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炎焔の鎧  作者: なとな
第1章 出会い
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第1章9話 力の差

 カイラさんから魔法禁止の勝負を挑まれ、戸惑いながらも拳を構える俺。カイラさんは静かに立ち尽くしていて、その余裕たっぷりの姿に少し苛立つ。彼女の淡い緑のスカートが風に揺れ、白い太ももがチラッと見えるたびに目が吸い寄せられそうになるが、今は戦いに集中しなきゃいけない。俺から仕掛けるべきだろうか。


「来ないんですか?」

「だから脚は使わないといっただろう? 私は一歩も動く気はないよ?」


 カイラさんは余裕の表情で立っている。その挑発的な笑みがムカつくけど、逆にこっちの闘志に火をつけてくれる。お望みどおりこっちから仕掛けてやる! 俺は一歩踏み出し、右ストレートを繰り出すが、あっさりと避けられる。だが、俺が狙いを定めていたのはそれじゃない。このワンパンチはフェイクだ。本命は足払い。左脚で地面を蹴り上げつつ体を回転させ、カイラさんの足を払おうとするが、彼女は身をかがめて俺の足を掴む。そしてそのまま後方に放り投げられてしまった。スカートが翻って白いレースの下着が一瞬見えたが、すぐに地面に叩きつけられて息が詰まる。


「私の勝ちだ」


 カイラさんは誇らしげに笑う。くそ! 悔しいけど、確かに俺の負けだ。立ち上がり、木に背中を預ける。どうやら少し打ち所が悪かったらしく、一瞬視界がぐらついた。地面に尻をつけたまま見上げると、カイラさんの胸の膨らみがシフォンブラウス越しに揺れていて、つい手を伸ばしたくなる衝動が湧くが、何とか我慢する。


「大丈夫か?」


 カイラさんは心配そうな目で俺を見て、こちらに近づき手を差し伸べる。その優しさが逆に腹立たしくて、彼女の細い腕を掴んで引き寄せたい気持ちを抑えた。


「……はい」


 俺はそう答えるのが精一杯だった。だが、まだ負けを認めたくない気持ちが燻っていて、再び構えを取ると、意地でもう一度攻撃を仕掛けた。カイラさんの白い首筋に汗が光っていて、ついそこに触れたい衝動が湧くが、今はそんな場合じゃない。


「甘いぞ!」


 カイラさんは俺の攻撃を軽々と避けると、カウンターを仕掛けてくる。俺はそれをかわして距離を取ることに成功したと思った瞬間、彼女はすでに動いていた。拳が腹部にめり込み、俺はその場でうずくまる。


「不意打ちした君が悪い。蹴りはしなかったが動かせてもらったぞ?」


 カイラさんは自慢げに笑う。確かに魔法は使っていないが、体術だけで完敗ってことだよな? 俺は立ち上がると再び構えを取った。今度はこっちから仕掛ける。幸い俺の脚は速いほうだ! 全力で走り込んで蹴りを入れる準備をするが、やはりカイラさんには届かない。


「アクイラ。諦めが悪いのは良いことだ。骨が砕けるまで立ち上がるなら、次は砕く」


 カイラさんの言葉は脅しじゃない。彼女の目は本気だ。この構えを取れば、次は本当に骨を砕かれるだろう。


「君は愛弟子だ。ボロボロになり疲弊する姿を見続けるのが辛いよ。だから一撃だ。蹴る」


 カイラさんは消えた。いや、違う。俺の視界が空だ。大地がない? 遅れて衝撃がやってくる。ああ、今は空を見ていて、体が痛くてどうなってるんだ! ドン! と頭部に何かが当たる。そのまま視界が暗転した。

 気づいたときには、俺の頭はカイラさんの太ももに乗せられていた。柔らかくて温かい感触に包まれていて、思わず顔を寄せたくなるが、負けっぱなしでイライラが収まらない。起き上がるとカイラさんの顔がすぐ近くにあり、息がかかる距離だ。彼女も自分の大胆さに気づいたのか、頬を赤らめて少し後退る。俺は彼女の胸元が少し開いているのに気づき、軽く手を伸ばして触れてしまう。シフォンブラウス越しに柔らかい感触が伝わり、カイラさんが小さく声を漏らす。


「その……なんだ……思ったより強くなってなかったな」


 彼女は目を泳がせながら口ごもる。その照れた表情が可愛くて、もっと触れていたくなるが、何とか我慢した。


「もう一回勝負してください!」


 俺は挑むが、カイラさんは首を振る。そして彼女は空を見上げる。俺もつられて上を見ると、空には月が出ていた。いつの間にか夜になっていたらしい。そろそろ休もうかな……と考えていた時、突然体が重くなり、立っていられなくなって地面に倒れ込んだ。かなりダメージをため込んでいたみたいで、体が言うことを聞かない。


