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【8代将軍座談会】

8代将軍(執権)北条時宗。足利義政に徳川吉宗を加えた座談会。


吉宗:「何から話を始めましょうか?」

義政:「3人が生きた時代に共通する事例となりますとやはり……」

時宗:「財政問題になりますでしょうか。」

吉宗:「財政難と言う点では3者相通ずる政治課題でありましたけれども

    その問題の原因はそれぞれ異なるようでありまして」

時宗:「義政殿の場合。

    市井は苦しんでおりましたが

    義政殿御本人は自由にお金を使うことが出来たように思うのでありますが」

義政:「確かにお金はありましたね。

    税を課そうにも

    ほとんどの権益を守護大名に握られた上、

    飢饉続きで収量もさほど多くは無かった。

    にも関わらず別段借財するわけでも無く

    政務庁舎などを増改築するだけの予算を

    捻出することが出来たことを考えますと

    お金は確かにありましたね……。」

義政:「でもさ。

    それって、今の世の中で言うところの

    公共事業

    にあたる行為でありまして

    20世紀。

    特に世界恐慌以降に同じことをやっていましたら

    むしろ誉められる行為でありますし、

    もっと言うならば

    そのお金を私は自弁で調達した。

    景気対策の一環であり、

    かつ今の公共事業とは異なり、

    完成後も利用するだけの価値があるものに

    予算(義政個人のお金)を使ったのでありますので

    少なくとも貶される覚えは無いと思いますよ。」

義政:「そもそも室町幕府は

    鎌倉や江戸とは異なり

    ほとんど領土持たない政権でありましたので

    農業振興をやろうにも

    それを実行に移すだけの土地がそもそも存在していなかった。

    幕府の収入は専ら(国内外含んだ)貿易・物流がベースである故、

    そこから産み出される施策も

    鎌倉や江戸とは異なるものとなった。と……。」

義政:「ただ如何せん。

    武士は土地がベース。

    自身が切り拓いた土地を守るため、

    自ら武装したことが起源でありますので

    作物の収量が少なくなりますと

    食糧を求め、

    移動を前提に活動されています遊牧民とは異なり

    農業は土地に縛られている。

    定住しているモノが既に存在しているところに

    いくさを仕掛けることになる。

    まだ未開の地を。

    と思われるかたもいらっしゃるかと思われますが

    それをするのは、本当に困ったかたのみが行う行為であり、

    だってそうでしょう。

    まだ川だか海だかわからないようなところに浮かんでいる

    北極の氷のような

    次の日。何処にあるのかわからない土の塊に

    腰まで浸かって作物を植えようとは

    普通に生活することが出来ているヒトは思わないでしょう。

    仮に今。生活出来ているヒトが行う。

    と言うことは

    世の中が平和であり、

    かつ

    ほかに使い道が無いから。

    私の時代は

    そこまで平和な世の中ではありませんでした。」

時宗:「たしかに私の時代に

    干拓が推奨されることになったのは

    国内的には平和な時代でありましたが

    (他国に攻め込まれると言う)

    外交政策の失敗。

    なんとか退けることに成功するも、

    防衛しただけでありますし、

    ボクシングなどと異なりまして

    スポンサーがついての興行ではありませんので

    守り抜いたからと言いまして

    恩賞の原資が入って来る訳ではない。

    加えて、その時の戦費の調達は

    各々の御家人が自弁して。

    でありましたので

    与えることの出来る土地も無ければ

    戦費は御家人自弁とは言え

    幕府も甚大な費用を捻出している故

    満足させるだけの恩賞を与えることが出来なかった。」

時宗:「そのお詫びと言っては何ですが……。

    で干拓など

    新たな土地の開拓することを推奨した。

    もちろん開墾に掛かる費用は開発者持ち。

    これでは御家人の心も離れてしまうモノであります。」

時宗:「鎌倉・室町の失敗を上手に学んだのが吉宗殿なのかな?」

吉宗:「国内については圧倒的な軍事力を背景に。

    そして海外から脅かされることも無い。

    安定した政権ではありましたが

    『いくさ』

    って要は破壊活動でありますので

    破壊されますと

    新たに造りましたり

    元に戻しましたりの違いはありますが

    お金が動くじゃないですか。

    でも150年以上。何も無い時期が続きますと

    市場の失敗のような事態が発生しましても

    (……江戸の町に火を放つでもしない限り)

    貯め込んだお金を使おうとはしないじゃないですか。」

吉宗:「でも国内の治安を維持するためにも

    幕府の威厳は保たなければならない。

    そのためには

    それ相応の待遇で

    ヒトを抱え込まなければならない。

    たとえ繁忙期以外必要とはしない人員であったとしましても

    常雇で雇わなければならない。

    その結果が

    国鉄からJRへの分割民営化になりましたような

    財政赤字が幕府に重く圧し掛かって来まして

    紀州から私が将軍として江戸城の主となった時、    

    幕府の金庫。コメ蔵は空っぽの状態であった。と……」

吉宗:「で。なんとかしなければ。

    となりましたが

    如何せん。当時の幕府は

    『鎖国』

    の時代でありましたので

    貿易で財政再建を目指すことには相成らなかった。

    ほかに何か無いものか?

    で目を付けましたのが

    幕府には数多の直轄領が存在している。

    なら農業を振興し、

    コメの収穫量を増やそうではないか。」

吉宗:「農業技術の発達ありまして

    2倍近いコメの増収に至ったのでありましたが

    そこに新たな問題が発生することになりました。

    『貨幣経済』

    コメは食糧として利用することは出来ますが

    コメだけで生きていくことは出来ません。

    特に武士は純然たる消費者でしかありませんので

    その辺にあるものを工夫して。

    と言うわけには参らず

    様々な物品を必要とすることになります。

    その物品を手に入れるのに必要なのが

    お金であります。

    そのお金を手に入れるために武士は

    給料でありますコメを

    お金に換えなければなりません。」

吉宗:「コメの量が増えたとは言え、

    武士に与えられるコメの量に変化はありません。

    にも関わらず

    日本にあるコメの量は増えていきます。

    そうなるとどうでしょう。

    需要と供給のバランスにより、

    コメの価格が低下することになります。

    そうなるとどうでしょう。

    貨幣で生活する武士の実質的な賃金が減少することになります。」

吉宗:「最終的に私は

    貨幣のほうの流通量も増やすことによって

    なんとか調整する……。

    そんな感じでありましたね……。」

吉宗:「ただ幸いにしまして

    財政再建と

    鎖国とは言え

    海外から様々な情報を得ることによりまして

    飢饉に強い作物や

    それまで輸入に頼らざるを得なかったモノを

    日本で作ることが出来るようになったなど

    鎌倉や室町と比べますと

    恵まれた点多かったことと思われます。」

吉宗:「……でも究極の財政対策は

    今も昔も変わらず

    (方法はさて置きまして)

    ……スクラップ。

    そのあとの

    ビルド何でしょうね……。」

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