訓練
「もうお前らに教えることはない」
「「「大将・・・・・・」」」
「だがこれからも練習は怠るなよ」
「「「ありがとうございましたッ!!!」」」
そんなこんなで下働きの者の食事が王族の食事よりも美味しくなっていた頃。
真央は珍しく訓練に参加していた。
今日の訓練の内容は主に模擬戦。シン達4人は騎士団長ランドと対戦している。
シンと龍介が攻撃し、危なくなったら梨沙の絶妙な援護が入る。また、美香によるバフもかかっているため、攻守ともにかなりいい立ち回りだろう。
それでも。
このランドと言う男は只者ではなかった。195cmを超えるがっしりとした体つき。更には身の丈ほどもある大剣を木刀のように振り回す筋力もある。
「オラァッ」
龍介の無理な攻撃で刹那の空白が出来た。それを見逃すランドではない。
「・・・・・・ッッ」
勝負は一瞬だった。
「勝者、団長!!!」
「お前ら強くなったな。今のは俺でも危なかったぞ」
悔しがるシン達にランドが声をかける。
「いえ、まだまだです。結局1発も当てれませんでした」
シンは控えめにこたえる。
「そう謙遜すんなって。事実、お前らはこの城で2番目に強い」
そんな話を盗み聞きしながら、俺は何をしていたかと言うと、
「ふっ、ふっ、ふっ」
ひたすら腹筋をやらされていた。
「ハハハ、調理師のお前に1番大切なのはなんだと思う?料理の腕か?食材を見極める力か?いいや違うッ!1番大切なのは・・・・・・筋肉だッ!!」
この人は騎士団の副団長をしている・・・・・・・・・俗に言う脳筋だ。それはもう、頭の中どころか頭蓋骨まで筋力で出来てるんじゃないかってくらいの。
なんだよ料理に筋肉って。お前の想像する料理はあれだろ、クリスマスチキン特大バージョン。
しかし腹筋しながら見たところ、クラスメイト一人一人がこの副団長レベルの強さ持ってるな。それにさっきの模擬戦はなかなか見応えがあった。特に梨沙の魔法だな。魔力操作だけなら俺の部下と同じくらいのレベルだ。
だからこそもったいない。
これは人類に共通することだが、術式に無駄が多すぎる。
俺が教えればもっと強くできるのにッ!それこそ四天に並ぶくらいにできるのにッ!!!
「ふっ、ふっ、ふっ」
それはさておき龍介。あれは動きに力が入りすぎだな。なんかこう、カッコつけてるのか?って言いたくなる感じの。好きな子でもいるのか?
「ふっ、ふっ、ふっ」
シンに関しては───
「そこまでッ!今日の訓練はここまでとするッ」
「「「ありがとうございましたッ」」」
ここでランド団長から終了の声がかかる。
俺の部屋は例の厨房のすぐ近く、要するにものすごく汚い場所にある。今は俺が掃除、改装したので、高級マンションみたくなっているが。
「真央、お疲れ様」
件の4人が話しかけてくる。
「おう、そっちもお疲れ」
「お疲れ様っ、真央ちゃんっ♪」
お、おう?訓練後なのに元気いいな。
「チッ」
なんか嫌われることしたか?
「そいやあ真央は普段どこで過ごしてるんだ?」
ん?俺は───
「秘密だ」
本格的な戦闘はもう少し先になるかなです