「今日はここまでにしよう」


 カイラさんはそう言うと、俺の目の前でしゃがみ込む。その瞬間、シフォンブラウスがずれて胸の谷間が覗き、俺は思わず手を伸ばすが、カイラさんが軽く払って笑う。俺はこれ以上迷惑をかけるわけにはいかないと思い直し、彼女の手を借りて立ち上がる。だが、彼女は構わず俺を抱き上げ、小屋まで連れ帰ってくれた。

 小屋に戻ると、ルーナに回復魔法をかけてもらい、三人で食事をすることになった。食事中、カイラさんが俺に話しかけてくる。


「アクイラ、君はまだ弱い。だが成長の速さは異常だ。その才能をもっと伸ばせば私を超えるかもしれないな」


 カイラさんはそう言って笑う。俺は素直に嬉しかったので感謝の言葉を口にすると、彼女は照れくさそうに目を逸らした。食事を終えると、ルーナは眠そうにあくびをして、俺の部屋のベッドに向かっていった。

 リビングには俺とカイラさんの二人きりだ。彼女の銀髪が月光に照らされて輝いていて、ついその髪に手を伸ばして撫でてしまう。カイラさんが少し驚いた顔をするが、嫌がる様子はない。


「ルーナ君はそれなりに動けるみたいだったぞ。 君が気絶している間に動きを見ていた。 成長が楽しみだ。 それはそれとして…………君たちは恋人か夫婦なのか?」

「あいつはパーティメンバーですよ…………俺に向いてるのは好意というより依存に近いな」


 俺の言葉を聞いてカイラさんは「そうか…………」と返事をして窓の外を見つめた。そして少し考える素振りを見せてから口を開いた。


「異変調査の件で君に話がある。 地の聖女の件について改めて最初から教えてくれないか。 それから君が気づいたことも」


 どうやら俺が何かに気づいたことまでこの人にはバレているらしい。さすがに敵わないなぁ。


「わかりました。まず魔獣の活性化の件はゴブリンの巣に潜る以前から感じていました。その後、ゴブリンの巣に入ったことで奥地で地の聖女ベラトリックス様が倒れていました」

「ここまでは問題ないな、調査のため、地の聖女がこの地域に傭兵を引き連れ訪れていた」

「はい、そして彼女を治療し、ゴブリンの巣の奥で傭兵三名が消息不明になったことを聞きました。ベラは一度教会本部に戻られたそうですが…………」


 俺が何か言いよどむと、カイラさんはその言葉の続きをしゃべりだした。


「行方不明なのだろう? 彼女がゴブリンの巣に潜る前から」

「ええ、そうなんです」


 正確には俺とルーナが目撃しているから、行方不明になったタイミングはテミスの街に向かう途中だろう。…………彼女が本物の地の聖女ベラトリックスならだ。


「ギルドで行方不明の話を聞いた時についてお話します。受付嬢のリズさんからはベラトリックス様と四名の傭兵の消息不明を伺っています。ですがベラは離れた傭兵は三名と言ってました」

「だが地の聖女の話はあくまであの奥で消息不明になった傭兵の数かもしれん」


 可能性はある。調査の途中でランクサファイアの傭兵が戦死あるいは重傷を負った後、あのゴブリンの巣に入ったなら、ベラの話も辻褄が合う。


「もう一つ気になることがあるな」

「何でしょうか?」

「もし君と一緒にいた地の聖女が本物なら、密命が話せないことまではいい。だが、同行していた傭兵の死亡届をギルドに出す必要がある。もちろん、テミスでするつもりだったかもしれないが…………死亡届を出すだけならルナリスの街のギルドに出すべきだ。たとえそれが密命であったとしても、死亡確認ができているならすぐに行うのがルールだ。それに、ゴブリンの巣の危険度が上がっている報告をする必要もある」


 なるほど。確かに俺もすべての手続きをテミスで済ませるのだろうと思い、気にしなかったが、ゴブリンの巣は距離的にもこの街の管轄と考えるべきだし、傭兵の死亡届はこの街ですべきだ。なぜあの時に気づかなかったんだ。


「それから出会った聖女様は一応特徴が一致していました。でも、同行した傭兵の一人初級傭兵(ランクサファイア)のエリスも特徴が一致していましたし、地の聖女を名乗る彼女の戦闘は直に見ていません」

「ほほう…………つまり君と会った人間は地の聖女ベラトリックスではない可能性もあるということだな」


 だが、仮に初級傭兵(ランクサファイア)だとして、ベラトリックス様を語る理由は何だろうか。それに…………信じられないと思っていた上級傭兵(ランクルビー)二人と中級傭兵(ランクエメラルド)一人の消息不明は確定したんだ。


