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炎焔の鎧  作者: なとな
第6章 絶望
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第6章5話 寂しがり屋で甘えん坊

「…………アクイラさんに祝福の証は…………渡さない」


 ルーナの言葉に、俺の声が思わず跳ね上がる。


「は? なんでだよ!?」


 七日もかけてカラスティアまで来たのは、四人の聖女から祝福の証を貰うためだ。地の聖女ベラトリックスから「大地と調和の指輪」、火の聖女ヴァルキリーから「火と勇気の首飾り」を既に獲得済み。ルーナの水の祝福と、残る風の聖女ゼフィラの祝福で、俺は聖王の資格を得られる。なのに、ルーナが渡さないってどういうことだ?


 当初、ベラトリックスとの誤解、聖王にならなきゃ処刑と脅された。だが、実際は俺とルーナの絆を察したベラが、聖王候補として俺を守る口実を作ってくれたらしい。そのおかげで、ルーナが水の聖女と発覚した時、処刑は見送られた。知らない間に命がけの話が進んでたわけだ。

 でも、ルーナが祝福の証を渡さなきゃ、俺は聖王候補失格。処刑される。冗談じゃない。


「ルーナ、落ち着け! よく考え直してくれ!」


 だが、ルーナはそっぽを向く。まるで俺の言葉が聞こえないかのように、純白のドレスの裾を握りしめ、銀髪が肩に揺れる。蒼い瞳がチラリと俺を捉えるが、すぐに逸らされる。


「どうしてだ? 何か理由があるんだろ?」


 俺はルーナの眼を覗き込む。彼女の華奢な肩がドレス越しに震え、穏やかな花の香りが漂う。ルーナは顔を逸らしたまま、ようやく口を開く。


「勘違いしないでください。今は渡せません。アクイラさん、とにかくカラスティアにいる間、私から離れないでください。それが祝福の証を渡す条件です。早速、私の部屋まで一緒に来てください。他の人はついてこなくて大丈夫です」


 ルーナの声は低く、独占欲が滲む。彼女の小さな手が俺の腕を掴み、グイッと引っ張る。教会内に宿泊用の部屋があるらしい。水の聖女の屋敷は街の外れにあるが、今はここで暮らしてるってことか。


「ルーナ、ちょっと待てって!」


 だが、ルーナの力は意外と強く、俺は抵抗しきれず彼女に連れられる。石造りの廊下を進むルーナのドレスが揺れ、銀髪が陽光にキラキラと輝く。

 ルーナの部屋はシンプルで、白い壁と木製の家具が清潔感を漂わせる。ベッドの白いシーツが陽光に輝き、窓から差し込む光がルーナの銀髪を神聖に照らす。彼女は扉を閉めると、俺をベッドに座らせ、そのまま膝の上にちょこんと座る。ドレスのスカートが広がり、華奢な体が俺の胸に寄りかかる。穏やかな花の香りが部屋を満たす。


「ん…………抱き締めて」


 ルーナの声は甘く、まるで昔の依存していた頃の彼女に戻ったようだ。ドラコ戦で俺を救った強いルーナと、目の前の甘えん坊なルーナが混在してる。


「なんか戻った? いや、素はこっちか?」


 俺はルーナの背中に腕を回し、優しく抱き締める。彼女の華奢な体が俺の腕にすっぽり収まり、ドレスの布越しに温もりが伝わる。銀髪が俺の頬をくすぐり、蒼い瞳が潤んで俺を見つめる。


「ん……撫でて? 頭から」

「頭か……」


 俺の手がルーナの銀髪に触れる。サラサラの髪は絹のようで、指が滑るたびに花の香りが漂う。彼女の頭を優しく撫でると、ルーナが「んっ」と小さく声を漏らす。まるで子猫が甘えるような仕草だ。


「次は……肩」


 俺の手がルーナの肩に移動し、ドレスの布越しに華奢な骨をなぞる。彼女の指定に従い、肩を丁寧に撫でる。ルーナの吐息が穏やかになり、蒼い瞳が俺をじっと見つめる。


「次は……背中」


 ルーナの声が柔らかく響く。俺の手がドレスの背中に滑り、華奢な背骨を優しく撫でる。彼女が俺に寄りかかり、温もりがドレス越しに伝わる。ルーナの体がリラックスし、穏やかな笑みが浮かぶ。


