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炎焔の鎧  作者: なとな
第5章 妖精の島
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第5章14話 帰還

 火の聖女の祝福を胸に、島を後にする時が来た。神殿の白い石壁が朝陽に温かく輝き、庭の花々がほのかな甘い香りを漂わせる。波の音が遠くで穏やかに響き、潮風が頬をそっと撫でる。右手中指の地の祝福の証と首に輝く火の祝福の証が、試練を乗り越えた誇りとして軽やかに存在感を放つ。ルナリスへの帰還が近づき、テラやエリス、セレナ、リーシャ、カイラさんとの再会への期待が胸を温める。アスカリ以来の長い旅を終え、ようやく家に帰れる安堵感が体を軽くする。ジェンマを呼び出し、次の旅への一歩を踏み出す準備を整える。


「ジェンマ、出てきてくれ」

「はぁい!」


 黄色の光が弾け、ジェンマが現れる。彼女は赤みがかったブラウンのコットンブラウスを着て、胸元に小さな金の刺繍が朝陽にきらめく。薄紫のロングスカートが膝下まで流れ、風に軽く揺れる。茶色の革ブーツが細い足首を締め、紅い髪が朝風にふわっと広がる。彼女の琥珀色の瞳が俺を捉え、弾けるような笑顔が旅の疲れを癒す。


「お呼びですかぁ?」


 ジェンマの声は明るく、まるで朝の光そのものだ。彼女の笑顔に、旅の達成感が胸を満たす。


「ああ、俺は島を出てルナリスに帰るけど……お前はどうする?」


 彼女がぱっと花のように綻び、俺の腕に抱きついてくる。柔らかな体温が伝わり、彼女の髪が頬をくすぐる。スカートが軽く揺れ、膝が朝陽に光る。


「アクイラの行くところならどこでもついていきますぅ!」


 その言葉に笑みがこぼれる。彼女の無垢な信頼が、帰還への喜びをさらに大きくする。


「……そうか」


 苦笑しながら答える。本人がそう望むなら、止める理由もないだろう。ジェンマは新たな仲間として俺と共に行くことになった。地の祝福の証と火の祝福の証を手に、ふと思いつく。火の祝福の証があるなら、アウロラも連れていきたい。アカンサの元へ向かう。

 神殿の寝室は赤い絨毯が足に柔らかく、窓から差し込む朝陽が壁の炎模様を温かく照らす。木製の家具が静かに佇み、微かな花の香りが漂う。アカンサがそこにいた。薄緑のコットンブラウスが朝の涼しさに軽く揺れ、白いロングスカートが膝下まで流れている。金緑の髪が朝陽に輝き、彼女が振り返る瞬間、ブラウスが風に揺れて肩が覗く。彼女の瞳が俺を捉え、穏やかな笑みが旅の疲れを和らげる。


「あら、どうされました?」


 アカンサの声は柔らかく、まるで俺の帰還を祝福するようだ。


「実はな、ジェンマは俺と一緒に島を出てくれることになったんだけど、俺って火の祝福の証も持ってるだろ? せっかくだからアウロラも連れていきたいと思ってな。彼女はどこにいるんだ?」


 アカンサが一瞬考え、微笑みながら答える。


「アウロラはお庭にいると思いますわ」

「分かった。ありがとな」


 寝室を出て、庭へ向かう。神殿の庭は色とりどりの花々が咲き、朝露が草を濡らしてキラキラ光る。蝶が花の間を舞い、微かな蜜の香りが漂う。そこにアウロラがいた。クリーム色のリネンブラウスが朝の光に透け、赤いロングスカートが膝下まで流れている。金のペンダントが朝陽にきらめき、花壇の前でしゃがむ彼女のスカートが軽く揺れて膝が覗く。彼女が花を手に持つ瞬間、ブラウスが肩からずれて白い肩が光る。俺に気づくと立ち上がり、柔らかな微笑みを向ける。


