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【3代将軍座談会】

家光:「こんにちは。」

   「本日は、日本史に登場します武家政権。」

   「鎌倉、室町に江戸の各幕府の3代将軍にお集まり頂きまして

    3代目に必要な資質。心構えは何であるのか?

    について討論していきたいと考えております。」

   「申し遅れました。」

   「私は江戸幕府3代将軍徳川家光です。」

   「そのほかのメンバーはこちら。」


義満:「皆様こんにちは。」

   「室町幕府3代将軍の足利義満です。」


泰時:「みなさんこんにちは。」

   「鎌倉幕府3代の北条泰時にございます。」


家光:「ん!?」

   「泰時は3代は3代でも執権である上に、

    仮に僭称しようにも

    北条家は源氏の血を引いておらぬ故

    そもそも将軍職を得る資格が無いように思うのでありますが」


泰時:「(……源氏の血を引いていないのは家光も同じだろうに……)

    確かに私は将軍ではございませんが

    仮に鎌倉3代将軍の実朝をここに呼んだとしましても

    彼は……将軍直系の血を絶やしてしまいましたので

    もし呼ぶのでありましたら

    3代将軍座談会

    と言うよりはむしろ

    15代将軍座談会のほうが向いているのでは無いのでは?

    と重臣間で話題となりまして

    調整の結果。

    3代は3代でも

    家光殿。義満殿同様幕府の礎を築きました

    私。泰時が適任なのではないか?

    との結論に至りまして

    本日。この場に参上した次第であります。」


義満:「にしても21世紀の日本史の教科書を今。

    読ませて頂いているのでありますが

    我々3代目の時に幕府が安定期に入り、

    自らの思うがまま。自由に事を為すことが出来た。

    ように記されているようでありますが

    実際は、

    ……そんなこと無かったのでありますよ。」


家光・泰時:「(無言でうなずく)」


泰時:「でも義満殿や家光殿はまだ将軍であることを

    世間が認知してくれているだけまだ良いですよ。」

   「私なんかは一応、鎌倉殿の正室である政子の家の出でありますので

    重きを置かれていたとは言え、

    関東武士の中の一豪族でしかなかったのでありますから」

   「一応、執権

    と言う地位に居たには居たのでありましたが

    仮に第一人者であったとしましても

    お飾りとは言え

    将軍を呼び寄せ無ければならなかった上、

    あくまで執権の立場でありますので

    たとえ自らの成果であったとしましても

    全てを私物化するわけには参らず

    功績があったモノは勿論のこと。

    対立した勢力に対してましても……」

   「これが家光殿でありましたら難癖を付けまして没収

    でありましたり、

    義満殿のように武力で滅ぼしてしまうことも出来るのでありましょうが

    なにぶん私は、将軍ではありませぬ故。

    妥協を強いられることになる。」

   「鎌倉幕府が出来て30年も経ちますと

    かつての御恩を忘れ、

    権力の私物化を図るものも現れ、

    (……本来、オレが裁定を下すべきことなのか?)

