過ぎ去る日々
翌朝、目覚めると先生はいなかった。
今みたいに、手軽にスマホなんて時代じゃなかったから…。
私は、先生の帰りをただ待っていた。
代わりでいいと望んだくせに、目覚めて先生がいないと寂しさに押し潰された。
テーブルに置かれた鍵が、【いつでもお帰り下さい】と言っているのに、私は帰らなかった。
私の世界の中で、先生はやっぱ中心にいて
この場所を手放すぐらいなら、早乙女先生が目覚めなくていいって思っていた。
どんな風に早乙女先生に、キスをするの?
どんな風に、早乙女先生に触れるの?
私とは、違うんでしょ?先生…
立ち上がった瞬間に、ズキンと足に痛みが走った。
「イッッタ」
足首を押さえながら、うずくまった。
「先生、先生。私を置いてどこにいったの…。」
涙がボロボロと止められなかった。
ガチャ…
グショグショの顔を上げた。
「大丈夫か?痛かっただろ?」
先生は、私をソファーに座らせた。
「どこに行ってたの?」
「早乙女先生のとこに行って、円香の手当てするものを買って、ご飯の材料を買って、帰ってきたんだ。」
「先生、私を捨てないで」
「捨てないよ」
先生は、私の足を手当てしてくれた。
「湿布貼ったから、マシになるといいけど…。冷蔵庫に直してくるね」
先生は、冷蔵庫に食材をしまっている。
「先生、私を捨てないで」
その姿を見つめながら、ボロボロと泣いていた。
「円香、どうした?」
「先生、私を嫌いにならないで」
「どうした?」
急に、先生の姿を見ているとあの日桜の木にやったおまじないの事が、申し訳なくてたまらなくなった。
先生は、あの事を知ったら私を嫌いになる。
急に、そう思った。
「先生、私を許して」
「円香、どうした?」
先生は、私をギュッと抱き締めてくれた。
「先生、愛して欲しいとは言わないから…。私の初めてを全部もらって…。お願い、お願い先生」
「円香、わかった。わかったよ」
先生は、私を抱き締めてくれた。
私は、やってはいけないお願いをしていた事に気づいていなかった。
若かったからだと思う。
あっという間に、一週間は過ぎてしまった。
私は、家に帰った。
それでも、夏休み中は何度も何度も先生の家に足を運んだ。
この事を知ってるのは、上條だけだった。
そんな夏休みは、あっという間に終わった。
始業式が、終わった教室で私は上條と居た。
「もう、したか?」
「変態だね」
「悪い」
「上條は?気持ちよかった」
「初めては、怖かったよ。すごく…。」
「やっぱり、そうだよね」
「それでも、伊納はしたいんだろ?次に、いきたいんだろ?」
上條は、私の髪を撫でてくれた。
「なにしてんの?」
「いいから、いいから」
今、教室に誰かやってきたら上條とキスしてると思われてしまうぐらいまで上條は、顔を近づけてきた。
ガラガラ…
「お前ら、いい加減に帰れよ」
ガタン…
私は、驚いて机に膝をぶつけた。
「前野先生、さようなら」
上條は、私にだけ見えるようにVサインをした。
「伊納は、もう少し残るだろ?」
「えっ?」
「じゃあ、俺は、帰るから」
上條は、教室を出て行った。
「わ、わ、私も帰ります」
立ち上がって、帰ろうとする私を先生は引き寄せた。
「上條と付き合ってるのか?」
「えっ、そんなわけないじゃないですか」
「じゃあ、何でキスしてた?」
先生からのヤキモチか何かを初めて感じた。
上條は、私がどうされたいのかを理解してくれていたんだ。
「キスなんか、先生としかするわけないじゃないですか」
「嘘つくな」
「先生っっ」
先生は、私にキスをした。
のちに、この出来事が、大事になる事を私は知らなかった。
「もう、終わるから帰ろうか」
「うん」
先生は、そう言うと急いで鞄を持ってきた。
私は、先生の車で帰宅する。
「先生」
「今週の土、日、泊まれるか?」
「はい」
「円香の、望みに挑戦してみよう」
「はい」
私は、先生に抱きついてキスをした。




