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私の恋

電話を切って、校庭に走った。


早乙女先生の体を、上條は必死で支えてる。


そこに、前野先生がやってきていた。


「紐を切るものを探してきてくれ、上條」


「わかりました」


上條は、走ってきた。


「縄切れるものってあったかな?」


「用務員室じゃない?」


「ああ、行ってくる」


私は、前野先生に近づいた。


「早乙女先生は?」


「まだ、大丈夫だ。息はしてる。上條のお陰だ。」


前野先生は、ボロボロ泣いている。


こんなに、早乙女先生の事を愛しているんだ。


もしかして、桜木さんのせい?



「先生、持ってきました」


上條は、枝を切る鋏を持ってきた


「そこを、切れるか?」


「やってみます。」


上條は、何度も何度も繰り返す。


やっと切れた。


前野先生は、ゆっくりと早乙女先生をおろした。


救急車がやってきた。


早乙女先生は、まだ息があった。


上條のお陰だった。


『君が望んだ事だよ。伊納円香』


耳元で、聞こえた声に振り返ったけれど、誰もいなかった。


加奈枝(かなえ)加奈枝(かなえ)


前野先生が、早乙女先生をおろしてすぐにキスをしたのを私と上條もハッキリとこの目で見た。


おまじない何かで、引き離したって無駄だったんだよ


早乙女先生は、救急車に乗っていって、前野先生は警察を呼んだ。


殺してくれなんて、頼んだ覚えはなかった。


「上條、手、大丈夫?」


「ああ、大丈夫だよ」


上條の手は、縄で擦れて血だらけだった。


「保健室行こう」


「いや、行かない」


「上條」


「ごめん、大丈夫だから」


上條は、あの日から保健室が大嫌いだった。


「待って、水で洗ってハンカチで縛るから」


「ありがとう」


水道の蛇口で、上條は手を洗った。


「イッ」


「大丈夫?」


「大丈夫、大丈夫」


私は、上條の手にハンカチを巻いた。


その日も、また自習多めで学校は終わった。


「前野先生、早乙女先生は?」


「今から、病院に行く。二人も来るか?」


「はい」


私と上條は、前野先生についていった。


車で、病院に連れてきてもらった。


一時心肺停止だったけれど、持ち直したらしい。


あんな、おまじないをした自分を呪ってやりたかった。


「俺は、外にいるから」


上條は、前野先生と二人で病室に入れと言ってくれた。


私と前野先生は、ICUと書かれた場所にいた。


看護婦さんに、これを着てと言われたものを着て、入った。


「加奈枝、加奈枝、死なないでくれ。俺を置いて行かないでくれ」


前野先生は、ボロボロ泣きながら早乙女先生の手を握っていた。


私は、人としてのズルさ


嫌、女としてのズルさをこの時初めて使った。


前野先生の体にわざとらしく、くっついた。


「大丈夫か?伊納」


「急に、怖くなってきて、すみません」


大嘘だ。


「先に出るか?」


「いえ、大丈夫です。」


泣いていたのは、本当


「手を繋いでてもらっていいですか?」


「わかった」


わざとらしく手を震わせて、前野先生に握ってもらった。


「ごめんなさい。もっと、早く、私と上條が見つけていたら」


「二人のせいじゃないから、気にするな」


前野先生の、反対の手は早乙女先生の手を握っていた。


「出ますね」


私は、急に自分がやってる事が惨めになり病室を出た。


「伊納」


「上條」


「好きなら、今、伝えろよ」


「はっ?何、言ってんの?おまじないのせいだよ」


「そんなの関係ねーよ。前野先生が弱ってる今だから傍にいれるんだろ?結斗みたいにいなくなったら何も出来なくなるんだ。早乙女先生が、目覚めるまでだけでも傍にいさせてもらえよ。なっ?伊納」


「上條、私最低だよ」


「人を好きになるって、最低な人間になっちまうんだよ。きっと」


上條は、そう言って肩を叩いた。


「俺、先帰るから。ちゃんと気持ち伝えろよ?わかったな?弱ってる時が、一番。だろ?」


自然の摂理か


弱いものは、喰われてしまう。


弱ってる前野先生は、私に喰われてしまうのだ。


「伊納、上條、送ろうか?上條は?」


「いなかったです。」


とっさに嘘をついた。




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