「……アクイラ?」


 彼女の声は鈴のように澄み、帰還への喜びをさらに温かくする。


「ああ、ちょっといいか?」


 彼女がこくりと頷き、近くの木製ベンチに腰かける。ベンチの表面は朝露で湿り、冷たい感触が尻に伝わる。


「それで……どうされましたの?」


 アウロラの瞳が俺を見つめ、旅の終わりを祝福するようだ。


「俺たち、この島を出てルナリスに帰るんだけど、アウロラは残るのか? ジェンマはついてくるってよ」


 彼女が少し考え込む。ブラウスが風に揺れ、胸元が軽く開く。しばらくして、恥ずかしそうに答える。


「……私も一緒に行ってもよろしいのですか?」

「もちろん」


 即答すると、彼女が花のように微笑む。その笑顔に、仲間との絆が胸を温める。やり取りの最中、後ろから弾ける声が響く。


「あ! アクイラだぁ! そんなとこで何してるのぉ~?」


 振り返るとジェンマだ。彼女が駆け寄り、俺に抱きつく。ブラウスの裾が軽く揺れ、膝が朝陽に光る。


「ああ、アウロラも一緒に行こうって誘ってたんだよ」

「そぉなんだぁ~。じゃあみんな一緒だね!」


 ジェンマの笑顔に、旅の達成感がさらに輝く。彼女の頭を撫で、アウロラに向き直る。


「というわけだ。一緒に来てくれるか?」

「はい!」


 二人の肩を軽く叩く。彼女たちの温もりが、ルナリスへの帰還をより楽しみなものにする。ジェンマとアウロラが祝福の証の宝石に光となって吸い込まれ、眠りにつく。

 アカンサとヴァルキリーに呼ばれ、神殿の奥へ。石の回廊はひんやりと冷たく、炎の装飾が壁に温かく揺らめく。ヴァルキリーは白いシルクのブラウスに黒のロングスカート、金のネックレスが朝陽に輝く。アカンサは薄緑のコットンブラウスに白のロングスカート、髪飾りが軽く揺れる。


「島から出るのになんでこの先に?」


 俺の声が回廊に響く。アカンサが柔らかく答える。


「いいのよ。出口は神殿の奥にあるのだから」

「いや、島から出るなら普通海岸だろ?」


 ヴァルキリーの声が少し冷たく響く。


「いいから黙ってついてこい」


 その冷たさに苦笑する。試練を共に乗り越えた彼女の素っ気なさが、どこか懐かしい。金色の炎が燃え盛る盃にたどり着く。炎の熱が肌を温め、帰還への期待が胸を満たす。


「着いたぞ」


 ヴァルキリーが言う。彼女のブラウスが朝の光に軽く透け、肩が覗く。


「あの火は、火の聖女、つまり私と一緒なら同じ盃のある場所に転移が可能だ。中央教会とルナリスの街の私の屋敷に設置されてる」


 火から火へ飛べる能力に驚きつつ、ルナリスへの帰路が近づく実感が湧く。


「さぁ、行こうか」


 ヴァルキリーが俺の手を掴む。彼女の掌が温かく、光に包まれる。気づくと別の部屋にいた。赤い絨毯が足に柔らかく、壁に絵画や壺が並ぶ。奥に大きな扉があり、ルナリスの土と花の匂いが鼻腔を満たす。懐かしさが胸を温める。


「ここは?」

「ルナリスの方の屋敷だ……君の仲間もとっくにルナリスに帰ってるんじゃないか? おそらくだがな」


 ヴァルキリーの声に安堵が混じる。アカンサが微笑みながら続ける。


「あたくしは出発前にリーシャさんを見かけましたので、彼女にアクイラは火の聖女様の試練で借りますので、返却はルナリスになりますって伝えてあります」


 みんながルナリスで待ってる可能性が高い。テミスに残ってる場合もあるが、まずは家に帰るのが先だ。


「水の聖女……ルーナはまだテミスにいますか?」


 彼女の笑顔を思い出し、胸が温まる。ヴァルキリーが答える。


「彼女の配属先はカラスティアの街だ」

「カラスティア!? ルナリスからだと……どう行けばいいんだ?」


 地図を思い浮かべるが、ルナリスからカラスティアの道は曖昧だ。アカンサが穏やかに教えてくれる。


「カラスティアはここから南西の街よ。ルナリスからだと街道を通って約七日といったところかしら?」


 七日なら遠くないな。ルーナに会える日が近いと思うと、胸が弾む。


「では早速向かうとしよう」


 ヴァルキリーが扉を開き、部屋を出る。ルナリスの街が広がる。赤い石畳が朝陽に輝き、市場のざわめきと花の香りが漂う。アスカリ以来、一か月半ぶりの帰還だ。仲間との再会が楽しみで、足取りが軽くなる。アカンサとヴァルキリーに礼を言う。


「二人ともありがとな?」


 アカンサが柔らかく微笑む。


「いいのよ。これも私の仕事だから」


 ヴァルキリーは少し仏頂面だ。


「……ふん、さっさと帰れ」


 その素っ気なさに笑みがこぼれる。試練を共にした絆が、彼女の言葉の裏に感じられる。ルナリスの北部、森の自宅へ向かう。門から徒歩十分、木々のざわめきと土の匂いが懐かしい。家に着くと、暖かな人の気配が漂う。木の扉を開けると、リビングの柔らかな光が俺を迎える。木の床が足に優しく、窓から差し込む朝陽が壁を温かく照らす。


「おかえり、アクイラ」


 テラの落ち着いた声が響く。彼女は白いシャツに深紅のベスト、茶色の膝丈レザーパンツを纏う。黒い髪が肩に落ち、朝陽に輝く。彼女の静かな瞳が俺を捉え、帰還の喜びを温かくする。エリスが弾けるように飛びついてくる。


「おかえりなさい、アクイラさん! 会いたかったです!」


 エリスは白いシャツにベージュのベスト、ダークグリーンの花柄スカートを纏う。スカートが膝まで揺れ、彼女が抱きつく瞬間、ブラウスが軽くずれて肩が覗く。俺は彼女を軽く抱きしめ、頭を撫でる。


