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あれよあれよと流されるまま、小夜子さんを右脇に抱え、これまた高級そうなインテリアが溢れる部屋へと通される。
「聖女様のお世話をさせて頂きます、侍女のメアリでございます」
先ほどまでの周囲のざわめきはいつの間にか消え、その透き通るような声にはっと意識が現実へ引き戻される。
助かった、ひらすら繰り返される魔王にフルボッコされる自分(脳内シミュレーション)から解放された。
ピンと背筋を伸ばし、両手を前に揃えお辞儀をするメアリさんは、綺麗に切り揃えられた前下がりボブに、整った顔ながら少し冷たそうな表情がクールビューティなメイドさんだ。
生メイドさんだ。本物だ。
フリフリのミニスカではない、すとんとしたシルエットのロングスカートを上品に着こなす生メイド・メアリさんに思わず感動する。
「そちらの衣装ですと、城内では何かと目立ちますので、宜しければこちらで準備させて頂いたドレスをお召しになって下さい」
そんな彼女が指し示すのは、どう見ても高価そうなドレスが収められたクローゼットだった。
「どれでもお好きなものをお選びください」
お選びくださいって・・・
このなんちゃら姉妹かフジコちゃんしか着こなせなさそうな、このゴージャスドレスの中から?
上下スウェットすっぴん女の私が着るものを?
「あのー、私別にこのままでも・・・」
「お選びください」
「あ、はい・・・」
なんだかいたたまれなくなって、へらっと笑って誤魔化そうとしたが、クールビューティの氷の視線がそれを許してはくれなかった。
早々に諦めた私は、クローゼットの中から、一番ボリュームと露出の少ないワンピース調のドレスをなんとか見つけ出し、それに着替える。
着ていたスウェットと小夜子さんはメアリに回収されていった。
ああ、スウェットはいいけど小夜子さんは残して欲しかった。
そしてやっと顔を洗った後、クールビューティメアリに髪を整えてもらい、王様の待つという部屋へと案内された。