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「じゃあ、ヒューマにするよ」


『了解しました。次はアバターを設定して下さい。』


 そういうと現実の自分の姿が現れる。


『ここで注意して頂きたいのですが、現実と余りに解離した姿にしてしまうと動作に齟齬が出る可能性があります』


「さっきの体格の話?」


『そうですね。あとは顔もですが表情に違和感が出るかもしれません。』


「ふむ……」


 俺は自分のアバターに向き直る。


 薄く開いてるのかわからないくらい細まり軽く目尻の上がった瞳、面長の輪郭細く痩せ細った170強の体、剃り上げた頭部。


 頭以外見事な没個性だな。と自分で笑ってしまう。


 さっきの話もあるし、髪型以外はそのままにしておこう。


「髪だけ変えるよ」


『髪?……あぁヘアースタイルの変更ですね』


「……」



 適度な長さでセンターだけ後ろに撫で付けたオールバックに近い髪型を選択し、髪色は灰色にした。



「でっ……と完了」


『お疲れ様です』



『次はスキル設定に入ります。タグスキルを5つ選択して下さい。』


「説明頼む」


『はい、まずスキルは初期値で1が割り振られています。タグスキルを選択すると、初期値が5から始まります。このゲームではステータスとスキル値はマスクデータとなっており、プレイヤーの行動により成長が決まってきます。成長が確認出来るのは派生スキルが発生した時のみとなりますので、方向性が決まっているのであれば、それに沿った選択をすると良いですね』


「ちょっと待って、ステータスはマスクデータって……HP見れないの?」


『はい、そうですね。首を切られて生きてる人はいないですし、血を全て流し尽くしても同様ですよね、つまりはそういうことです。』


「はぇー……あ、ごめん脇道逸れちゃった。一通り試してみてもいい?」


『はい、此方をどうぞ』


 そういうとヘイの脇に木製武器が立て掛けられた棚が現れる。


『武技は汎用技として『スラッシュ』『スティング』がありますので、お試し下さい。』


 それから剣、槌、弓、槍と一通り試してみるがどうもしっくりこない。


「なんと言うか武技がしっくりこないなぁ……動きがが強制的にガイドされるのが気持ち悪い。ヘイヘイなんかお勧めなーい?」


『そうですね……体術、軽業、指技、探索術、精霊親和性の5つですね。トレーニングの傾向と考えられる成長方針から選びました。』


 それぞれの説明を確認する。


・体術:無手でのダメージにプラス補正。

・軽業:身のこなしが向上する。

・指技:手先を用いる作業全般が向上する。

・探索術:オブジェクトの捜索及びオブジェクトからの探索阻害に軽度のプラス補正。

・精霊親和性:精霊との親和性が向上する。


 ふむ……向上ってなんか曖昧な表現だな。


「この向上って、具体的に何が上がるか教えてくれない?」


『すみません。マスクデータのため説明することが出来ません。』


「そっか……まぁヘイが選んでくれたやつだし汎用性高そうだからいっか。」


「じゃあその5個で」


『了解です。では次は魔法及び武技の説明になります』


「ほい」


『まず魔法ですが3つの発動方法があります。大別すると言語認識、象形認識、思考認識です。難易度は述べた順ですね』


『まず言語認識です。こちらはシステムスペルとユーザースペルがあり、前者は既にゲームシステムで用意されており、ショップやイベントで入手するスクロールを使用することで習得出来ます。』


 そういうと目の前に6個の巻物が現れた。


『そちらはチュートリアルアイテムです。お試し下さい。使用する際は手に取りアクティベートと唱えると使用扱いになります。』


 使用すると、視界の端に電球マークがポップアップする。それをタッチすると胸の前にウインドウが現れた。


 点滅している魔法の欄をクリックする、種別でレイヤー分けされており、それぞれファイヤーボール、ウインドボール、ウォーターボール、アースボール、ヒール、シャープネスだった。


『今覚えた呪文を口頭で発することでシステムスペルが発動します。』


「じゃあ、試しに……ファイヤーボール」


 手のひらに拳大の火の玉が現れた。


 おぉ……熱くない、ファンタジーや


『では此方を狙って見て下さい。』


 20mくらい先にポップな案山子が現れる。


「ほいさー」


 大きく足を振り上げ投擲する。気分は空に輝く一番星だ。


「うぉぉおおお!!」


 結構な速度で飛んで行く。中々の強肩ぶりに満足していると案山子が避けた。


「え……なに、それは……」


『もーしっかりあてて下さいよ。はい、もう一回』


 イラッ。次は確実に当てるイメージをもつ。裏をかいて変化球や!


 投げ方は知らないが揺れる5円玉に当てるイメージでアンダースローで投擲する。


「うぉぉおおお!!」


 また半ばまで行ったところで案山子が避ける。


 当たれ!当たれ!当たれ!!


