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帝国の第2帝姫レイム

 部屋の主であるレイム姫に招き入れて貰った徹達は、中で寛ぐ為の長めの綿を使った素材らしい、柔らかなソファーの様な椅子を勧めて貰ってお客として寛いでいた。勿論、徹とカノンは、だが。

 カーラはお茶菓子を用意するレイムを手伝い、コムドは小皿を並べていたりしている。

 レイムが帝姫の癖にそんな事をするのかと言えば、完全なる趣味だと言う。

 それを渋々ながらカーラが手伝っていると言う感じだ。

 しかし、改めて作業中のレイム姫を見ても、カノンと同じようにゲーム関係者の雪乃そっくりだ。

 髪の色こそ、少しだけ青味がかっているが、ほぼ黒髪と言って良い髪に、綺麗な黒い目と、学校のアイドル顔負けの美貌がそこには有った。

 そして、着ている服がまた美貌を引き立てる白のドレスだ。

 これは国民に人気が高いだろう。

 更にその護衛のカーラがまたすごい美人だった。

 普段は主の脇役を演じるためか、ゴツイ鎧で隠しているようだが、兜を取っている現在、カノンの処のソフィーと同等の大人の色香があり、見る者を惹きつける美貌だ。

 しかも、切れ長なまつ毛に深紅に染まった髪と眼は勝気を連想させるには十分な物がある。

 正に清楚な主にそれを護るお姫様の構図そのものだ。

 そんな感想の中、いつの間にか話し合いの準備が出来た所で5人は向かい合って、代表でカノンが話を切り出した。


「先ずはお久しぶり、レイちゃん。今日寄らせて貰ったのは使い魔での伝言通り、召喚獣の事と兵器召喚の事。後はこの大陸で争いを行っている国家同士の争いと人と魔物の争いを知っている範囲で教えて貰うため。後半の事は、ココにいる召喚獣の徹さんが知りたいって言うから教えて上げたいのもあるけど、僕も聞きたいってのも本音。そして、この召喚獣の徹さんの事で色々とここにいる信頼できるメンバーに僕の屋敷で聞いた徹さんの話をする為。実は…」


 そこで、今までの会話からの推測も交えたカノンの話を黙って聞く2人。

 そして、一定の話が終わった後、レイムが頷き……


「そう…。分かりました、他ならぬカノンちゃんの頼みなら無碍には出来ません。それに、少しカノンちゃんの処の武力を借りなければいけない事態に成りそうなので、来て貰ったのは好都合な部分があるんです」


(…何か厄介ごとの匂いがプンプンするな…。しかし、カノンのこれまでの会話からの性格上、恐らく頼みごとを聞かなくても協力を願い出るだろう)


「それは?」


(ほれ、来た)


「実は…」


 要約すると、どうやら今いる大陸の2大国家であるトルパ帝国の隣国である香蘭魔国から、大量に魔物の軍勢が魔人の精鋭に率いられ、こちらの帝国領に進行しつつあるという事。

 それに呼応するかのように、大陸の逆隣りの、カノンと同じ帝国の4大王爵家の一角、カノンのチェイニン王爵家が東の王領なら、西に位置するアビライン王爵家が一斉蜂起をして帝都に反乱勢力を向かわせると言う噂があるらしい。

 そこで、レイム姫のお願いと言うのが、香蘭魔国の侵攻をチェイニン王爵領の戦力のみで迎え撃ち、撃退して欲しいと言う要望だ。

 そして、帝都の防備を北の王爵家であるキスリング王爵家と、南のトレンディア王爵家に救援を求めるという事。

 何故、一王爵家の反乱で、帝都の防備に2大王爵家の救援を求めるのかというと、帝都は帝国の政治の中心であり、経済の中心であるという過去の皇王の憲法の元、ほぼ民主制の態勢で、王のみ絶対王政を敷いているため最強の護衛騎士団こそ存在するが、単純兵力は地方王領に全てを委ねているため、数の暴力には敵わない可能性があるらしい。

 勿論カーラ他帝国の帝都を護る護衛騎士団なら1小隊で1王領の私兵団に匹敵する可能性はあるが、万一の可能性を考えれば帝都の防備を優先させねばならず、帝都を戦火に曝さない様にする為には王爵家の力が不可欠なのだという事だ。

 しかし、ここで問題が有り…


「実は、先ほど北のキスリング王爵家の長男ケイトに父が召集を掛けてこの話をしたところ、北のドラゴンの住処であるヘルザイナ渓谷で、何者かが怪しげな儀式をしていたと報告が有り、もしかしたらその調査とドラゴンの侵攻の撃退の為に帝都防衛が出来ない可能性が有ると言うのです。

