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あの夏の日の牛乳

作者: ひろーかそ

「じゃーんけーんぽん」


 俺はグー、他三人はチョキ!こうして俺は牛乳係を勝ち取ったのだった。


 夏休みにもう少し、暑さも厳しくなってきた頃、俺達五年三組はある作戦を決行した。


『牛乳を先生に飲ませよう作戦』、それも一週間前の牛乳をだ。


 俺たちの小学校では給食がある、その時に必ず牛乳がついているのだが、牛乳が嫌いで飲めない人だっている。


 だがそんな人達に無情にも先生は牛乳が飲めるまで外で遊ぶのは禁止だと、好き嫌いはいけないのだ、と言い放ったのだ。


 俺たち四人はクラスみんなの無念を晴らすため、ひいては自分のために、先生の牛乳だけ一週間前の物にすり替える!


 俺達だって先生に嫌がらせがしたかったわけじゃない、だが許せないのだ、先生はジャガイモが嫌いでシチュー、カレー、肉じゃがなどのジャガイモが入っている給食が出ると俺達給食係にこう言った。


「俺のはジャガイモ抜きで。大人はジャガイモ食べなくても生きていけるから」



 許せなかった……それからの俺達は入念に計画を実行した。


 まずは学校を休んだ人の牛乳を俺達の誰かが手に入れる、そして賞味期限の表示を一週間後に自然になるように慎重にボールペンで偽装した。


 一番キツかったのは牛乳係になった俺だ。


 作戦の肝とも言える牛乳は机の奥に保管してあったのだが、土日を過ぎて月曜に登校してくると、夏ということもあって教室は異臭騒ぎになっていた。


 正直俺はここで作戦の失敗を予感した。


 だがメンバーの一人がビニール袋を持っているというファインプレーに助けられ作戦の続行が告げられる。


 机の中から微かに漏れてくる異臭に俺は耐え続け、作戦決行の当日。


 この作戦はクラス全員に周知している、邪魔するものは何一つない。


 給食の時間になり次々と給食が配られていく、教室の中は緊張感に包まれ何時もある喧騒が一つもない。


 そしてとうとう牛乳が配られる、俺は机の中から慎重にビニール袋に入った牛乳を取りだす。


 この数日で異臭は消えている、だが牛乳パックがパンパンに膨れていた。


 だがそこは小学生、緊張感と作戦成功を幻視しニヤニヤを隠すのに必死で、牛乳パックがパンパンになっていることに気がつかなかった。


 俺が給食係と華麗に入れ替わり先生の机に牛乳を置いた瞬間、クラス全員の視線が牛乳に集まった瞬間。


 ストローを射す部分から牛乳が弾けた。


 異臭を放ちながら牛乳まみれになった俺は……小学校を卒業するまであだ名が『牛乳』になった。

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