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「らんらんさんって呼びづらいんで、らんさんって呼ばせてもらってもいいすかね?」
「バッチコイ!!じゃあ僕はタロくんって呼ばせてもらうね」
「全然問題ないです」
「で、タロくんはこれからどうするの?」
「あー、とりあえずギルドに向かおうかとしてた所です」
「なる。じゃあここまでかな。素材持ってきたら買いとるよ」
「そんときは宜しくお願いします。ではでは」
「のしし」
ようやくギルドに向かった。
中に入ると中々賑わっており、目の前にカウンターが見える。小柄の女性職員に話し掛けた。
「あそこかな?……すみません、初めてなんですけど」
「いらっしゃいませ、初めてのご利用ですね。ご説明致しますがお時間は宜しいですか?」
「あ、はい大丈夫です」
「承りました。まず冒険者ギルドとは、プレイヤーやNPCの補助機関となっております。依頼は依頼を支払えば誰でも行う事ができます、期間が設けられた依頼は受注時に報酬額の半分を事前に収める必要があり、達成出来なかった場合これを没収となります。期間が設けられていない依頼、常時依頼といいますがこちらは特に罰則はありません。重複も問題無いので、まず全て受けることをお奨め致します」
「ギルド員の登録は無料で行っておりクリア時の功績の累積によりランクが上昇していきます。またギルドではクランの加入を推奨しております。ギルド員の協同体ですね。これは金貨1枚で設立することが出来ます。クランにもランクがあり上昇方法は同様です。ランクが上昇することでサービスが解放されるので積極的に狙って見てください。」
「以上となりますが、登録なさいますか?」
「お願いします」
【称号:ウッドギルド員を入手】
「以上となります。依頼は左手の掲示板で受注下さい。カウンターでは依頼の受付と完了報告を承っております。以上、おつきあいありがとうございました。」
「こちらこそ、ありがとうございました」
よし、とりあえず常時依頼全部受けるか。
ラビ、バイパー、グレーウルフ、ホーネット、フォレストベアの討伐依頼。ペンペン草、月見草の採取依頼を受注した。
ん?地図があるな……街の南半分は山で侵入不可か。北は平原が広がっていて二つ目の街があり更に北には森が広がっている。森は山脈に削られ先がすぼまった形をしており抜けた先に三つ目の街が見える。
「んー、どうするか……とりあえず道具屋行くか。金持って無いけど」
『道具屋は隣にありますね』
ギルドを出て道具屋へ向かう。
余り大きくはない店内、壁に沿って商品が配置してある。カウンターには店主と思わしき老人がいる。
「らっしゃい、何が御入り用かね?」
ウインドウがポップアップしたので確認する。うーん……簡易調理道具と簡易細工道具と簡易調合道具は欲しいがそれぞれ1銀(1000セスタ)か……
「ありがとうございました。お金足りないのでちょっと考えてきます」
「またおいで」
店主に礼を述べ、金策を考えねば……らんさんに相談するか。フレンドチャットを送る。
「ねぇねぇ、らんさん。今大丈夫?」
『ほいほい、タロさんどしたい?』
「なんか良い金策なぁい?」
『うーん、タロさんルーキーだよね?どれくらいほしいの?』
「3銀かな?簡易道具が欲しくて」
『なるなる……地道しかないかなぁ。今から素材集め行くけど一瞬にやるかい?』
「いくいくー」
『ほいほい。今ギルドかな?向かうよ。』
「あ、道具屋です」
『あ、そか了解ー』
少し待つとらんさんが現れる。皮の防具一式に木の槌を担いでいる。
「おまたー」
「いえいえ。らんさんそれチュートリアル装備ですか?」
「いや、グレーウルフの皮防具一式に樫の槌だね。全部先の森素材品だよ。防具は僕が、武器は知り合いに作ってもらったんだ。タロさんは初心者防具だろうけど……武器は?」
「体術ビルドなんで問題ないです。一応投擲に使えるかなって短剣はもらいましたが……スキルは振って無いので要練習ですな」
「体術ビルドって段階で問題しか無いような気がするのですがそれは……まぁ平原で確認すればいいか。」
雑談しながら街を出る。
「夜になると門が閉じるから要注意ね」
「ふむふむ」
少し離れた地点からそこかしこに何かの存在を感じる。探索術の効果かな?
「じゃあとりあえず僕がお手本見せるよ」
「お手並み拝見ですな」
らんさんは構えつつ前進していくと反応がしていた右手の藪から灰色のウサギが飛び出して来た。
「よし!『タウント』ぶひぃぃいい!!」
らんさんが武技なのだろうか……?鳴き声を上げると、一瞬ビクッとした反応を見せるが直ぐに持ち直しらんさんへと飛びかかる。スンゴイシュールな光景だ。
「よしきた。せーのっ!!」
掛け声を掛け、槌を振り上げると槌が赤い光を帯びて降り下ろされる。脳天に命中し、吹き飛ばされながらポリゴンが霧散していく。
「よっと、こんなもんだね。ドロップはラビの肉が二個かクリティカルが出たからまぁ妥当かな」
「お見事です。最初のあれってスキルですか?」
「そそ、挑発術のスキル。ラビはアクティブになると逃げる性質があるんだ。その対策だよ」
「なるなる」
「ちなみにが手数が少ないほどドロップが良い傾向があるんだ。さっきは運良く脳天に当たったから肉が二個。1個30セスタだからでギルドの常時依頼が20セスタで最低でも50セスタにはなるね」
「ふむふむ」
「じゃあ次はタロさんどうぞ」
「ほいほい」
周囲の反応を探る先の茂みにいるな……近寄っていく。残り二メートル位となったところで反応が見られた。
(気付かれたかな?)
身構えると同時に一メートル位の長さの蛇が口を大きく開けて顔に向けて飛び掛かって来た。
遅いんだよなぁ………手の届く範囲に来た所で首を掴み、そのまま首の骨を折る。
ドロップは……皮と毒牙?毒持ちだったのか。
「君は……狙ってやったのかい?」
若干呆れのような雰囲気を匂わせらんさんが尋ねてきた。
「ん?そうですけど?」
「どんな反射神経してるのさ……まぁ気にしたら負けか。何ドロップした?」
「皮と毒牙ですね」
「皮は通常ドロップで20セスタ、毒牙は微レアで50セスタ、常時依頼で30セスタで計100セスタって所かな」
「結構良い値段するんですね」
「だね、最初はしばらくここで金稼ぎするんだけど、森も行けるかもしれないね。死ぬかもしれないけど、行って見るかい?」
「デスペナって何があるんですか?」
「アクティブスロットに配置してあるアイテムをぶちまける位かな?」
「まぁ、まだ何もアイテム持って無いから大丈夫ですね」
「了解。森に……向かう前にベナレスに寄って行こうか。リスポーン地点を上書きしておこう。」
「ほいほい」