 南のトレンディア領の抱える鉱山周辺の岩窟国は小国な上それ程脅威でもない事から喜んで協力すると言う報告が上がってます。

 ですから、魔人が率いる魔物撃退に本来一領土の騎士団が単独で迎え撃つのは無謀な行為なのですが、カノンちゃんの領地にはあの人類最強クラスのリンネさんと、万能魔法師ソフィーさんがいるから頼めることなんです。…どうでしょうか?」


「そう言う事なら、大丈夫とは言えないけど、お父さんとお母さんに相談してみます。しかし…」


「ええ、そうなればいつもの様にチェイニン王爵領に避難する訳にはいかなくなるので、当分会えなくなる可能性は有ります。これは仕方ない事でしょう…」


「…なぁ、今ので国家間の闘争が有りそうなの理解したが、魔人や魔物の侵攻って、規模はどの程度なんだ?」


 徹はカノンとレイムの話が一段落したようなので、会話に割り込んでみた。

 すると、一瞬だけ険しい表情になったレイムも、次の瞬間には笑顔に成って説明してくれた。


「例えようが無いですが、簡単に説明するなら、魔物の最強種族ドラゴンを従え、その身に乗って移動するドラゴンライダーが多くいる種族ですね。本来なら魔人も人間の種族の領土に侵攻をしないで、タワー攻略に勤しむ筈なんですが、偶に魔人の中で交戦好きで人間を殺すことに快楽を感じる魔王が生まれる事があるんです。その偶にが、今回の侵攻に繋がっている訳ですが…」


「タワーって?」


 徹は聞きなれない単語を聞いて、聞き返す


「タワーとは、未だに1本として最上階まで到達できた者のいない魔物の蔓延る天使の塔の事です。何でも、その塔の最上階まで上り詰め、攻略を成し遂げた者には、相応のペルナが与えられるとか。…確か、カノンちゃんのチェイニン王爵領にも有りましたよね?」


「うん。最高昇塔階数が今の所58階の、最難関って言われてるタワーだよ。カーラさんでさえ単独では40階が限度でしたよね?」


 カノンの質問にブスッとしながらも頷くカーラ。


「ええ、私レベルでは単騎の幻想種撃墜は至難の業。あの塔の最上階が何処まで行けばあるのかは分かりませんが、もし単騎突破を考えるなら、一人で魔人率いる魔物の軍勢を押し返すほどの実力が求められるでしょう」


(…俺はその魔物の軍勢の力も、魔人の実力も知らないんだが?)


「あの~?レイム様?その話は今は置いて於いて、取りあえず徹さんの事を調べさせてくれませんか?さっきのカーラさんとの会話ですら、少しの進展が有ったようですから、もしかしたら姫とお話しする事でもっと進展が有るかも知れません。そうすれば対魔族の戦力にも数えられます」


「…!そうだよ!何でそう言う発想が無かったんだろ!?僕も一緒に防衛に参加すれば皆の被害も抑え…「そんな事駄目です!」…レイちゃん?」


 コムドの言葉でスッカリその気に成っていたカノンに、レイムが大声で待ったを掛ける。まあ、これは仕方ないだろう。帝都防衛に関しての事でカノンに協力を仰げないばかりか、ヘタをすれば心を許せる親友を失う可能性もあるのだから。

 しかし、ここで以外にもカーラがある提案をする。それは徹の戦力確認の事だ。


「では、カノン嬢が安全圏に居ても良いだけの戦闘力をその召喚獣である徹殿が持って居れば姫が安心できるという事ですね?」


「カーラ!?」


(いきなり何を言い出す気だ?)


「要は戦力確認の話。そこで、この徹殿に小型密着型魔法具を装着して貰った状態で、タワーの単独突破を敢行して貰えばいいのです。幸い先ほどの話なら、タワー30階までなら何の苦労もせずに辿り着ける筈。そこからは我らが敵の分析を手伝いながら攻略して、状況判断能力を診断する。この事で戦闘における総合的な実力が分かる。それを見て、最終的に私と同等の40階まで辿り着ければ、魔族との戦闘にカノン嬢の護衛としてついて行き、カノン嬢も満足できる体制に成るだろう。……その勇気があれば…だがな」


 徹を見ながらニッと微笑むその顔は挑発の様にもやって見せてくれと言う願いにも見える。

 そして、徹自身、ココでの実力をそろそろ見てみたいという事もあり…


「俺は構わんが…その前に、さっきコムドが言っていた続きだ。俺自体も利用されるのは嫌だが、俺自体は半ば遊び感覚のゲーム感覚が抜けていない。それがココでどういう影響があるのか分からんし、死んだらどうなるかも分からん。

