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徳川吉宗が「北の3代目に」

吉宗:

「……私も本当は尾張の宗春殿のように

自らも楽しみながら

民を喜ばせる政策を採りたいものなのでありますが」

「なにぶん私は本来。

将軍はおろか。

紀州藩の。

もっと言いますと

時の老中・大久保忠朝殿の計らいが無かったら

越前3万石の地位にすらなることは出来ず。

部屋住みで終わっていた身でありましたので

宗春殿のように

率先して民の前で

カブく姿を披露することが出来るような境遇では無かったこと。」

「もし宗春殿のような素地が

仮に私。吉宗にあったとしましても

実行に移した瞬間に

(……乱心)

の一言で片づけられ、

幼少期に過ごしていた部屋よりも

更に奥まった

光の射し込まない。

内側から扉を開けることすら許されない

……部屋と言うのか何と言うのか。

今の世の中はどうも逆なようでありまして

真っ白な部屋の中で

これまでの自分の人生を文章に認めてはシュレッダー。

部屋に置かれている唯一のお友達であります

積み木を積み上げては崩し、

何もすることが無いからと言いまして

いつ鳴るかわからない。

特に用も無いのに。

の黒電話には応対しなければならないため

外で過ごすこともママならない。

……そんな生活に追い込まれ、

最後。自己都合で退くことになる。」

「……そんな運命が待っていた私にとりましては

宗春殿のようなことを実行に移すことは

とてもではありませんが……」

「……このことが将軍になって生きたのでありましょう。

市井を散策しましても

みんな。牢人としか思ってくれないどころか

存在すら感知されなかったこともありまして

世の動きを底辺から見つめることが出来たこともありまして

のちの世では私のことを

『暴れん坊』

などと呼ぶかたもいらっしゃるとか。

実際にそのようなことを行ったわけではありませんが

そうありたいな。

と思ったことは

一度や二度ではありません。」

「そんな地盤も無ければ

看板も無い私。吉宗が

お金の無い将軍に就いてしまったのでありまして。

やりたいことはありましたよ。

ありましたけれども

それを実現に移すだけの資源が

当時の幕府には無かったため、

仕方なく

(……最高権力者のハズなんだけどな……)

と質素・倹約に励む日々を過ごしております。」

「愚痴を言っていましても

金庫が潤うことはありませんので

とりあえず

やりたいことは封印しまして

まずは財政の立て直しをしなければなりません。

私の過ごしました江戸時代に置きまして

何は無くともこれだけは無いことには

どうすることも出来なかったモノとなりますと勿論。

おコメであります。」

「コメの増産の奨励を。

だからと言いまして

既存の土地に対し、

密集させて植えさせるようなことはせず。

山から川を伝って流れ下って来ます土砂の堆積を利用しました

干拓などを用いまして

耕地面積の拡大に努めながら

堆肥や機械など新たな技術の導入を推奨。

更には

これは以前から続いていたことなのでありますが

新たな土地は

水に対して弱いこともありまして

大水が来るたびに田が水没することがありますので

税金は免除するなど

出来得る限りの施策を実行しまして

コメの増産に成功することが出来たのでありましたが」

「私の時代は貨幣経済。」

「武士は消費者であるため、

給料をコメで受け取ったとしましても

これをお金に換えないことには生活が成り立たない。」

「そのコメとお金を交換する基準は市場価格。」

「コメが増えればコメの価格が下がるのは自明の理。」

「紀州藩主の頃のように

日本の中で

コメの増産策を採用しているのは紀州藩だけ。

の頃は

まだ良かったのでありましたが

将軍になってからは、その規模は日本全国に拡大。」

「買い支えが出来るだけの財力が幕府に無いからの増産指令でありますので

むしろ旗持って江戸城に来られましても無い袖は振れぬ。」

「最終的には、貨幣の流通量を増やす力技に頼ることになったのでありましたが」

「思うようには事を進めることが出来なかった。」

「モノカルチャー経済の弱点がモロに出てしまったのでありましたが

とりあえずお金の原資たるコメを確保することに成功しました。」


「経済が比較的安定したこともありますので

私。吉宗がやりたかったことに軸足を移しても

本来ならば良かったのでありましたが

なにぶん出自が出自でありますので

(……良い子に過ごすことが生き残る術)

悪い噂が立たぬよう

(……民に喜んで頂くことの出来る施策を)

でも自らの身に危険が及ぶことは避けたいので

(……徹底監視。未然対応。)

若い時。

強制的ではありましたが

苦労したことがのちのち生きたのかな……。」

「でも……

将軍なんて

……なるモノでは無いですよ……。

(……温かいご飯。食べることも出来ませんし……)」


「(……北の3代目。

……断ることが出来るのであれば

……避けたいものであります。)」

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