事、一度もした事はなかった。


四角い箱が、手に当たった。


赤いリボンが巻かれた、その箱を手に取った。


スルスルとリボンをほどきあけた。パカッ…。


「馬鹿だな。」


並んだ二つのリング


近くにあった、紙を見つけた。


【凌平と夜桜、帰宅してプロポーズ、指輪を渡す】


とプランが書かれていた。


「健斗さん、馬鹿でしょ」


僕は、その箱をテーブルに置いた。


スマホを見つめた、電話帳を見つめる。


スクロールして、とめた。


《冴草優斗》と書かれている。


健斗さんは、一人っ子だったからこれは、父親だ。


僕は、自分のスマホから電話をかける。


プルル、プルル、プルル


『はい』


「あの、私、浜井凌平と言います。冴草健斗さんの職場のものです。お父様でしょうか?」


『はい』


「冴草さんが、昨夜暴行をされまして…。今、……病院に入院中です。脳に損傷が酷いようで、ご家族を呼んで欲しいと言われまして」


その言葉に、その人は鼻で笑った。


「あの」


『死んだら、葬式しないで。火葬場、直葬で。健斗が、死のうが生きようが、私も家内も興味がありません。健斗が、16歳で家を出た時に家内は妊娠してまして。私達には、子供はその子しかいません。同性愛者である健斗は、我が家の子供ではありません。どうぞ、お好きにして下さい』


「会いに来られないという事ですか?」


『会いに行くもなにも、健斗は私達の子供ではありません。もう二度とかけてこないでいただきたい。健斗が、どうなろうが関係ありません。むしろ、こんなに早くいなくなってくれるなんて感謝しかありません。』


「あの」


『失礼します』


プー、プー


毒親じゃねーかよ。


僕は、怒ってスマホをテーブルにバンッと置いた。


【テメー。男が好きだったのか?凌平】


僕の父親と似ていた。


【母さんが亡くなって、言っていい冗談と悪い冗談の区別もつかなかったのか?】


ドンッ


蹴りあげられた腹の痛み。


【本当なんだな。テメーは、俺の息子じゃねー。気色悪い、二度と顔見せんな。志歩、行くぞ】


お前だって、母さんが亡くなって半年で知らない女を家に連れてきたじゃないか


志歩と呼ばれた、その女と父親は僕が、17歳の春に出ていった。


春に、母の病気がわかり、春に父親が出ていった。


春は、いい季節じゃなかった。


「凌平、春をいい季節にしてやるよ」


僕の為に、健斗さんは春をいい季節にした。


交際を申し込まれたのは、母の病気が発覚した3月8日だ。


初めてのキスは、3月15日だ。


同棲をしようと言われたのは、3月25日だ。


初めて、一つになったのは、4月18日だった。


初めての旅行に行ったのは、5月1日だった。


健斗さんは、僕の春をいいものにしようとしていた。


殴られたのが、3月25日。


春は、また不幸を呼び寄せる季節に変わった。


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