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向かった先でやっと目的地周辺に到着した訳で・・・・・・

 屋敷の中は、外観と同じく豪勢な物だった。

 外観自体が、日本の国会議事堂の外観と見た目そっくりな感じだったので、相当な権力のある貴族だと言うのは分かっていたが、中にもその一端が見られ、上には海外の映画で見られるシャンデリアに、ココで言う処の魔法具を利用した灯りが備え付けられ、灯りの横にあるメーターで残り魔力が見られる造りに成っていた。


(地球の科学が、ここでは魔法科学に成っているみたいだな?…いや、技術がペルナと言うらしいから、ペルナ技術か?)


 そんなどうでも良いような感想を抱きながら、カノンとコムドに付いて屋敷を進む徹。

 そこで、一人のメイドさんらしき(地球でよく見るメイド喫茶の服とは若干異なった服を着てるから、らしいだ。)女性が執務室に行くカノンに話しかけてきた…後ろに続く徹を訝しげに見つめながら……


「お嬢様?旦那様の部屋に何用でございますか?恐れながら、其方の方は初めて見る方ですので、奥様が戻られるまで、勝手に仕事部屋にお通しする訳にはまいりませんが?」


「あ、ソフィーさん。良い所に居た。ソフィーさんなら魔物の生体に詳しいですよね?」


「……いきなり何のことか分かりませんが、そこいらの傭兵共よりは詳しいと自負しております。…ですが、それが如何しました?」


 イキナリ雇い主の娘に質問されたメイドの困惑も分かる徹は内心同情しながらも、そのメイドの美貌に驚く。カノンや元の世界での三人とは全く異なった種類の美しさだ。

 彼女たちが可愛らしい、発展途上の可愛らしさを持つ美少女なら、此方は完璧な無表情に完璧な黄金律を乗せた、大人の女性と言った感じだ。

 体つきも同じで、程よく引き締まった手足に、多少服の盛り上がりを見せるプロポーションは、見る者の想像を掻き立てるのには十分な破壊力があるだろう。

 そうして、徹がマジマジ見ていることに気が付いた(最初から気付いていたが)ソフィーと言うメイドが、「何か?」と聞くと、カノンがした質問を徹が引き継ぐ形になった。


「ああ、彼女が聞いたことを、俺が聞くことになるんだが、スライムの状態変化に関して知っている事を教えて欲しい」


「…お嬢様?この者が言っている事は本当ですか?」


「う、うん。僕が聞きたいのもその事。コムド君が調べた限りじゃ、載って無かった様だから」


 ソフィーの質問に、話を振られたカノンが慌てて応える。

 それで渋々ながらも納得したソフィーが簡潔にではあるが、応える。


「わたくし以上に詳しい事は、帝都の資料館で調べるか、レイム姫様か、そのお付に聞く方が良いと思いますから、わたくしが知る事だけ、簡潔に申しあげます。

 過去の調べでは、スライム系の召喚獣はその多くが状態変化のみで、特別なペルナや魔法を使うスライムは1体のみ。そして、そのスライムは、兵器召喚で産みだされたスライムです。

 そのスライムのペルナ及び魔法の発現法は頭の中にペルナの一覧を映しだし、脳裏に浮かんだ物を念じる事によってその現象を起こす物です。…わたくしの知る知識ではそれ位でしょうか?

 他の事は先ほど言った資料館か、その手の事を専門的に調べている方に聞いた方が早いですね」


(成るほど、試してみるか……)


 そして、早速頭の中で「(【ペルナ一覧】)」と呼び出した。

 すると、徹の頭の中に情報が一斉に雪崩れ込む。


(っ痛ぅ!…これは一旦情報が止まるまで、考えるのは止めた方が良さそうだな。)


 そう考え、再び二人の会話に意識を戻すと、丁度これから先に行く様だった。


「じゃあ、母さんが戻ってきたら今日はもしかしたら向こうで止るかも知れないって言っといてね?レイちゃんのお忍びは結構長いから」

「はい、伝えておきます。…コムドに関しては連れて行きますか?」


 話を終えた、ソフィーがチラッとコムドを見てからそう言うと、コムドは明らかに狼狽え


「ちょっ、ちょっとソフィー隊長?魔法に関しては僕もそれなり知識はあるんですから、お嬢を護るくらいは出来ますよ?」

「…ほう~?…では…」


 っと呟いた途端、かなり動体視力と反射神経が良い(株式市場を見ている内に、自然と動く物に関する視力が良くなっていった)筈の徹が、全く見ることが出来ない速度でコムドの背後に回り、手刀をコムドの首筋に当てて言った。


