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炎焔の鎧  作者: なとな
第7章 敵地
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第7章2話 集合

 私たちがカラスティアから出発の準備をする中、エリスとマッシブラの二人が声をかけに来る。エリスは左腕を失い、戦線離脱することになった。マッシブラも内蔵に深刻なダメージを受け、しばらくは安静にしなければいかないらしい。


「カイラさん、アクイラさんを絶対に助けてください」

「まああいつはルーナ様の大事な人で私にとっても友人だ。だが、皆も大事だから無理はしないでくれ」


 アスカリに向かうのは私とルーナ、クリスタラとセレナ、妖精族のジェンマとアウロラの二人にリーナの付き人のリオニアだ。明らかに人数が多いので馬車は二つに分かれる事になるが、基本は同伴。しかし不思議だ。


「リオニア、アルゲンテア伯爵家から増援はないのか?」

「はい。リーナ様救出の報は伝えてありますが、何せ急な長距離遠征。すぐに出発は難しくないのですが…………我々が待つ必要はないかと?」


 どうやら彼女は一刻も早くリーナを救出したいらしい。それは我々も同じ気持ちだ。教会側の兵士たちも時期にまとまってくるらしい。どうやらこれから私たちは魔族との大きな戦争になりそうだ。


 馬車の中では私の隣に座るルーナを私は優しく抱きしめてやる。彼女の寝顔は本当に可愛らしく…………彼女の笑顔の為なら、私はきっともっと強くなれるだろう。だってルーナは私の…………いや、何も知らないままでいいか。彼女が彼女たち家族が森でひっそりと暮らしていたのは…………そう言う事だから。


「ルーナ…………お前は必ず、幸せになるんだぞ」


 そう言って私はルーナの頭を優しく撫でる。

 するとルーナは嬉しそうに私の胸に頭を擦りつけてくる。


「私は…………アクイラさん…………」


 どうやら寝言のようだ。寝言でもアクイラを求めるか。よほど再会が嬉しくて…………そして今が苦しいのだろう。大丈夫だルーナ、お前の幸せは私が護る。


「アクイラ……必ず助けてやる」


 私はそう決意し、馬車の外の空を見上げる。空はどんよりとした曇り空でそれは今の私たちの心象風景のようで、少し気が滅入りそうになる。


 それから数日、私たちの馬車はアスカリの街にたどり着いたのだ。早速ギルドに向かおう。一人でもいい。アクイラの為に駆けつけてくれる仲間がいてくれれば…………良いのだが、そう思って私はアスカリのギルドに向かい、今回の魔族領進出に対して集められた会議室に足を運ぶと…………


 そこには想像以上のメンバーが集められていたのだ。…………地、風、火三聖女も当たり前のように集まっていた。そのほかにもルナリスの街でアクイラと一緒にいる彼の友人たちや、アスカリの街で出会ったことのある傭兵たちもいた。


 そしてテラとリーシャも私たちの到着を待っていたようだ。


「遅い…………」

「待っていたぞカイラさんそれから…………みんな。エリスの事も聞いた仕方ない。傭兵なのだからな。命があるだけ良かったと言える」


 リーシャは相棒であるエリスの事実上の引退を聞いて暗い表情になる。仕方ないことだが…………すると私の方に集まってくる四人組のエルフたち。


「カイラ様! お待ちしておりました!」

「私達を呼ぶなんてよほどの事態、でもうれしいです」

「カイラ様に呼ばれた以上、この俺様が華麗に解決してやる」


 三人は青毒のナリア、海銃のミズキ、毒剣のユウキそして無言で後ろに控えているひと際影の薄いのが双剣士レン。私と同じエルフで…………本人たちは知らないが全員孫やひ孫だ。


 一応セルヴァスの集落で会ったことあるのかみんなルーナを取り囲んだ。髪と瞳の色が同じなせいかみんなルーナには親近感が湧くのだろう。

 ルーナは困惑しながらもみんなに取り囲まれて少し嬉しそうだ。その様子を見ていたセレナがつぶやいた。


「こうしてみるとルーナってエルフみたいだね」

「…………そうかも」


 ルーナはにこりと笑う。私は私の部下たちとルーナが中良さそうにしている様子を見て、こんな状況なのに少しばかり嬉しくなったものだ。私は…………もう十分だな。こんなにも多くを残せたのだから。


