5月25日(日)
夜のお店のサイトを見ていると、いつも指名するKEDさんの写メ日記が更新されていた。今日は夕方四時から出勤するらしい。日記の最後にはこんな文言があった。
『最近会えてない本指名のお兄さま…元気かな? 会いたいな…』
これ、自分のことかなぁと内心思ってしまう。"お兄さま"はたくさんいるのだから、少し考えればそんなはずはないのだが……。こちらの気持ちをさりげなくくすぐってくる巧みな誘導だと思う。
KEDさんは良くも悪くも大人な人で、距離の取り方が上手い。指名で入っているときはいろいろなことを楽しそうに話してくれるのに、オキニトークでは必要以上に踏み込んだ会話はしない。
また男心をくすぐるのが上手く、少し間が空いたときなどは(と言っても二ヶ月弱くらいだが)、
「忘れられたかと思ってましたぁ」
開口一番そんな言葉を口にされたら嬉しいに決まっている。
いつかもお酒とおつまみを準備して待っていたときも、「えー、すごーい!」と部屋に入るなり嬉しそうな声をあげてくれていた。高いお酒を用意したわけでもないし、食器だって百均で買ったプラスチックのものなのに、そんな風に喜んでくれる。
おとといもKEDさんを予約しようとしたらすでに完売になっていて、やはり他のお客にも人気があるのだろうなと納得させられる。
それだけに自分が鴨であることを思うと、少し悲しい気持ちになるのだが……。
それはそれとして、生活は不安定になっている。
入院先から帰ってきた父は若干被害妄想気味であり、お金を取られるのではないかと疑心暗鬼になっていて、レシートなども見せるようにと言われる。買い物を任せてくれるならある程度は自由に任せてほしいのだが、"わたしの金"と言われるとなにも返す言葉がなくなってしまう。下手に反論すると癇癪を起こすので、最近は言葉を飲み込むことが増えた。
それならば自分で生活費をしっかりと稼いだ方がいいのではと思い、ハローワークの求人などを見ているが、障害者雇用は正社員がなく、ちゃんと生活していけるお金をもらえるとなると一般求人になるのだが、正直普通の人と同じように仕事をしていける自信はない。
いまの清掃のパート時間を増やしていくのが一番堅実なのだろうが、五、六時間清掃をするのはちょっと気が進まない。それに障害者雇用のため最低賃金なので、交通費込みでももらえるのは十三万ちょっと。そこから今度は保険料が引かれるとして、手取り十二万を切る。
自分の障害年金とあわせても十七万に届かない。貯金を切り崩しながらやっていけば、母の年金まで持つが、貯金もできず赤字というのも……。しかしそれが一番堅実な道なのだろう。
ほんとは配送や送迎などの職があればそちらを探したいのだが、支援員の方からはあまりいい返事をもらっていない。〇〇さんは肉体的な疲れに慣れていく方がいいんじゃないかと言われている。しかし、このままトイレ掃除を続けるというのはあまり気が進まない。
とりあえず明日ハローワークで気になった求人について相談してみようと思うが、先行きは暗い。
それにきのうは荒れていた父も、今朝になると落ち着いてきたらしく、自分たちと一緒に暮らす方向で考えているらしい。痰吸引なども、素直に応じてくれた。韓流ドラマもみたいと言っている。
父も不安定なので、いまはよくとも明日の機嫌は正直未知である。本当はどう転んでもいいように自立できるだけの経済力があればいいのだが、なかなか自分には難しい。介護をしながらフルタイムで働く自信もない。どうすればいいのかわからない。
きのう今日と寝不足である。
今まで寝室として使っていた部屋に父のベットがあるため、もう一つの部屋に布団を敷き、母と二人で寝ている。ソファーもテーブルもあるためスペースが限られており、お互いの体がくっつくほど狭い場所に雑魚寝している状態である。なかなか気持ちも落ち着かず、目が覚めてしまうことも少なくない。息抜きをしたくとも、自分の部屋がない(もともとなかったが)。プライベートな空間が完全に消滅してしまった。だから疲労も溜まりやすい。
家賃三万円の狭い長屋に、大人三人(自分は大人に数えていいのだろうか?)、チワワ一匹。先が思いやられる。