「これ位のスピードが見切れない者が、偉そうに言う物では無いぞ?仮にもお嬢様を護るという事は、この領地の明日を護る事に繋がるのだ。

 旦那様の護衛は隊で最強のリンネがやっているから、万が一も起きないが、お前は襲われれば今のような状況に成ってヘタをすればお嬢様の性格上、お前の身代わりを買って出てしまう可能性もあるんだ。

 今回はお嬢様の気分転換を兼ねて、しかも帝国の姫とのお忍びなので同行を許すが、普段では護衛の時はいつも通り、わたくしがお前に代わって同行しなければならないのだ。

 その事を弁えて、くれぐれも失敗はするなよ?すればリンネとの個人訓練を丸一日させるぞ?」


「ひっ!わ、分っかりましたー!くれぐれも失敗しない様に気を付けます!」


「なんか、酷い脅しもあった様だけど、纏まったなら行こうか?」


(今の脅しを平然と受け流すって事は、こういう会話はしょっちゅうなのか?それとも本当はそんなにキビしい物じゃ無いのか、判断に困る会話だ)


「では、行ってらっしゃいませ」


「うん。…じゃあ、行ってきます」


 微笑みながら、ソフィーにそう応えたカノンの背中に付いて行く徹とコムドだった。





 案内された部屋は、周りとは一線を画す物だった。

 素人目にも、何かしらの結界の魔法具が置かれ、侵入者をチェック物するだろうペルナを用いた絡繰りが置かれていた。(主に廊下に配置された金属の騎士が、此方に睨むを利かせる場所に配置され、その中の眼球がじ~っと部屋に入ろうとする者を見張っている感じだ)


「ココが父さんの執務室で、その奥に各重要施設への転移魔法鏡があるんだ。今扉の魔法陣を開けるから、ちょっと待ってね?」


 カノンがそう言って、自分の指を扉のノブの、日本での鍵穴の部分の魔法陣に当てる。

 すると、ここでの魔法式ロック技術が反応したようで、その魔法陣の色が赤から青に成り、その後カノンがノブを回すと、スンナリ開いた。


(う~ん、如何も地球の、しかも日本の科学技術と見た目変わらんから、ゲーム世界にしか思えんな。しかし、システムメニュー画面が相変わらずどんな言葉でやっても開かないし、スキルも使えん。これは本格的にこの世界特有の言語があると見て、その言葉を知らないと駄目っぽいな)


 そんな風に考えて居る徹を置き去りに、二人は徹が付いて来ていると思って先に行ってしまう。

 そして、そんな事になったら当然徹が感じた様に現代科学の様な技術力の魔法技術。閉まってしまう扉を呆然と見ながら、反応できずに取り残され、慌ててノブを掴んだ徹に魔法が反応する。

 

 ピー!!っという機械の音と間違いそうな警告音を鳴らした後、廊下にある金属の騎士から、光の光線が放たれる。


(っく!回避が間に合わない!ゲーム世界で初めての死が、廊下の騎士の人形って情けねぇ!)


 と考えた時、脳裏に【種族特性自動発動】の項目が浮かび上がり、その中に、液状化の文字が躍る。

 何の事か分からないままで居ると、【液状化】の文字が点滅し、光線が体を通る一瞬のみ、体が液体のスライムの体に戻り、光線が通り過ぎた後は元の姿に戻っていた。

 これには徹自身が唖然。しかも、服も完璧に、傷付くことなくそのままだ。

 そして、イキナリの警報に急いで戻ってきたカノンとコムド。それから主の部屋の前で不法に侵入した賊を捕えようと何処にこれだけ居たのかと思うほどの使用人が狭い廊下(と言っても横幅が優に4M以上ある、大人2人が横に寝転がれるくらいの広さだが)に集まった。


「あ、悪い。2人の後に付いて行く筈が気付いたら扉が閉まるとこだった。それで慌ててノブを掴んだら、警報が鳴って、この状態だ」


「……そう言う事なら、何も言えませんが、よく無事でしたね?この屋敷の最重要機密のこの部屋に無断で侵入しようと言う輩を生かしておかない位の防犯システムがしてあった筈ですが…」


 無表情ながらも少しだけ先ほどより驚いた感じの声に感動しつつ、皆に「ゴメン、迷惑掛けた」と一言詫びてから駆け付けたカノン達に向き


「悪いな、考え事してたら急に先に行き出して焦った。……じゃあ、行こうか?」

「…もう、気を付けてよね?連れて行くって言ったお客さんを連れて来る前に死なせたってなったら王爵の娘の面目丸つぶれだよ?…けど、ソフィーさんじゃないけど、良くあの警護騎士の魔法具の攻撃を無傷で躱せたね?しかも不意打ちで。