    のような民事訴訟に巻き込まれることにもなり、

    大抵そういう時は力の強いモノが……

    になってしまうモノなのではありますので

    より冷静な目で見ることが出来るよう

    現実に即した法律の制定にあたらなければならなくなった……。」

   「これを履行するため、

    執権である私。泰時でさえ

    自由な行動を制限され、

    質素倹約に励まなければならなくなった。

    実質的な最高権力者であるにも関わらず。」


家光:「……そこに来ての大飢饉……」

   「天候を統御するのも権力者の務めとは申せ、

    天気は天の気分でありますので。

    とは許してもらうことは出来ないんですよね……」

   「農民に対し、

    農作業に従事し、

    納めるモノをきちんと納めてさえ居れば。

    は、お願いだから武装蜂起だけはしないでね。

    のメッセージでもありますからね……。」


義満:「国滅びる時は、食えぬ時は世界に共通しますからね……」

   「でも泰時。

    自分は将軍では無いから妥協を強いられた。

    と申して居ったが

    それは将軍である私。

    そして家光にも言えることなのではあるぞ。」


家光:「……天皇のことですね。」

   「もっとも私の時は、

    朝廷側にとりましては譲ることの出来ない収入源であります

    紫衣を与える権利を奪ったことから。

    でありましたので

    怒らせてしまった部分。

    利権を認めることにより、解決することが出来たのでありましたが

    義満殿と朝廷との関係は、生涯に渡って続いたとか……。」


義満:「祖父尊氏より続く朝廷同士の二重権力構造については

    後醍醐が崩御されましたのちは

    吉野の地では……

    なのでありましょうか……。

    表立っての行動はそれ程。

    でも義昭のような方法で苦労させられることにはなったのでありましたが

    最終的には兵糧攻めで和議に持ち込むことは出来たのでありましたが

    朝廷があるが故に苦労させられましたのは

    どちらかと言いますと

    明との関係でありまして

    将軍は天皇から任命される立場であるため

    実質的な最高権力者であったとしましても

    外国から見ました場合、

    将軍は天皇家臣と見られることになってしまう。

    今みたいに元首と首相のようには見てくれませんので。

    利益を挙げることの出来る貿易相手として認められず。

    なら天皇を味方につければ。

    なのでありましたが

    南北朝が別れていた時代に

    既に南朝方が明と繋がっていたため

    用いることが出来ず。

    仕方ないので最後は

    全ての職を投げ捨て

    仏門の道に入り、

    一私人。自由の身になって初めて

    明とのやりとりをすることが出来るようになった。」

   「泰時殿とはまた別の理由で

    将軍職も

    割に合わない仕事ではありましたね……。」

   「もっとも遣唐使廃止後。

    独自路線を貫いていました朝廷からしますと

    中国寄りの政策を採ったことについて面白くない。

    あいつ(私。義満)は清盛以来の悪人だ。

    と言うことになるのかもしれませんが

    そう言う朝廷にしましても

    南北朝の時に南朝側は中国と通行していた。

    たぶん収入源を確保するため

    であったことが容易に想像することが出来る。

    と言うことは

    普段の朝廷はどれだけの力を持っていたのかを

    読み取ることが出来る。」

   「武力で踏み込むことが出来ないのには

    朝廷にも力があった。

    第二次世界大戦の時のスイスのように。」

   「(……スイスって何?)」


家光:「別段、生活に四苦八苦しているわけでもないのに

    そうまでして権力に留まり続けた理由は

    どこにあるのでしょうか?」


義満・泰時:「(声を揃えて)自分が殺されてしまうから」


泰時:「これは家光殿のスタート時点からでは

    わからぬことかもしれないが

    義満殿は幼少期。都から逃げなければならなかったこともあり、

    将軍

    と言う

    武士の棟梁たる地位を得たのちにしましても

    いくさに勝利を修め続け、

    確固たる権力を獲得するのに長い年月を要することになりましたし、

    私のほうは?

    となりますと

    そもそも将軍では無い

    一家臣の立場でしか無い私。泰時が権力を握っている。

    と言うことは

    見方を変えますと

    別に北条家でなくても

    他家が執権となり権力を得ることも可能であることを

    世間一般に知らしめていることになりますので

    権力を失った瞬間に

    どのようなことになるのか?

    と言いますと

    足利家や徳川家のように

    家が残るようなことは無く

    滅亡

    と言う運命が待ち受けている。

    故に勝ち続けなければ

    握った権力を握り続けざるを得なくなった。

    自らの意志に関係なく。」 


義満:「3代目に求められる資質と心構えを敢えて述べるとするならば

    創業者のようなカリスマ。

    超人的な働きだけではどうすることも出来ませんし、

    そもそもそれ程発揮する。

    でっち上げる場が存在しないことに加えまして

    最初から家の規模が大きいこともありますので

    トップ独りだけではコントロールすることが出来ないことも出て参りますので

    3代目が必要とする資質と心構えは

    『我慢』の2文字に集約されることになると思われます……。」 

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