「えへへ、アクイラさんに抱きしめられるの久しぶりです」


 彼女の無垢な笑顔が胸を温める。


「エリスは今日も可愛いな」


 彼女が頬を赤らめ、俺の胸に顔を埋める。


「もう……恥ずかしいですよ……」


 テラが呆れ顔で声をかける。


「……アクイラ。とりあえず座ったら? 疲れたでしょ?」

「ああ、そうだな」


 リビングの木製椅子に腰かけ、旅の疲れがじんわり体に広がる。テラが台所へ消え、紅茶を入れる。しばらくしてカップを置き、香ばしい香りが漂う。湯気が立ち上り、部屋を温かく包む。


「ありがとな、テラ」


 彼女が静かに微笑む。


「どういたしまして……それで? アクイラの方はどうだった?」


 旅の思い出が胸を温める。試練の厳しさもあったが、仲間との絆が俺を支えた。


「ん……まあ色々あったけど、うまくいったよ」


 火の聖女の祝福の証、首飾りを見せる。赤い宝石が炎のように輝き、朝陽に映える。


「これが火の聖女の祝福の証なんですね! 綺麗です」


 エリスが目を輝かせる。


「かっこいい」


 テラがじっと見つめる。彼女たちの声に、試練を乗り越えた誇りが胸を満たす。


「セレナとリーシャは?」


 仲間たちへの思いが胸を温める。


「今、買い出しに行ってるよ。もうそろそろ帰ってくると思うけど」


 テラの言葉に安堵が広がる。玄関の扉が開く音が響く。


「ただいま帰りました」

「帰ったぞ」


 セレナとリーシャの声。リビングに入ると、俺を見つけて駆け寄る。セレナは白いブラウスにグリーンのロングスカート、髪が風に軽く揺れる。リーシャはライトグリーンのブラウスにクリーム色のフレアスカート、彼女が走る瞬間、スカートが軽く揺れて膝が覗く。


「アクイラ! 会いたかった!」

「戻ったか、アクイラ!」


 彼女たちの笑顔が帰還の喜びを大きくする。


「ただいま、帰ってきたぞ、みんな」

「アクイラ……私、ずっと待ってたんだぞ」


 リーシャが俺の手を取り、熱っぽく見つめる。彼女の髪を撫で、温かな絆が胸を満たす。


「俺もリーシャに会いたかったよ」

「ありがとう」


 彼女が頬を赤らめる。みんなに新しい仲間を紹介する。


「みんなに紹介したい新しい仲間がいるんだ」


 彼女たちの期待の視線が俺を包む。


「え?」「どこ?」「どこにも見当たらんぞ」「アクイラさん?」


 みんなが周囲を探す。ジェンマとアウロラは祝福の証の中で眠ってる。


「ジェンマ! アウロラ! 来てくれ」


 地の祝福の証が緑色に、火の祝福の証が赤色に光り、人型に変わる。二人が現れる。ジェンマのブラウスが風に揺れ、肩が覗く。アウロラのスカートが軽く揺れ、膝が光る。


「ジェンマだよぉ! 妖精族で普段は地の祝福の証で眠ってますぅ!」

「私はアウロラ! 夜明けの妖精よ! よろしくね?」


 彼女たちの弾ける声がリビングを満たす。セレナが目を丸くする。


「妖精族!? 初めて見たわ!」

「初めてだ」


 テラも驚く。ジェンマがリーシャに駆け寄り、腕を掴む。


「私はジェンマ! よろしくね? お名前は?」

「え……あ……リーシャだ」


 リーシャが戸惑いながら笑顔になる。順々に挨拶を済ませ、二人は光の球に戻り、証で眠る。彼女たちの笑顔がリビングを温かくする。


「まさか祝福の証にそんな力があったとはな……ただ賑やかになったな」


 リーシャの言葉に、みんながジェンマとアウロラを歓迎する。ドアが勢いよく開き、カイラさんが現れる。ライトブルーのシルクブラウスにシルバーグレーのロングスカート、彼女が走る瞬間、ブラウスが軽くずれて肩が覗く。


「おーい! 帰ったぞ!!」

「カイラさん! お久しぶりです! 二か月ぶりくらいですかね?」

「そうだな。君がなかなか帰らないものだから恋しかったぞ?」


 彼女に軽く抱きしめられ、温かな絆が胸を満たす。ジェンマとアウロラを紹介し、みんなで食事を終える。木のテーブルに並ぶ料理の香りがリビングを温かく包む。ルナリスに帰ってきた喜びが、仲間たちの笑顔と共に胸を満たす。残る祝福の証――水の聖女と風の聖女――を手に、次の旅への決意が静かに芽生える。

5章終わりです。

現在のアクイラは中級傭兵兼聖王候補。祝福の証は地と火を所持している状態となります。

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