サンフランシスコ空港で入国審査官にからかわれた話
ユナイテッド航空でサンフランシスコ空港に着いた。
入国審査官はまだ若い金髪のお兄さん。結構男前。
「どこへ行くの?」と訊かれて
「ラスベガス」と答えたら
「何しに行くんだい? 結婚するの?」だって。
ラスベガスって結婚の手続きがすっごく簡単で式場もいっぱいあるから、駆け落ちカップルがよく式をあげるんだよね。
アメリカ人ってパスポートコントロールでもジョークを言うんだ。からかわれているのが自分じゃなければ面白かったかもしれないけど、当時二十代後半ではあったけど西欧人にはよく十代と間違われていた私にそんな質問をするなんて質が悪い。今ならセクハラで訴えられるんじゃないの。
小さなリュックひとつ担いだだけの貧乏くさい恰好した十代の小娘って、まんま家出少女に見えたのかもしれないけど。
でもお役人様には逆らえないので、
「グランドキャニオンに行くんだよ(私の主目的はグランドキャニオンでラスベガスはあくまでも通過点だと強調したかった)」って言ったら、何か早口で言われたんだけど、結婚発言でカァっとなっていたのと、私の英語力が低いせいで咄嗟には意味を把握しかねて、つい言われた言葉の最後「Tomorrow?」をオウム返ししてしまった。
『何が明日なの?』って訊きたかったんだけど、瞬間翻訳できなかったもので。でも一拍遅れて私の脳内でお兄さんの科白が
「ああ、そう。その後結婚するんだ。いつ? 明日?」っていう風に日本語変換されたけど、遅かった。
「そっか、明日結婚するんだ」って言われて周りにいた人達に笑われてしまった。
「違うよ~っ!」っていくら言っても
「だって自分で明日って言ったじゃないか?」って言われるし。
まったく、アメリカ人ときたら……。
どうして入国早々こんな恥ずかしい思いをしなくちゃいけないのよ。
「So, will you marry me?(じゃあ、アナタ私と結婚してくれる?)」くらい言ってやれば良かった、と思ったのはイミグレーションエリアを離れた後だった。




