5月12日(月)
日ごとに自分の声が小さくなっていく。
パート先に出勤(三時間なのに大げさな言い方だけれど)した際、会社はちょうど休み時間で階段や廊下などでパラパラと人とすれ違う。挨拶するとだいたい返してくれるが、人によっては素っ気ない感じの反応もあって、そういうことが続くとだんだん自信がなくなってくる。
また自分は総務部に所属しているため、最初はいちおうオフィスに顔を出さなければならない。その際に挨拶をして入っていくのが非常にいやで、毎回憂鬱な気持ちになる。
総務の人は優しいが、奥の営業の人たちは少し雰囲気が違うように感じる。接する機会もほとんどないし、清掃担当の自分などはあまり気にしていないのだろう。みんな自分の仕事があるのだから仕方がない、と思いつつも、何となくもやもやとした気持ちが残る。
自分は声が小さいので、挨拶しても顔をあげてくれないことがあると消えたくなってしまう。入って一週間くらいの頃は、まだ声も出せていたように思うが、一ヶ月もいるとだんだんと地の自分が出てきてしまい、弱気になってしまう。そしてそういう自分を知られることに対する、居心地の悪さも生じてくる。
午後からの出勤で三時間だけのパート、そして土日は完全に休み。これ以上ない条件なので、この挨拶さえなければいいのだが。
今日は余裕があったので、月一回の壁拭きをした。見た目は白いのに、タオルで拭くと黒く汚れが付くので長い時間のうちにホコリが積もっているのがわかる。円を描くような拭き方だとホコリが散らばるので、上から下に真っ直ぐ落とすように拭いている。
ずっとやっていると汗が額から落ちてきて、目にしみる。それをたまに袖で拭いながら真面目に作業していた。気分が上がるものではないが、一人ででできるので気楽である。
家に帰ってからは、録画していたドラマを消化していた。NHKでやっている海外ドラマ「アストリッドとラファエル」。自閉症の女性アストリッドが自身の能力を活かして、犯罪捜査を行っていく推理ドラマ。特別面白いというわけではないけれど、何となく見続けている。
それから本棚が届いたので、ダンボールにしまっていた本をそこへ入れていく作業をしていた。精神病関連など、ハードカバーの箔がつく本が奥に隠れてしまったのが残念だが……。父も帰ってくるし、これから訪問看護の看護婦さんも来るようになる。せめて目に見えるところに聖書でも置いておこうかと迷ったが、やめた。