「次は? どうするんだ?」


 俺はルーナの反応を伺う。このままじゃ、彼女の甘えん坊が止まらなそうだ。ルーナは口角を上げ、悪戯っぽく微笑む。


「いえ、続けてください。アクイラさんが我慢できなくなるまで」


 可愛い奴だな。俺の手がルーナの背中を撫で続け、銀髪を優しく梳く。彼女の体がビクッと震え、初めて小さな笑い声が漏れる。


「くすっ! くすぐったいよ! 次! 次は……好きなように撫でて!」


 ルーナの声が弾む。俺は彼女の頭を再び撫で、肩や背中に手を滑らせる。ルーナの笑顔が輝き、蒼い瞳が俺を捕らえる。


「満足したか?」


 俺はルーナの手を握り、彼女の反応を伺う。彼女はしばらく黙り、俺の手をそっと握り返す。


「…………本当はもう少し。でも、今はいい。横になろ? いっぱい抱き締めて?」


 ルーナの声が甘く、俺をベッドに引っ張る。彼女が隣に寝そべり、俺の腕に体を預ける。ドレスの布越しに温もりが伝わり、ルーナの花の香りが俺を包む。俺は彼女の肩に腕を回し、優しく抱き締める。銀髪がシーツに広がり、ルーナの体が俺に寄り添う。


「なあ、どうしてだ? なんで渡せないんだ?」


 俺が囁くと、ルーナは小さな声で答える。


「アクイラさんは……祝福の証を貰ったら行っちゃうから。あれがここにあれば、アクイラさんずっといるから…………」


 ルーナの声が震え、顔を背ける。俺は彼女の頬に手を添え、優しく撫でる。耳元で囁く。


「分かったよ。しばらくはここにいるから」


 ルーナが俺に抱き着く。俺は彼女の華奢な体を強く抱き締め、銀髪を撫でる。彼女の吐息が穏やかになり、静かな安心感が部屋に漂う。ルーナの笑顔が輝き、俺の胸を温かくする。

 夕方、俺とルーナはカイラの声で目を覚ます。


「起きろ、アクイラ! ルーナ! 夕食の時間だ!」

「カイラさん?」


 俺とルーナは慌てて起き上がり、ドレスを整える。ルーナの頬が少し赤く、蒼い瞳が嬉しそうに俺をチラリと見る。俺は彼女の手を握り、食堂に向かう。石造りの廊下を進むルーナのドレスが揺れ、銀髪が陽光に輝く。

 食堂にはセレナ、エリス、クリスタラ、マッシブラが集まり、食事を始めている。木製のテーブルにパンが並び、肉の香りが漂う。ルーナが俺の隣に椅子を密着させ、グイッと引っ張る。


「アクイラさんは私の隣で!」

「いや、近すぎだろ」


 でも、昔もこんな距離で食べてたな。ルーナの依存心は変わらない。彼女の純白のドレスが穏やかに揺れ、花の香りが俺を包む。セレナが無邪気に話しかけてくる。


「それで? アクイラとルーナの再会はどうだった?」


 セレナのウェーブヘアが肩に落ち、ベージュのカーディガンが彼女の笑顔を引き立てる。俺はセレナの肩に軽く手を置き、優しく笑う。エリスのポニーテールが揺れ、クリーム色のセーターが彼女の明るさを際立たせる。俺はエリスの背中に手を置き、軽く叩く。


「まあ、相変わらずルーナは甘えん坊だったな」

「む…………アクイラさんも私に夢中だった」


 ルーナが頬を膨らませ、抗議する。彼女の仕草が可愛くて、俺はつい銀髪を撫でる。ルーナの笑顔が輝き、食堂に温かい空気が広がる。


「それでは明日の予定ですが、ルーナ様は勉学で一日拘束となります」


 クリスタラの言葉に、ルーナが叫ぶ。


「嫌!!!」

「ルーナ様…………」


 マッシブラも困惑気味だ。ルーナは勉強が嫌いなのだろうか。彼女の蒼い瞳が潤み、俺の手をギュッと握る。


「アクイラさんと居る! 今しか会えないなら、ずっと一緒!!」


 クリスタラとマッシブラがルーナのわがままに顔を見合わせる。カイラが静かに口を開く。


「ふむ、ルーナの気持ちも分かる。クリスタラ、提案がある」


 カイラの銀髪が揺れ、淡緑のブラウスが彼女の落ち着いた雰囲気を引き立てる。俺はカイラの肩に手を置き、軽く笑う。


「というわけで、明日、ルーナ様の聖女の修行にアクイラ様も付き合っていただけますか?」


 クリスタラの提案に、ルーナの顔がパッと輝く。俺は彼女の銀髪を撫で、優しく頷く。


「いいぜ、ルーナ。ずっと一緒だ」


 ルーナが俺に抱き着く。花の香りが穏やかに漂い、俺の胸が温まる。カラスティアでの日々は、きっとルーナとの絆を深めてくれる。

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