 そして私は改めて集まってくれた面々の方に向けて声を上げた。


「皆の者! この地に集まったくれたことを感謝する。私は森姫カイラ。知っている者も多いと思うが特級傭兵ランクダイヤモンドの傭兵である。今日集まって貰ったのはほかでもない。魔族に拉致された我が同胞と貴族の娘を救出するため、我々は魔族の住む地へと大規模な進軍を開始することを決意した。魔族共はこちらに進軍し、我々の安寧を脅かそうとしている。であれば、彼らを叩くのは必然であろう。今までは本拠地こそわからなかったが、今回ついに突き止める事が出来た! であれば! 友を救い、魔族を殲滅させる。そのどちらも果たそうではないか!!」


 そこそこの歓声が聞こえるが…………不思議かな? 声のほとんど女の子。アクイラよ…………男の友人が少なすぎるぞ。


「これから我々は長期の遠征をすることなるが、それでも一緒についてきてくれるか?」


 私がそう言うとそれぞれが口々に語りだした。


「アクイラの救出? よろしくてよ」「……………………」「まあアクイラの奴はルナリスじゃ一緒に馬鹿した仲間だしな」「アイツとはアスカリの街のトーナメントで負けっぱなしで逃げられたくねーしな」「アクイラ殿には祝福の証を渡している。故に私は彼の元に行くべきだろう」「彼は未来の強き者。老い先短い私が命を懸ける価値はあるだろう」「彼には命を助けられていますしね。彼の命を助けられる機会。参加させていただきます」「友人だ、仕事じゃなくても行くさ」「こういう巡り合わせもあるでしょう、レグルスとマーレアの恩人であれば私も参加いたしましょう」「私も向かいます、たった一人の弟ですから」「私も彼とはそれなりの付き合いのあると思いますので」「私がアクイラ様の救出に向かわない訳にはいきませんね」「彼には返しきれない恩がありますからね」「私はレクサの付き添いですが…………なんですかこの空気」「そういうなリヴァイア…………ああ、俺も別にアクイラのことはどうでもいい。面白そうだから来た」「…………なんなんだこいつら」


 私は集まった面々を見て、思わず笑いがこみ上げてきた。


「ふ……ふははははは」

「……カイラさん?」

「いや、なんでもないよルーナ。ただ、こんなにたくさんの仲間が私についてきてくれる…………いや、アイツを想ってくれていると思うと嬉しくてな」


 私がそう言うとルーナはにこりと笑った。


「うん。みんないい人たち…………アクイラさんの大切な仲間」

「そうだな……」


 そして私たちは魔族の住む地に向けて進軍したのだった……。あまりの大所帯に見えるが、実際は少なすぎるも良いところだろう。なにせこれから私たちは未開の地に踏み入れるのだ。


 ここに集まったのは傭兵。見渡せば懐かしい顔も知らない顔も誰もがアクイラを助けたいと集まった者たちだ。


 私が戦力を確認するために皆のランクを確認しているとテラとリーシャの二人がこちらに近づいてきた。


「すまない私たちは昇格していてな…………アクイラの奴に先を越させてもらったさ」

「僕は…………追いついた」


 なるほど、テラは中級傭兵ランクエメラルド、リーシャは上級傭兵ランクルビーに上がっていたか。より頼もしくなったものだ。二人の実力は良く知っているし、昇格も頷けるだろう、本当ならアクイラだってもう中級と呼ぶにはあまりにも成果をあげすぎているくらいなのだがな。


 まずは見習い傭兵(ランクアメジスト)組、水の聖女ルーナ、風読のセレナ、煌姫リヴァイアの三人。

 そして初級傭兵ランクサファイア組、地の聖女ベラトリックス、黒影花のセリカの二人。

 次に中級傭兵ランクエメラルド組、地剣のテラ、風の聖女ゼフィラ、鉄腕のイグニス、火炎剣士ヴァルカン、風刃の騎士ゼファー、闇鎖闘志レクサ、掃除屋リオニアの六人。

 更には上級傭兵ランクルビー組、突撃のリーシャ、毒花のアカンサ、火の聖女ヴァルキリー、波濤の影忍ネレイド、獅子の戦士レグルス、静寂のイオン、銀鉾のシルヴィア、青毒のナリア、海銃のミズキ、毒剣のユウキ、双剣士レン、氷雪のクリスタラの十二人。

