ダンジョン
次の日。普段と特段変わったことも無く朝を迎えた。
もっと騒ぎになっていると思ったんだがな。
今日は予定通りダンジョンに行くらしい。俺も。まあ元はと言えば俺が作ったダンジョンだし、問題は無いだろう。
「今日はいよいよダンジョンに潜るッ!」
ランド団長の声が少し硬い気がする。
「いいか?ダンジョン内では命を落とす可能性も十分にある。全員、気を抜くことの無いようにッ!!!」
死ぬかもしれないと聞いてクラスの1部の人が青ざめる。しかし、ほとんどの人はダンジョンに入れる興奮からかランド団長の注意もほとんど聞いていないようだった。
「ここからは油断したら命取りだ。確かにお前らは強い。だが───」
確かにクラスメイト達のベストの力なら魔物など大したことないだろう。
「───命の取り合いとなれば、お前らは未熟だ」
ここで手を挙げる者が一人。
「なんだ、美香」
「どうしてここに真央がいるんですかっ!?」
俺はこの中で唯一の非戦闘職。美香が心配するのも無理はない。それに我らが生徒会長も。
「そうです。ダンジョンは危険なんですよね?そんなところに真央を連れて行って大丈夫なんですか?」
それに対し、ランド団長は少し申し無さげに、
「安心しろ、何があっても俺が守る」
その言葉通り、俺は今まで1度も戦っていない。2階層にいるのはモンスターと呼んでいいのかすら分からないうさぎさんのみ。
しかし。
「真央怪我はないかっ!?」
「回復魔法いるっ?」
親友2人がものすごく心配する。さらに、
「真央殿の半径3m以内にはモンスターは入れさせんッ!!!」
ランド団長自らが守ってくれるという高待遇。
俺は今ものすごく叫びたい。
───俺だって少しは戦いたいんだよッ!!!
せっかく力が戻っても使ったのが厨房の掃除と瞬間転移1回って・・・・・・
なんか魔力が泣いてる気がする。
「ここらで一旦休憩にするぞッ」
その時、俺の気配察知が反応した。
───アイツが動き出したか
実の所さっきから存在は気がついていた。動かないので放っておいたんだが。
アレはランドでも厳しいかもな・・・・・・
まぁいざとなったら俺がでるか。
「・・・・・・ッ!?全員警戒ッ!!!」
ランドが珍しく焦った声をあげる。最初はぽかんとしていたクラスメイト達だが、ランドの本気の表情を見てすぐに戦闘の体制を整えた。
「ナニ・・・・・・アレ・・・・・・・・・あ、あんなのッ、むっ、むり・・・・・・・・・聞いてないっ、あんなのがいるなんてッ!!!」
次に察知したのは魔法特化の梨沙。軽く恐慌状態に陥っている。
ソレはゆっくりと姿を現した。禍々しい鎧を纏った首なしの騎士。
「アレだ・・・俺たちがこのダンジョンを攻略できなかった理由・・・・・・«デュラハン»・・・・・・アレは戦っちゃいけねぇ・・・・・・・・・」
最強の男ランドでさえも手も足も出ない強さを持つ魔物。
「退却だっ!!!俺が足止めするッ!!!後ろを見ず全速力で出口まで走れッ!!!」
ランド団長の声を聞いて全員がいっせいに駆け出す。
「あっ」
───やはりか
「団長が・・・やられた?・・・・・・」
───アイツはデュラハンの«亜種»だ