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炎焔の鎧  作者: なとな
第6章 絶望
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第6章9話 黒髪の女

「申し訳ございません、どうしてもアクイラ様にお伝えしたくこちらに向かいました」


 リーナさんがそういうと、ルーナはぎゅっと俺にしがみ付いて警戒し、セレナとエリスも俺の所に駆け寄る。唯一カイラさんだけはその場から動かなかった。


 クリスタラさんとマッシブラさんはいつも通りだ。まあカイラさんに至っては万が一の際は底からでも間に合うから問題ないと判断しているのだろう。


「以前私は脅されているとお伝えしましたね」


 リーナさんは警戒する俺たちを見ても構わず話し続ける。


「助けてください…………私の洗脳が効かない貴方だからこそ、意味があるのです」


 そう言ってリーナさんは俺の手を取ってじっと俺の目を見つめる。彼女の魅了の魔法が俺にかかることはもうない。


 アウロラの光のおかげだろう。俺はみんなと顔を見合わせる。困っているなら助けるべきだろう。しかし、どうすれば助けられるのかわからない。


「その脅しているやつってのは何者なんんだ?」


 俺が尋ねると、リーナさんは首を横に振った。


「詳しくはわかりませんが黒髪の綺麗な女性という事しか…………ただ、本当に恐ろしい方でした……私はその方に逆らう事など出来ません」


 情報が少なすぎるが、リーナさんの手が震えている事が分かる。とにかく会って見ないと何者かわからないが、相手が女だというならここまで怯える必要があるのだろうか。


 …………カイラさん、マーレアさん、アカンサ、聖女たち…………女って化け物多いな。怖くなってきた。


「アクイラ? 今何を考えている?」

「なんでもないですよ?!」


 急にカイラさんが思考を読んでいるかのように声をかけてくる。俺は慌てて否定するが、何故か疑いの眼差しだ。


「とにかくその女を探してやりましょう! こっちは人数もいるし簡単でしょ!」


 セレナが好戦的な発言をし、エリスもそれに賛同しているようだ。確かに俺達だけでもカイラさん一人でおつりがくる。


 ルーナ達も手伝ってくれるならクリスタラさんという戦力も加わるのだからこちらが負けるなんてことはないだろう。


「それで…………特徴とか能力とかそういうのはわからねーのか?」

「能力…………そうですね。彼女の出す音に触れると…………燃えます」


「燃える?」


 俺は思わず聞き返してしまう。しかし、彼女は頷いた。そして、自分のスカートをたくし上げうち太ももを見せてくれるが……そこには火傷の跡がある。


「この傷は消すことも許されない契約の証。一度治療を受けたことで、村一つを焼かれ、新たなに火傷をおいました」


 綺麗な肌には醜いほどただれた火傷跡。俺は思わず息を飲む。


「そいつをぶっ飛ばしてその傷も治療してやる。だから…………お前はもう泣くな」


 いつの間にか目に涙を浮かべる彼女の涙を指で拭うと、彼女は頬を赤らめる。


「お優しいのですね、アクイラ様は」


 そう言って照れているリーナに気付くとルーナはがっしりと俺をしがみ付き牽制するが、リーナさんはそれを微笑ましそうに見ていた。


「それで音と炎意外に特徴は?」

「…………そうです! 確か紫色の刃の短剣を持っていました」


 紫色の刃の短剣を持つ黒髪の…………美女か? いや、まあ悪い奴だ。対人それも女性となるとどこまで出来るかわからないが、悪い奴だし遠慮なんてできねーよな。


「それで……その女はどこに?」


 俺がそう尋ねると、彼女は少し考え込んだ。そして、意を決したように口を開く。


「ここから北にある廃墟にいます。私が魅了して集められた人たちもそこに」

「……そうか。なら明日行こう。今日は疲れもあるし俺たちも万全じゃない」


 万が一強い相手だった場合の事も考慮すべきだし、ルーナも疲弊しているわけだしひとまず今日はゆっくり休んで明日に備えるべきだ。


「夜も遅いし寝ようか」


 俺がそう言うと、リーナさんは空を見て微笑んだ。


「そうですね……不安ですので、アクイラさんとご一緒に寝てもいいですか?」

「ダメだ!!」


 不安なのはわからないでもないが、ここには厄介な状態のルーナもいるし、セレナやエリスだってあまり良い思いをしないだろう。カイラさんはなんかもう達観してるしいいか。


 ルーナが完全に威嚇を始めるし、セレナとエリスも俺に抱き着いてきた。カイラさんは笑っている。クリスタラさんとマッシブラさんはただただ静観していたが、この状況を突っ込まないでくれて有難かった。


 結局俺の右側にルーナ、左側にリーナさん。それ以外にも囲まれるように眠る事になった俺は、冷や汗でいっぱいだった。最初の夜営はクリスタラさんが一人でしてくれるみたいなので、俺はそのまま横になった。


 翌朝、カイラさんに起こされ起床する。


「全くお前は…………無駄にモテるな」

「な、何でですかね?」


 俺は中級傭兵(ランクエメラルド)の傭兵だ。特別な事はない。


「まあ簡単な話だ。長寿の私が言うと説得力がないが、人の子は人生四十年程度なのだろう? 長生きすれば六十まで行くとか…………十代や二十代でツガイを見つけなければ子孫も残せないだろ? そこで強くて親しくまだ十代の男の知人だ。モテて当然だろう?」

「は、はぁ」


 俺はいまいち納得できなかったが、とりあえず頷いておく。好かれること自体は悪いことじゃないしな。


 とにかく全員が起きて廃墟に向かうことで話を進めるが、ここでクリスタラさんが手を挙げる。


「すみませんが私は同行致しません。これも修行ですルーナ様、アクイラさんそれからリーナ様と…………」


 クリスタラさんは指をさす相手を選んでいる。最後の一人をセレナかエリスで迷っているようだ。俺としては蒼炎焔の鎧エンフレクス・アルマ・カエルレアを使えるし、セレナだと助かるのだが…………


「それではエリスさんの四人で行ってきてください」

「私ですか?」


 戦力的に言えば…………一番まずいパターンだ。カイラさんもクリスタラさんもマッシブラさんもいないし、セレナがいなければ蒼炎焔の鎧エンフレクス・アルマ・カエルレアも使えない。


 ルーナは今、どの程度聖女の力を扱えるのかわからないが、エリスは援護射撃主体で…………リーナさんは一般人だ。


 この四人で敵陣に行くって正気か?


 だが、クリスタラさんは意見を変えてくれそうな雰囲気はない。仕方ない。この四人で行くしかないか。

 俺たち四人は準備をしてから出発することになった。


 リーナさんが本当に助けを求めていると信じて。

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