第6章3話 魅了
カラスティアに向かう街道は、広大な草原を抜け、遠くの丘陵が陽光に輝く。馬車の車輪が土を軋ませ、幌の隙間から差し込む昼の光が車内を照らす。カラスティアに向かう道中で、戦力補強と道のりの都合を考えて、テミスに寄ることを提案した。
本当はアウロラやジェンマがいるから、テミスに寄る必要はないんだ。だが、彼女たちの存在を隠してる以上、そうするしかない。
移動中、また魔獣の群れに襲われちまった。しかも、どれも上級傭兵を返り討ちにしてきた危険な種ばかりだ。俺の炎焔の鎧が紅い炎を巻き上げ、カイラさんの蹴りが魔獣を粉々にぶち砕く。サクッと片付けてるが、油断はできない。草原に焦げた匂いが漂い、魔獣の残骸が陽光に黒く光る。
「皆様お強いのですね」
リーナさんが微笑む。その笑顔は貴族らしく上品だが、どことなく不安げだ。彼女の紅い髪がシニヨンにまとまり、黄金の瞳が陽光にキラリと光る。白銀のショルダーレスクロップドトップが豊満な胸を強調し、スリットスカートから覗くスラリとした太ももがゾクッとくる。魔法の装飾品がキラキラと輝き、甘い花の香りが漂う。まあ、無理もねえか、魔獣の襲撃がこんな頻度じゃな。
「そりゃどうも……だが…………」
俺は周囲を見回す。魔獣の群れを撃退した直後で、まだ他の魔獣がうろついてる可能性がある。リーナさんの胸の膨らみがクロップドトップの布を押し上げ、細い脚がスカートのスリットでチラリと覗く。警戒するに越したことはねえ。
「この程度の襲撃で音を上げるほどやわな鍛え方してませんよ」
俺が言うと、リーナさんは一瞬驚いた顔をするが、すぐに微笑む。彼女の白い肌が陽光に輝き、装飾品の光が胸元で揺れる。
「とても…………頼もしい方なのですね」
リーナさんがキラキラした瞳で俺を見つめる。その黄金の瞳に吸い込まれそうになり、頭がボーッと熱くなる。ナンだカナンだカナンだカナンダか……胸の曲線がクロップドトップでくっきり浮かび、細い脚がスカートのスリットで誘うように揺れる。
「アクイラ?」
セレナが心配そうに声をかけてくる。彼女の茶色のウェーブヘアが肩に落ち、ベージュのニットカーディガンが柔らかい胸を軽く押し上げる。薄桃色のコットンブラウスが胸元で揺れ、深緑の瞳が俺を覗き込む。エリスとカイラさんも俺を見てくる。
「……うん? ああ、大丈夫だ」
俺は平静を装って答えるが、頭がまだモヤモヤしてる。リーナさんの胸と細い脚が脳裏に焼き付いて離れねえ。再び周囲を見回す。魔獣の気配はなさそうだ……だが、さっきはどうして意識が飛びかけたんだ? 確か……リーナさんを……いや、リーナサン ヲ ミテ イテ オカシクナルワケナイジャナイカ。
テミスに向かう最中も何度か魔獣を討伐したが、俺はずっとリーナサン ノ コト バカリ ヲ カンガエテ イタ。彼女が歩く姿、紅い髪が陽光に揺れる姿、クロップドトップで強調された胸の膨らみ、スリットスカートから覗く細い脚の滑らかな肌……リーナサン ガ アルイタ ミチ ヲ ツヅイテ アルク。リーナサン ヲ ミテ イル。
「アクイラ、本当に大丈夫か?」
カイラさんが俺の顔を覗き込む。彼女の蒼い瞳が鋭く光り、ブラウスの胸元が豊満な曲線を浮かび上がらせる。リーナサン ノ コト バカリ カンガエテイル オレ ヲ 見透かすような視線だ。
「アクイラさん、顔色悪いよ? 疲れちゃった?」
エリスが心配そうに言う。彼女の新緑色の瞳が潤み、セーターの裾が細い腰をチラリと覗かせる。エリス? エリス? ダレ ダ?
