親切な店主と不思議な世界
皆様お久しぶりです。
二話、投稿します。
「忘れられた?」
「そう、ここ幻想郷は外界で忘れ去られたものが集う場所だからね」
忘れられた……あの後みんな死んだのか。
「まあ奥に来なよ、こんな玄関で話すのもなんだし」
「あぁ、はい」
その人の部屋はとても懐かしい気がして、それでいてどこかよそよそしい雰囲気を感じた。
まるで、今の世界と今までの世界の狭間にあるかのような、そんな感じがあった。
「どうしたんだい?入りなよ」
「……お邪魔します」
その部屋の中も、安心と不安が入り混じった空気を醸し出していた。
「さて、君の名前を教えてもらえるかい?」
「名前は無いが…向こうでは『検体0123』と呼ばれていた」
「ふむ……つまり君は名無しなのか。さて何と呼んだらいいのやら」
「『検体0123』と呼んでくれればいい」
なんてったって私に名前など無いのだから。
「いや、それじゃ語呂が悪い。…そうだな、適当に『0123』からとって一二三でいいんじゃないかな?」
一二三……不思議と自分の中にすとんと落ちた。
「……わかった、好きに呼んでくれ」
「おお、気に入ってくれたか」
「そろそろ説明に戻ってほしい」
「そうだね、どこまで話したかな?」
その店主から明かされた事実は驚きだった。
この世界は二つに分かれ、片方は新しきを好み、もう片方は古きを好む。ここ幻想郷は、その古きを好む方なのだという。
そして、この幻想郷には「妖怪」が居て、妖怪が人を襲い、巫女が妖怪を退治するという「流れ」があるのだという。
人々はこの流れに乗って暮らしているらしい。
「この世界の巫女さんは二人いるのだけど、たぶん東風谷神社の巫女さんの方が君に近いんじゃないかな」
「それはなぜ……」
「その人も君と同じく現世から来てるからね、こっちの神様によって」
少しの希望がわいた。もしかしたら、常識人じゃないかもしれない。でも、同じ世界から来たというだけで、とても安心できるものだ。
「そこへ行ってみる。ありがとう。」
「ちょっと待って、最初会ったときに言ったように一人じゃ妖怪たちに食われておしまいだよ。明日なら人も来るかもしれない可能性がほんの少しだけあるかもしれないから今日は泊まっていきなよ。」
早口でまくし立てられた。よっぽど心配してくれているのだろう。
今日はありがたくここに泊まらせてもらおう。