 僕は偶にあの騎士と同じシステムが使われた物を城の警備専門職の人の訓練で見るけど、特殊装甲の魔法鎧を着た警護の人が避けきれ無い位のスピードの攻撃なんだけど?」


「はは……、それは俺も驚いてるよ。躱せたって言うか、半分自動で躱せたって状態だからな?この事もお姫さんに聞かないと解決できないから、そろそろ行こうか?…今度は扉を開けてくれたら俺から入るよ」

「そうしよっか…」

「その方が良いね…」


 場の総意によって今度は徹から部屋に入る事になった。





 部屋に入ってからも驚きは続く。徹はどうせゲームの世界なら、棚に魔法紙で出来た本が無造作に入れられていると思っていたのだが、明らかなオーバーテクノロジーが使われていた。

 それは電気ではなく、カノンに言わせればペルナ技術で出来たパソコン。近くに大きな箱状の魔力集積ボックスから魔力を送り込み、そのメーターが無くなるまでパソコンの中に保存されたデータを閲覧、検索、送信、全て出来ると言う物。まさに科学と魔力が一体になった一物だ。

 そして、中の説明は流石に出来ないという事で、姫が待つ城への転移魔法鏡がある、奥の扉に入り(ここは特殊な鍵は使われていない、普通のノブを回せば開く扉だ。)そのまま鏡の前に三人で立つ。


「ココで待っててね?操作は血の契約を行った者にしか出来ないの。この家で出来るのは、僕を含めて7人だけ。その中で今現在家にいるのは僕とソフィーさん、後さっきは居なかったけど執事長のブライムさんだけだから、ソフィーさんが付いて来なかった理由も分かるでしょ?……っし、これでOKっと。それじゃ、行くね?」


 それから、徹たちの傍まで戻り、3人が全員鏡に映る位置まで来てから、カノンが自分の右手の親指の先を持って居た護身用らしきナイフで少し傷付け血をだし、それを床に擦りつける。

 するとその付けた血の部分が光だし、光の帯なって鏡まで伝わり、鏡が突然発行したかと思うと、場所が既に入れ替わっていた。

 詳しくは少々天井の高さが高くなっていた。

 先ほどの転移部屋より優に三倍の大きさだ。

 という事は、自動的にセキュリティーも先ほどの家より数段上と考えるのが素人考えなので、途端に緊張してきた徹に苦笑して、コムドが言った。


「そんなに緊張しなくても、レイム姫はお嬢には優しいから、楽にしていていいと思いますよ?」

「レイムは確かに優しいが、他の側姫や妾の娘どもはそれぞれ癖が多いぜ?」

「…あ、ケイトさん、帝都に来てたんですか?お久しぶりですね?」


 コムドの身内の会話に、何処から現れたのか、地球で言う処のイケメンが出口のドア(両開きから、片開きに成っている)の前に立っていた。

 そのイケメンの登場に嬉しそうにカノンが駆け寄って挨拶する。


「知り合い?」


「おいおい、俺の事を知らない国民が居るのか?俺もまだまだって事かな?カノンちゃん?」


「ハハハ…、彼は特殊な事情があって、記憶喪失なんですよ。それで、色々と魔法やペルナに詳しいレイちゃんや護衛のカーラさんに少し聞こうと思って、付いて来て貰ったんです。魔法やペルナ関連の事ならレイちゃんに聞いた方が、自分で調べるよりよっぽど早いでしょう?」


「自国の姫を辞書替わりか?流石は大・王爵家の自慢の天才少女だ。やろうとする事の内容が他が考えない規格外の発想だよ」


「はっはっはー、褒めても何も出ないですぜ旦那?」


「はっはっはー、褒めてないよ?嫌味を言ってるんだよ、お嬢ちゃん?」


(なんだ?こいつ等の関係は。初めの対応からして、友好的な雰囲気だったが、話を聞いてると全然そう言う風には見えん)


「気にしないでね?徹さん。この二人のこのやり取りとは最早恒例行事だから。そして、このケイトさんって人は、お嬢と同じ4大貴族の一つ、キスリング領を治める、キスリング王爵家の長男で、この帝国の帝姫の一人、長女フラン様の許嫁であり、次期帝国の皇王の最有力候補でもあるんだよ。その実力もあるしね?」


