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光が収まると広場の中央にいた。目の前には目抜き通りが広がっており、数々の店が並んでいた。広場の外周に沿うように、プレイヤーメイドだろうか屋台や露天が軒を連ねている。
「おぉ……俺氏大地に立つ……!」
『ダントツのドベですけどね』
水を差された。
「まぁいいや、最初は何処に向かえばいい?」
『冒険者ギルドですね。指針が定まると思いますよ。通りの左手にあります』
「ほいほーい」
冒険者ギルドに向けて歩きだすが、いい匂いがする……くっ、足が勝手に屋台へ……!
そこでは獣人なのだろうか、円らで無垢な瞳を湛えたプレイヤーが串焼きを売っていた。ブタである。
「ラビの串焼き一本10セスタだよ。因みに最後の一本だ」
「ぬぅ……下さい。」
誘惑に負けた。ウインドウを操作10セスタを支払うとアイテム欄に串焼きが現れる。
・ラビの串焼き+1:塩とハーブで味付けされた串焼き。素朴な味わいながらも一手間掛けた一品
「おぉ……では頂きます……!!」
想像以上にヤバい。絶妙な塩加減、噛むごとに溢れる肉汁。基は余り良くない肉なのだろうか、若干の臭みがあるがハーブのお蔭でいいアクセントに収まっている。
あっという間に無くなってしまった。我に返るとブタがこちらを見ていた。
「嬉しいね。そんなに喜んで貰えるとは思っても見なかったよ」
「あ、ご馳走様でした。まともな食事は初めてで……」
「ん?ルーキーかい?もう開始から2週間は経ってるはずだけど……」
人生でという意味だったのだが……まぁいいか。
「あ、はいさっきチュートリアル完了したばかりで」
「なる。ライト派かな?良く面接通ったね。廃人レベルでしか通過出来ないって聞いてたんだけど……」
「ライト派?良く分かりませんがダイブは初日からですよ?」
『正確に言うと15日と16時間46分をチュートリアルに費やしてますねマスター』
「え、最後そんなに時間掛かってた?……ん?どうかしました?」
ブタが大口を開けたままこちらを凝視していた。
「どうしたって……チュートリアルにそんな時間掛ける君もあれだけど、何でサポートAIが自律してるのさ!!」
「え、こんなもんじゃ?あ、でもヘイって最初は無口だったよな」
『そりゃ、初期設定ですからね。マスターの学習の賜物ですよ』
「……が、学習って?」
ブタが震え声で聞いて来た。どうでもいいけど、震え声って初めて聞いたな。
『サポートAIは学習機能搭載型のAIですからね。マスターとの会話によって成長します。』
「……え、マジスカ。ラン子ちゃん本当?」
『是。と回答しますマスター』
「……ね、ねぇ君この情報公開しても良いかな?」
「どうぞ?自分じゃ気付かなかったし、そもそもヘイとは普通に話せてるからもうあんまり必要無い情報だし」
『あんまりな回答ですねマスター。もしかすると私の秘められた力が爆誕するかも知れませんよ?』
「え、なにそれは……」
『マスクデータのため開示出来ません』
「マジチョロイン」
「…………え、えっととりあえずフレンド送ってもいいかな?この情報のお礼もしたいし」
「え、お礼とかいいですよ。あ、また今度料理食べさせて下さい」
「生産特化だからね!お安い御用さ!……っとこれでよし。らんらんっていうんだ。見ての通り豚のライカンさ、宜しくね!」
フレンド申請が送られて来た。
「コタローといいます。見ての通りヒューマです。こちらこそ宜しく」