「明日、私はその巣に行こう。君はどうする? ここで情報を待ってもいいし、私と一緒に行ってくれてもいいぞ」


 俺は少し考えたあと、すぐに結論を出した。


「俺も行きますよ。カイラさん腰抜けはすぐ破門するでしょ。喰らい付いてやります」


 俺の言葉にカイラさんは満足そうに笑う。それから俺たちは朝までこれからの動きについて話し合った。カイラさんの銀髪が月光に輝き、ついその髪を撫でながら話を聞く。


「明日の朝、私は巣に向かう準備をする。ギルドへの報告はもう少し後にしよう。まだ誰が嘘をついているかわからないからね。明日ギルドに立ち寄る際に確認したいことがある」


 真剣な話が終わると、カイラさんは大きく伸びをする。その瞬間、シフォンブラウスがずれて胸の膨らみが強調され、俺は軽く彼女の胸に手を伸ばして触れてしまう。カイラさんが小さく笑って「やめてくれ」と言うが、嫌がる様子はない。


「風呂にでも入ろう……君の家の風呂場はどこにあるんだ? せっかくだ、一緒に入ろう」


 そう言いながらカイラさんは俺の腕を掴むと、風呂へと引っ張り始めた。彼女は服を脱いで浴槽に浸かり、白い肌が湯気の中で輝く。俺も狭い浴槽に入り、カイラさんの肩に手を置いて軽く撫でる。


「カイラさん、こんな狭い風呂に呼ぶんだから良いんですよね?」

「……好きにしてくれ。 好きに…………していいんだぞ?」


 俺はその言葉を聞くと、カイラさんの胸を軽く揉む。柔らかい感触が手に伝わり、彼女が小さく息を漏らす。俺は彼女の腰に手を回し、浴槽の中で抱き寄せる。カイラさんが恥ずかしそうに体を少し震わせる姿に、少しドキッとする。

 カイラさんは気持ちよさそうに目を細め、体を俺に預けてくる。俺は彼女の太ももに手を這わせて優しく撫で、浴槽の中で二人で温まる。やがて我慢できなくなり、彼女を抱きしめてキスをする。湯舟に波が立ち、カイラさんが俺の首に腕を回してくる。


「ふふ、熱いな」


 そう言うと彼女は立ち上がり、俺の手を取って浴槽から出る。そして耳元で囁く。


「……ベッドで休もうか?」


 俺とカイラさんは風呂場から移動し、客間のベッドに腰を下ろす。俺は彼女の肩を抱き、軽くキスをすると、カイラさんが照れ笑いを浮かべる。そこへルーナが眠そうな顔で入ってきて、俺たちの間に割り込むように座る。


「あ……」


 ルーナの魔導士服が少し乱れ、白い肩が覗いている。俺は慌てて目を逸らす。


「あ……あのなルーナ、これは」


 俺が言い訳をしようとすると、カイラさんが笑いながら口を開いた。


「あはは、ごめんごめん。じゃあ三人で休もうか」


 カイラさんは俺の腕を軽く叩き、ルーナも照れながら笑う。ルーナは俺の隣に寄り添い、カイラさんが反対側に座る。三人でベッドに横になり、ルーナが俺の腕にしがみついてくる。俺はルーナの髪を撫で、カイラさんの肩に手を置いて軽く抱き寄せる。カイラさんが俺の首筋に軽くキスをしてくる中、ルーナが眠そうに目を閉じる。そのまま三人で温もりを感じ合いながら休息を取った。

 翌朝、俺の両隣で眠っていた二人はすでに起きていて、朝食の準備を始めていた。ルーナの魔導士服が少し乱れ、白い肩が覗いているのが可愛らしい。カイラさんのシフォンブラウスも少し緩んでいて、胸のラインが強調されている。俺はルーナの腰に手を回し、カイラさんの肩に軽く触れながら、二人が笑い合う姿を見ていた。

 ルーナもなんだかんだでカイラさんに心を開いてくれているようだ。そういえば二人とも銀髪で青い目だし、親近感があるのかもしれないな。朝食の準備をしながら、二人が楽しそうに話す姿に少し安心した。

見習い傭兵(ランクアメジスト)

傭兵としての第一歩を踏み出したばかりの新米。アメジストは手に入りやすい宝石であり、未熟ながらも可能性を秘めた者たちを表す。ギルドに登録したてで、実戦経験が乏しいのが特徴。


初級傭兵ランクサファイア

見習いを卒業し、傭兵として最低限の信頼を獲得した者たち。サファイアの青い輝きは、冷静さと一定の実力を象徴。単独での依頼をこなせるようになる。


中級傭兵ランクエメラルド

傭兵として一人前と認められ、実績と経験を積んだ者たち。エメラルドの緑は成長と安定を表し、ギルド内で信頼される存在となる。


上級傭兵ランクルビー

傭兵の精鋭とされる者たち。ルビーの赤は血と情熱を象徴し、数々の死線を潜り抜けた強者を表す。ギルドでも一目置かれる存在。


特級傭兵ランクダイヤモンド

傭兵の頂点に立つ伝説的な存在。ダイヤモンドの輝きは比類なき実力と名誉を表し、ギルド史に名を刻む者たち。

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