「俺自身に代わっての説明ありがとう、コムド君。って事だから、俺の事は覚えていた方がお得だぜ?キスリング家の家督は弟のケントにでも継がせてやれば文句は無いだろうから、後はフランの決心が固まるのを待って、皇王の引退を待ち、そこから俺の帝国の幕開けだ。見てろ?面白い大陸にしてやるさ。はーっはっはっはー!!」


 そんな高笑いと共に転移魔法鏡に己の行く場所を設定しながら、徹たちに手を振りながら転移して行った。

 

「あのケイトさんも悪い人じゃないっていうか、基本良い人なんだけど、我が強すぎるんだよね~。フラン姉さんもよくあの人の行動を我慢してるって思うよ。…って、そんな事より、レイちゃんの部屋はこの突きあたりの部屋だから、早くいこ?」

「そうだね」

「そうだな…」


 そうして、一行は無事の目的の姫の部屋に来たのだが…


「現在姫は自室にて行水の時間だ。カノン嬢は良いが、男共はここで待て」


 と、衛兵?の様に扉にもたれ掛る女騎士に止められた。


「あ、カーラさん。お久しぶりです。レイちゃんに相談ですが、カーラさんにも聞きたいことが有るんです。良いですか?」

「……内容に依りますね。貴女の質問は、この国の重要機密に繋がる事が多い」


「いや、今回は魔法とペルナに関しての事だけです。レイちゃんにも使い魔で話は通してるんだけど、カーラさんにも聞いて於きたくて」


「分かりました。そう言う事なら、私が知っている範囲でお答えしましょう」


「わーい、ありがとうございまーす♪」


「…で?話は?」


 あまりのカノンのテンションに、付いて行けない女騎士、カーラが冷たい口調で話を進めさせる。


「もう、冗談が通じないんだから…。まぁいいか。聞きたいことは兵器召喚で召喚した言葉を解する魔物の魔法やペルナの発動例を知る限り教えて貰いたいの。…分かる?」


「それを知ってどうする御積りで?」


 冗談を受け流され、途端に真顔になってしたカノンの質問に、カーラはスーッと眼を細め、カノンの眼をジッと見つめてその心の内の部分を見ようとしている。

 対して、カノン自体は単なる好奇心と、自らの召喚した召喚獣(異世界人?)に対しての興味があるだけなので、そのまんまの説明をする。


「…ちょっと待ってね?……」


 そう一言断り、カノンは自分を中心に簡易の音声遮断と視界幻覚の魔法を使った。

 カノンが使える元素魔法は、理解さえしていれば、大気や周囲の温度を調節したり、空気の動きを調節した所謂結界魔法も可能なのだ。

 今のカノンは未だ学生故に、広範囲には効果はなく、優れた魔法耐性のある者やその手の道具を使用されたら打つ手はないが、少なくても目の前の騎士にはその魔法でどれだけの重要度かは認識して貰える筈だ。

 そして、案の定頷いたカーラに、カノンも頷いた後、本題を切り出す。


「実は、ココにいる徹さんって言うんだけど、彼はもしかしたら僕が兵器召喚で異界から呼び出した異世界人かも知れないの。まぁ、本人(?)が言ってる事だから、何処までが本当かは分からないんだけど、召喚陣から出て来た事と、始めの姿がスライムだった事は僕とココにいるコムド君が証明する。だけど、彼曰く、スライム形態から人型には成れたけど、自分の知っている…いや、出来ていた筈の技術が使えないんだって。しかも、これはさっき僕の屋敷で有った事なんだけど、あの警護魔法具の騎士鎧の攻撃を知らない内に躱してたんだって。しかも不意打ちで…」


「…その話は本当ですか?彼が本当に召喚獣かどうかは兎も角、あの騎士鎧の攻撃を躱せる者と言うと、その実力は確かですし、それが不意打ちとなると騎士団の中にも何人いるか…。…分かりました、私の知っている範囲でなら、お答えしましょう」


「…それ、さっき言った…」


 カノンの話を聞いている内に、訝しげに眉間に皺を寄せていたカーラは、しかしその最後の発言に一気に興味をそそられたようだ。

 やはり騎士で有る以上、強い者には興味があるらしい。

 そして、先ほど言ったセリフを再度言う愚を冒してしまい、カノンに呆れられた。


「それは兎も角「うわっ!明らかに話を逸らせた!?」…私が知る情報では、ペルナ一覧と言う物が頭に浮かんで来たら、第一段階。そして、第2段階が、カノン嬢の言うスライムの場合で、形状が人間の場合、頭に予め【ヒューマン・ペルナ】という物を浮かべて置けば、その種族の中の今使えるペルナが使用できると言った物です。まぁ、これは過去の召喚スライムが言っていた物で、詳しくは解明されてない情報ですが、やってみる価値は有りますよ?」


