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一人百物語 2

でも覚えてるんだ

作者: 犬猫夜行
掲載日:2026/08/06


志賀さんが盆休みに志賀さんのお母さんの田舎に行った時の事。

その時、お母さんの田舎では十数年に一度のお祭りで賑わっていて、志賀さんもそれを楽しんできた。

「それで思い出したんだけどさ」

志賀さんは言った。

「俺、まだ小さかった頃にもその祭を見た記憶があるんだ。

それでさ、小学生の頃にやっぱりおふくろの田舎に行った時、親戚の人たちがその祭の時の写真をみんなで見て何か話しててさ。それに俺も

ああ、この時は○○伯母ちゃんが大根を沢山持ったままこけて、大根を道にばらまいちゃったよね、とか

××叔父さんが御輿を担いでたら褌が取れちゃって、とか話したんだ。

そしたらさ。

親戚の人たちがみんな妙な顔してさ。うちのおふくろを呼ぶんだ。

で、親戚の人に何か言われておふくろも変な顔してさ。

あんた、覚えてるの?

何で知ってるの?

って言うんだ。

それで、うん、覚えてるよ。まだ小さかったからぼんやりとだけどって言ったら。

おふくろも親戚の人達もますます変な顔してさ。

何言ってるの、あんたその時はまだ生まれてなかったんだよ。

私のお腹の中だったんだから。

って言われたんだ。

あの時、あんたは私のお腹で臨月でさ。

その時のお祭りでお祓いしてもらった腹帯をばあちゃんに巻いてもらったんだから。

それなのに何でそんな事知ってるの、って。

でもそんな事言われてもさ。

今も覚えてるんだよ、俺。

伯母ちゃんが落としたのは今から思えばお供えの大根だったみたいでさ。それが割れたり折れたりして。

叔父さんのはポロッと出ちゃってさ。みんな大笑いの大騒ぎで。

でも叔父さんは最初それに気付いてなくてさ。

それからその日は雨が降った後でぬかるんでてさ。みんな泥だらけになったりとか。

そういうのを言えば言う程妙な顔されてさぁ。

俺、なんでそんな記憶があるんだろ。

変な話だろ。

今もその時の事を時々親戚のおばちゃんたちに言われるんだ」


これも生まれる前の記憶といえるものなのかな、と志賀さんは笑っていた。



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