 すると、ククッと軌道が変わり見事案山子に命中した。


「うぉぉおおお、パ・リーグボール2号の完成や!」


『なにいってるんですか、今のが魔法の効果です。』


「え……?一番星にはなれてないん?」


『何を言ってるのか分かりませんが、魔法は精霊の力を感じて発動しており、今のが精霊親和性の効果であり、思考認識の一端にあたります』


「えっと……精霊が俺の『当たれ!』っていうのを読み取って助けてくれたってこと……?」


『そのとおりです。因みに他のボール系は他属性の初期魔法にあたり、ヒールは回復魔法、シャープネスは支援魔法で集中力を向上させます』


「他に属性ってないの?」


『マスクデータのため説明出来ません』


「……あっはい」


『進めても宜しいですか?』


「ほいほい」


『次はユーザースペルについてです。ユーザースペルとはユーザーが独自に唱えた呪文によりスペルを発動させる方法です。独自に言語を作り出しても良いですし、それっぽい言葉を並べても大丈夫です。ですが効果や範囲を明確に設定しないと発動しないどころか、術者に害を及ぼす可能性がありますのであまりお勧めはしません。』


「それって呪文が必ず妥当じゃなきゃ発動しないの?」


『その限りではありませんよ。思考認識や精霊親和性に依るところが大きいですね』


「まぁ、奇を照らわない限りは体系化したものを使うほうが無難ってことかな……」


『ですね。次は象形認識です。こちらは文字通り絵や文字でスペルを発動させるものです。呪文を即時発動させるスクロールが一般ですが変わり種では支援魔法を装備に付け、装備者の能力向上を図るものもありますね』


「メリットは?」


『適正に欠ける種族でも作成者の規模でスペル発動が出来る点ですね』


「なるなる」


『最後に思考認識ですね。前述の説明でも若干触れましたが、こちらは術者の思考を精霊が読み取りスペルを発動させます。精霊親和性が重要になってきますね』


「うん、これは想像出来る」


 体を風が覆い持ち上がる姿を想像した。浮け!浮け!!


 すると、周囲に風が巻き起こる。


 ……来た!と思った瞬間。視界が真っ暗になった。


 てるてる坊主の逆さ吊りのように服が捲れただけに留まった。


『とまぁ、習熟が必要な方法ですね』


「……はい」


『最後は武技の説明です。魔法と同様に音声認識と思考認識があります。こちらはスキル説明の時に体験して頂いたので不要ですかね?』


「だね。大丈夫だ。」


『ではユーザー武技の説明をします。これはプレイヤーが攻撃動作時に精霊による補助を意識することで発動出来ます。動作をユーザーが規定するため、モーションガイドは存在しません。一定の熟練度に達したときに定型登録が可能となります』


「定型登録って『スラッシュ』みたいな?」


『その通りです。説明は以上となります。ご質問はありませんか?なければユーザー名登録とチュートリアル戦闘で終了となります』


「……終了したらヘイってどうなるの?」


『田中さん専用のサポートAIなので拒否されない限りはあちらでもご一緒致しますよ』


「了解。安心した。進めてくれ」


『はい、ユーザー名を入力下さい。』


「うーん、目立つのはいやだし、地味なのでいいよな……本名まんまは恐いし……コタローでいいや」


『了解です。……重複は確認出来ません。宜しいですか?』


「OK」


『コタローで登録完了しました。今までに決めたパロメーターから変更はございますか?』


「そのままでいいや」


『了解です。では初期設定を完了致します。』


『ではチュートリアル完了の報酬として初心者装備一式を進呈します。次の中からお選び下さい。』


 防具は麻、皮、木か……麻でいいや。


 武器は全部木で短剣、長剣、槍、槌、弓か……使わないし短剣でいいや。


『最後にチュートリアル戦闘に入りますが、出現と同時に襲い掛かってくる可能性があります。では御武運を』


 少し経つと80cmくらいの大きさで棍棒を携えた緑の表皮をもつ小人が現れた。


 ゴブリンか……こちらを窺っているのかジリジリと距離を詰めてくる。


 5mの辺りで一気に飛び掛かってきて、袈裟切りに棍棒を降り下ろしてくる。


 ……思ってたのよりおっそいなー。棍棒を右手で下段にいなす。そのまま体を縦に回転させ、左足の踵を首に叩き込む。


 鈍い感触と共にゴキリと骨を折った感触が伝わって来た。


 そのまま白目を剥いて倒れ込む。チャリーンという効果音と共に段々と姿が薄れてゆく。


「おぉ……中々気持ちいい感触だ」


 同時に現れたポップアップを選択する。19セスタ独自の通貨単位かな?数が三つ並んだ左に銅貨の絵、更に2つ先に銀貨、その更に2つ先に金貨が描かれている。


 銅貨1000枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚ということなのだろう。


『お疲れ様でした。以上、チュートリアルが終了となります。始まりの街バリスタまで転送を開始致します。』


「ありがとう、ヘイ。これからも宜しくな」


『こちらこそ、マスターコタロー』


 なんだマスターって、カッコいいじゃないか……!


 そんなことを考えていると来たときと同じように強烈な光に包まれた。

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