「だね。って事で、徹さん?何か簡単な技術を使ってみて?今言ってくれた方法で」


「分かった」


 カノンに急かされ、徹は取りあえず頭で【ヒューマン・ペルナ】と念じると、向こうでやった情報の波は収まっていて、綺麗に区分けされたスキルの一覧…ペルナの一覧が目前に表示された。


(……これはビックリだ。以前やったゲームの、提出したスキルが全て使える上に、残り習熟度に線が入ってるって事は、恐らくカンスト状態なんだろう。これなら、他の種族の場合でも良さそうなスキルは使えるかも知れない。…ッと、今は試しだったな。取りあえず、浮遊で行くか)


 そして、ペルナ欄から浮遊を選び、頭にその現象を思い浮かべる。そして、発動。


「(浮遊)」


 徹が念じると、当然の如く浮き、天井近くで止って下を見る。

 すると、徹に向かって手を振っているカノンが見えるので、それに徹も応えてから下に降りる。

 そして、降りてきた時の開口一番の声が……


「凄いね!徹さん。魔法じゃ自分を浮かせる位の魔力を持つ人は中々居ないよ?!これは魔法も期待できるし、僕が兵器召喚で呼び出したって事もあるし、僕の専属護衛に成って貰えたら嬉しいよ!……ねぇ、カーラさん!」


「嬉しいのは分かりますが、自分を浮かせるだけのペルナではしゃいでいてもあまり意味は無いでしょう。…他には有るか?」


(戦国忍術オンラインでやった忍術系のスキルが面白そうだな…。転移は位置固定マーキングをしないと駄目だから、オーソドックスな分身体でもやってみるか)


「(分身)」


 頭の中で結論を出した徹は脳内で≪分身≫を念じると、スライム種故か、体が一旦液状に成り、次の瞬間には水の塊が二つに分裂し、また次の瞬間には徹の姿が二つに成って現れた。

 これにはカーラ他2人も唖然。

 勿論この世界のペルナや魔法でも分身を作ることは出来るが、そのスピードが群を抜いて早かったためだ。

 通常のこの世界の水分身は、構成物質を全て分解する為、一旦液状になる事は変わらないがそのスピードは徐々にであり、熟練の専門家がやっと徹の様に一瞬で分身出来る程度だ。

 決して今やり方を学んだ者が出来る行為ではないが、これは前の世界のゲームでの補助が生きている上、使い慣れているのもあるし、形状が変化させ易いスライムの種族に成っていることが一番の要因だ。


 そして、皆が唖然としている内に分身を解除し、皆の反応を待っていると、ここで漸く部屋から「カーラ?もう良いですよ?そろそろカノンちゃん達が来る頃でしょうから、来たら入れてください」という声がした。


「……言葉通りだ。今から姫の部屋に入るが、徹と言ったか?お前はわたしが常に監視して置く。先ほどの二つを見ても、十分な脅威で有る事は分かった。勿論この城の精鋭である騎士団が遅れを取るとは思えんが、万一の場合もあるから気を緩める事はしない。心して置け?…では、入れ」


 そう言ってカーラが代表してドアのノブに手を掛け、引きドアを開ける。

 ……その瞬間だった。

 開けて目の前にいるのがカノンだと思い込んでいたのだと分かる様な、物凄い勢いでドア正面の徹に抱きついて来て……


「お久しぶり!カノンちゃん!会いたかったわ!……って、何か体が依然より…かた…く…、……誰?」


 抱きついた時の違和感に気付いたレイムが、少し顔を離してその人物を見ると、また事の無い男性が居た。そして、ヤバげな状態になる事を本能で察した、カノン(横に居た)がフォローを入れる。


「あ、レイちゃん。その人が使い魔で話したスライムの召喚獣の徹さんだよ。話は長くなると思うから、取りあえず部屋に入れてくれる?そろそろ僕の魔力も切れそうだし」


「……まぁ良いです。カノンちゃんの召喚獣なら私にとっても大事な物ですから、特別に許可しましょう。……入ってください。カーラは入室後結界ペルナを最大レベルで展開。情報の問題ない部分のみ漏らす様に」


「心得ました…」


 そんなこんなで、徹たち三人が不審に思う中、遂に最初の目的地と思しき帝国の帝姫の一人、レイム姫の部屋に入る事になった。

 

 

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