表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/8

6

すいません。

うっかりしてました。

投稿し忘れでした。


 あれから一カ月たった。


 いつもと同じように、朝早く外に出てみる。

 ほうっと息を吐くと、それは白くなる。

 まだまだ春は訪れない。


(寒い……)


 アルジェントは溜息をついた。


 騒がしい客は来なくなったが、アルジェントは靴屋を休業せずに続けていた。

 ヴェラが来なくなり、この家は一気に静かに、そして暗くなった。

 働くことは億劫であるのに、まだ店を開き続けているのは、もしかしたらまた彼女がここに来るのではないかと期待しているかもしれない。


(……馬鹿だな。もう来るはずがない)


 あれだけ、突き放して傷つけたのだ。


 今のこの状況は自分が望んで、作り出したのだ。




 最後に見た彼女を思い出す。


 あれだけ傷ついても笑っていた彼女。


『私……私は、あなたと会えて本当に、よかったわ』


 アルジェントはきつく目を閉じる。


(忘れろ)


 10年前の静かな空間が戻ってきただけなのだ。


 自分はそれを望んでいたはず。


 そう何度も思った。


 でも……だめだった。


 何故だ。  


 そう何度も考えた。

 

 自分のこの感情は一体何なのだろう。


 そう考えたとき、嫌なことに気付いてしまった。


(あー……また思い出した)


 自分にとって一番納得のいく嫌な答えが何度も頭をよぎる。


 (忘れろ忘れろ)


 もう一度、深く溜息をつく。


 まあ、いつか忘れるだろう。

 アルジェントが今、10年前の冬を思い出せないように。

 

 そして同じように、静かな冬に慣れていくのだろう。







 チリン、チリン



 邪念を振り払うように息をついたその時、来客を知らせる呼び鈴が鳴った。


 アルジェントは扉に目を向け、客の姿を確かめた。


 アルジェントは目を大きく見開いた。




 そこにはもう来ないと思っていたヴェラの姿があった。




ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