「暁の陽よ、その光で全てを照らし、正しき姿に戻せ。暁光復元」
赤い光がペンダントから飛び出し、アウロラが現れる。赤いロングスカートがスラリとした脚を隠し、赤い革ブーツが草原に映える。アウロラの詠唱した魔法の陽が俺を包み込むと、頭がスーッと晴れ、靄が消える。やっとおかしかった自分に気づいた。
「しっかりなさいアクイラ!!!」
「あ、ああ……大丈夫だ。すまない」
アウロラに助けられたらしい。さっきまでリーナさんのことしか考えられなかったあれは何だったんだ? 彼女の胸の膨らみ、細い脚の肌、甘い香りが頭を支配してた。
「アクイラさん、そちらの方は?」
リーナさんとリオニアさんが突如現れたアウロラに心底驚いてる。リーナさんの黄金の瞳がキラキラと輝き、クロップドトップの布が胸の曲線をくっきり浮かばせる。リオニアさんのメイドドレスのエプロンが風に揺れ、ガーターストッキングが太ももに食い込む。さて、なんて説明するか。
「ああ、こいつはアウロラだ。隠しててすまないが、妖精族で普段は消えてるんだ」
素直に答えることにした。万が一、リーナさんやリオニアさんに妖精族の知識があれば、意図的に騙してたと誤解されかねないからだ。
「まあ! 妖精族の方とご一緒されているのですね」
リーナさんがアウロラをキラキラした目で見つめる。彼女の紅い髪が陽光に揺れ、スカートのスリットから細い脚がチラリと覗く。妖精族に興味津々らしい。
「私はアウロラ。よろしくね」
「私はリーナ・アルゲンテアと申します」
リーナさんがふふふと笑い、嬉しそうにする。だが、リーナさんもリオニアさんもさっきの俺の異常に触れない。彼女たちの微笑みが、どこか不自然に感じる。リオニアさんの緑色の瞳が一瞬俺を捉え、メイドドレスの胸元が淡紫色のブラウスを覗かせる。あれは間違いなく魅了系の魔法か何かだ。リーナさんに何か力があるんだろう。
俺はアウロラに祝福の証に戻ってもらい、馬車移動を再開する。テミスに寄らず、最短ルートでカラスティアに向かうことを再提案した。
「それは何故ですか?」
リオニアさんが困惑する。彼女の茶色の髪が風に揺れ、ガーターストッキングの縁が太ももに食い込む。そりゃそうだ。テミス行きを提案したのは俺たちだ。だが、アウロラの存在がバレた以上、戦力不足は言い訳できない。
「隠してたが、アウロラも戦えてな……戦力はむしろ過多だ。だが、アンタらを信用していいか迷って、彼女の存在を隠してたんだ」
「そう言う事でしたか。承知しました。カラスティアまで最短ルートで向かいましょう」
馬車が再び進む。あの魅了は俺だけが受けた気がする。発動条件は何かあるのか? それとも最初から俺だけを狙ってたのか? 詳細はわからねえが、リーナさんに何か力があり、俺はその術中にはまりかけた。アウロラがいなけりゃ、もっとヤバいことになってたかもしれない。彼女の金色の髪と赤い瞳が脳裏に浮かぶ。あの華奢な体に触れて、柔らかい肌を確かめたい衝動が湧く。
「アウロラ、ありがとう」
俺は改めてお礼を言う。彼女が赤い瞳を向けてニコリと微笑む。
「当たり前じゃない。私は貴方の妖精よ」
アウロラがにっこり笑う。夜明けの妖精の力がこんな強力だとは知らなかった。アカンサが進んで友好を深める妖精なんだから、当然か。
「ふふ、お礼は今晩たっぷり貰うから」
アウロラが艶っぽく囁き、祝福の証に戻る。今晩か…………アウロラから誘われるのは珍しいな。それよりも、手の内を一つ明かしちまったが、ジェンマはまだ隠せてる。
馬車に乗り込み、さっきの出来事をみんなに話す。セレナの柔らかい胸がカーディガンで揺れ、エリスの華奢な腰がセーターで強調される。カイラさんの豊満な胸がブラウスの布を押し上げる。
「なるほど……それであのように呆けていたのか」
カイラさんが考え込む。彼女の銀髪が車内の光に輝き、蒼い瞳が鋭く俺を捉える。セレナは怒った顔で、エリスは悲しそうに俺を見つめる。セレナの深緑の瞳が潤み、カーディガンの胸元が薄桃色のブラウスを覗かせる。カイラさんが口を開く。
「おそらくだが……男性にしか効かないのではないか? もしくは無意識に男性を魅了する……呪いか」
「呪いか……」
リーナさんが俺たちと顔を合わせるのをためらってたことを思い出す。催眠をかけるつもりなら、もっと積極的に顔を出すはずだ。不本意に魅了してる可能性があるな。だが、あれだけ躊躇ってたのに、俺に自ら近づいてきた。途中で考えが変わったか……魅了してもいいか見定めてた可能性もある。
今でもリーナさんの胸の膨らみ、細い脚の肌、甘い香りが頭をよぎる。彼女の黄金の瞳に見つめられながら、柔らかい肌に触れたい衝動が湧く。
「何にせよ、男性限定でカイラさんを魅了できないなら、脅威にはなりませんね。もし俺が魅了されたら遠慮なく蹴ってください」
「任せたまえ」
カイラさんの力強い返事。……正直、遠慮してほしい。彼女の蹴りじゃ骨が何本あっても足りねえぜ。リーナさんの微笑みとリオニアさんの曖昧な態度が頭に残る。彼女たちが悪意を持ってるのか、まだわからねえ。だが、魅了の力を知ってるなら、隠してたんだろう。俺たちと同じく切り札を伏せてたのか、それとも何か企んでるのか……カラスティアに着くまで、目を離せねえな。
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