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『異世界転移』
『異世界召喚』
某サイトで飽きるほど読んできた私にはわかる。
これは異世界へ召喚されたんだ。
「聖女様だ!」
「召喚の儀は成功だ!」
明らかに自分の部屋ではないこの場所を見渡してから、わぁっと声を上げる集団に目をやる。
剣を持った騎士様っぽい制服の人や
魔術師っぽいローブを着た人や
いかにも王様ちっくなマントを羽織ったお偉いさんっぽい人なんかがいる。
おぉー。実際に見ると、本当にコスプレ感あるな。
小説でよく見る感想を実感する日がくるとは思わなかったけど。
仁科莉子、25歳。
ただ今異世界へやってきたようです。
召喚されたときに放たれたと思われる光にやられた目を擦りながら、とりあえず周りを観察する。
その視線に気付いたのか、コスプレ集団から王様ちっくさん(仮名)がこちらへやってきた。
「我が国、テレジアへよくきてくれた、聖女様」
胸に手をあて、優雅にお辞儀するこの人は、きっとここでは偉い人なんだろう。
そんな人を前に、私が今思うことはただ一つ。
こんな格好で挨拶していいのだろうか。