 そして我々、特級傭兵ランクダイヤモンド組は森姫カイラ、紫花のマーレア、盾将軍グラディアスの三人。

 そのほかにもルナリスのギルドからギルドマスターである女傑レアに看板娘のレアまで来てくれている。それからアクイラの契約した妖精族のジェンマとアウロラ。


「しかし四聖女全員揃うとはな。祝福の証を渡している三人はともかく、君はあえて席を外すのではと思っていたよ風の聖女」


 私は風の聖女ゼフィラに声をかけると彼女は少し困ったような顔をしていた。


「確かに私がここに来ること自体、彼を認めているようなものになりかねいかと思いますが、私はあくまでレグルスとマーレアの恩人を救いたいという気持ちから志願してまででその…………認めているとかないとかそういうのは一度度外視して頂ければ」


 風の聖女がそう答えると彼女の左右にマーレアとレグルスが来て笑っている。この二人とも久しぶりだな。


「お前たちも久しぶりだな、この戦いが終わったら…………祝勝会でも開こうか」


 私がそう言うとマーレアはにこりと笑い、レグルスは楽しみにしてると言って二人仲良くどこかに行った。


 とにかくこの人数で動くのであれば馬車は難しい。と、思っていたのだが幸いここはモルス伯爵領。そしてこの場にはそのモルス伯爵令嬢であるアカンサがいた。大人数を運べる二台の大きな馬車をいくつも貸し出してくれて大量の物資も積み込むが出来た。


 馬車と言っても人を運ぶような貴族の馬車ではなく、大人数や荷物を輸送用の馬車な為、座り心地はあまり良くない。私の乗る馬車にはルーナ、セレナ、テラ、リーシャ、ジェンマ、アウロラ、クリスタラとこの人数で乗り込めるほどだ。


 途中からは舗装もされていないような道をガタガタとしながら走る為、余計に乗り心地も悪くなるが、誰一人弱音を吐くものなどいなかった。そして私たちの前には…………広大な寒冷の海だった。


「ここからはこの海を越える必要があるな」


 事前連絡のおかげか、ここにはこの人数を乗せられる大きな船もある。しかし荷馬車は減らす必要がありそうだ。それを意味するのは、海を越えた先の未開の地は全て徒歩で進む必要があるという事。


「改めて…………この先、進みたくない者は引き返してくれて構わない」


 私の問いかけに答える者は誰もいなかった。皆、その瞳には決意を宿していた。


「怖気づかないよ…………アクイラがその先にいるなら」


 とテラは笑う。それに続けてセリカが口を開く。


「心強い方々…………これが弟の仲間たち。女性が多くて違和感がありましたが、良い仲間たちです」


 アクイラの姉御よ…………多分、その違和感は本物で間違いないぞ。…………私が言えたことではないがな。私たちは船に乗り込むとすぐに役割を決める。真っ先に決めるのは給仕役でそのほかには見張りに…………そうか、操舵を任せるものと航海士も必要になるな。この中でその役割が出来るものはいるのだろうか。


 そう考えていたら、ルナリスのギルドマスターである女傑レアが声をかける。彼女は元、特級傭兵ランクダイヤモンドの女性で正真正銘の化け物だ。おそらくこの中では、私の次に強いだろう。


「航海術なら私ができる。一応、連れてきたリズにも学ばせてあるから、私が休んでいる間も問題なかろう。操舵は余った男連中にでもやらせておけ」

「ああ、助かるよ」


 そしてそれぞれの役割を決め、私たちの船は北の海を更に北上することになった。目指すは、未開の地…………アクイラ達の連れ去られた土地だ。

マッシブラが参加できないのは、ルーナの魔法では外傷の蘇生はできても内蔵の蘇生には時間がかかる為ですね。

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