 この世界の死がどういう影響を俺の元の世界の体に与えるのか、若しくは既に元の世界に体が無いのか、何も分かっちゃいない。だから今はこのゲームを楽しむ事を考えてる。それには強くなる必要もあるからさっきのカーラの意見も、俺に魔法が使えるのか判ればそれだけ簡単な作業に成る」


 徹の意見を聞いた面々は「………」と、言葉が無い。

 そして、1分ほどその沈黙状態が続いた後、レイムが顔を上げ


「分かりました。まだ少し納得の出来ない部分は有りますが、少しでもカノンちゃんの危険が低くなる可能性が有るなら、協力しましょう」


「ホント!?レイちゃん!」


「ええ、本当です。それでは、知っている事から話しますが、分からない所は聞いてください。

 先ず、過去の召喚獣の魔法にはそれこそ数えきれない魔法の種類が有りますが、重要なのが、幾ら分身しても変化しても、その者の基本特性は変わらないという事が第一です。

 例えば、徹さんはスライムからその人間の形になる事が出来てますが、もしその形で魔法が使えない場合、どの種族に成っても魔法は使えないという事です。

 しかし、ペルナが使えるという事は確認できているようなので、もし竜族に成れば、ブレス系は問題なく使えますし、スライム特有の液状化だったり、ドラゴンの空を飛ぶ能力、死神系のゾンビを操る系統もその中の一部です。

 ……ここまでで問題は有りますか?」


「いや、良い」


「結構。では、肝心の魔法ですが、これもペルナの場合と同じく、頭の中に【魔法一覧】を呼び出せば、もし使えるのなら、ペルナ同様に浮かべて行けば使える筈です」


(……地球で聞いた話の通りなら、種族特性を加える事を条件に魔法を封印したって言ったっけ?もしそうなら諦めるしかないが…)


 そう考えながら徹はレイムに言われた様に、ペルナの時同様頭に魔法一覧を浮かべようと試みるが…


「(魔法一覧)」


(……何の痛みも無いし、脳に情報が入ってる感覚も無い。って事はやはり来る時の設定が生きてるのか?なら、ココはやはりゲームの中なのか、それとも設定が同じような世界なのか、これも調べないと駄目だな。…取りあえず報告はしとくか)


「どうやら駄目の様だ。ペルナって奴の場合は凄まじい量の情報が一気に流れ込んで脳に痛みが来ていたんだが、今回はそれが無いし、情報が入ったような感覚も無い。…まあ、ペルナが使えるだけでも俺にとっては十分な戦力だから、あまり気にはしないがな?」


「ほう?それは結構な事だ。なら早速カノン嬢の領地に行ってタワーの攻略をしてみるか?」


「ちょっと待った!それより大事なことが有るよ!?」


 徹とカーラの話にカノンが割り込む。それに不思議がる一同。


「何かありましたか?カノンちゃん?」


「あるよ!レイちゃん。何時もの僕たちと一緒に城下町をお忍びで回るイベント忘れたの?!」


「……」


 このカノンの一言、いや、絶叫に近い叫びに一同声を失う。


 しかし、カノンはそれが大事な事とばかりに腰に手を添えて踏ん反り返っていた。


「……まぁ、この状況下でお忍びを欠かさないと言うのも不自然さが無いという事で良いですかね。丁度徹殿の警護能力も見てみたいですし。私に否は有りません。後はレイム様がご判断下さい」


「私はカノンちゃんと見て回るのが楽しみですから、寧ろ嬉しいです。では、早速行きましょうか?」


「ああ、けど。一応この場所に俺の転移用マーキングを付けて置いて良いか?どの位の有効距離か分からんが、ココなら転移魔法鏡も近くだから、帰るのに便利だし、万一の場合は直ぐに掛けつけられる可能性が有る」


「…それなら、せめて扉の前にしろ。中では常に私が監視しているんだ、問題は外なのだから、その方が何かと都合がいい」


 徹の言葉に、もっともな事を言って部屋への転移マーキングを断るカーラ。

 まあ、確かにいきなり二人が裸の状態の時にこの場に転移されたら堪らないから、用心という点では仕方ない。

 この判断は女性陣しか居ないこの部屋の住人には当たり前の考えだろう。


「分かった」


「それでは、扉の壁にでもマーキングをして貰ってから、町を見て回りましょうか」


「うん!」


 そんな訳で、扉の壁に徹が独自のマーキングを掘っている間、レイムはカーラとカノンとの城下町めぐりの話を父王に使い魔で伝言してから町に繰り出したのだった。


 

 

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