第5章4話 聖女の儀式
聖女の儀式当日がやってきた。朝から街はざわめいてて、大聖堂に向かう道は人で溢れてる。聖王国の旗が風に揺れ、鐘の音が響き渡る中、俺たちはベラの屋敷を出て大聖堂へ向かった。屋敷の門を出ると、エリスが少し遅れて俺に追いついてきた。クリーム色のドレスに淡いピンクのリボンタイが首元に結ばれ、貴族令嬢らしい可憐さが際立ってる。歩くたびにスカートがふわりと揺れて、綺麗な足を露出している。もう少しで……………………おっ白のレースか。
「おはようございます、アクイラさん! 今日は大事な日ですね」
エリスが笑顔で言う。俺は彼女の隣に並び、腰に手を回した。
「おはよう、エリス。確かに大事な日だ。こんな日はお前で気分を盛り上げたいな」
「え? あ…………私も最高な気分です」
エリスが顔を赤らめている。俺たちは屋敷を出て、他のみんなと合流した。セレナは薄緑色のシルクドレスで、胸元が軽く開いてて優雅さが漂う。こいつ、最近優雅な服装を選びがちだが…………こういう服にでも憧れていたのか? テラは赤いサテンドレスで、タイトなデザインが大胆だ。リーシャは純白のブラウスに深いネイビーブルーのスカートで、シンプルながら凛々しい。
大聖堂の入り口に着くと、アカンサが俺に気付いて胸元の高さで手を振ってきた。
「あらあら? お早いお着きですこと」
式典のために正装したアカンサを見つけた。深いエメラルドグリーンのベルベットドレスが彼女の高貴さを際立たせてる。胸元と袖口には金の刺繍が施され、金色の瞳と調和してる。襟元には淡い金のレースがあしらわれ、優雅さが引き立つ。スカートは裾に繊細な金の刺繍で花模様が描かれ、動きやすい広がりのあるデザインだ。首にはゴールドチェーンに緑のエメラルドが輝くペンダントが下がってる。足元は金のサンダルで、つま先が覗いてるのが色っぽい。
「似合ってるな、お嬢さん」
「貴方も悪くないわ。ま、地の聖女のお屋敷で着替えさせてもらったなら、当然でしょうけど」
「皆様とてもお似合いですわ」
アカンサの言葉に、俺は苦笑いした。エリスが少し恥ずかしそうにスカートを押さえてるのが目に入る。
「ありがとー!」
「それではあたくしは入場行進に参加しなければいけませんので、街の入り口に向かいますわね。アクイラたちの席はこのチケットを見せれば神官やシスターが案内してくださるわ」
「ああ、分かった」
アカンサは聖女の付き人として入場行進に参加する。彼女が馬車に乗り込む姿を見送った後、俺たちは大聖堂の中へ入った。
「ようこそおいでくださいました」
入り口でシスターが出迎えてくれた。白いローブに青い刺繍が入った清楚な装いで、スカートが膝下まで伸びてる。彼女が礼をする瞬間、ローブの裾がめくれ、純白の下着が一瞬覗いた。
「きゃ!?」
「……………………やっぱシスターは白だよな」
俺がそう感想を言うと、シスターお姉さんは顔を赤らめスカートを抑える。
「お…………御見苦しいものをお見せしてしまい申し訳ございません。本日のご案内をさせていただく者です。どうぞよろしくお願いいたします」
シスターが頭を下げる。チケットを渡すと彼女は俺達が貴賓席だと気付き改めて深々と頭を下げた。
「では皆様、こちらへ」
彼女に導かれ、大聖堂の中へ進んだ。内部は広大で、天井は高く、アーチ型の窓から光が差し込んでる。長い通路の左右には長椅子が並び、聖職者や貴族らしき連中がすでに座ってる。壁には聖王国の歴史を刻んだ彫刻が飾られ、荘厳な雰囲気が漂う。
「こちらになります」
シスターに案内され、巨大な扉の前に着いた。この先が儀式の場らしい。
「では、私はこれで失礼しますね」
彼女が去り、俺たちは少し不安を感じつつも、扉を開けた。内部の神官にチケットを見せると、聖壇が見やすい席に案内された。大聖堂の中心に立つ聖壇は、白い大理石で作られ、金の装飾が施されてる。席に座ると、参加者のざわめきが耳に届いた。
「ようこそおいでくださいました。本日はご足労いただき、誠にありがとうございます」
神父が全体に向けて挨拶を始めた。白いローブに金の帯を締めた姿は立派だが、入場行進に参加しないってことは、そんなに位は高くねえんだろう。
「それでは皆様、大扉にご注目ください。今から聖女様による儀式を執り行います」
神父の言葉に、参加者が一斉に前を見た。大扉がゆっくり開かれ、入場行進が始まった。
「聖女様の入場です」
その一言と共に、先頭には護衛の騎士たちが現れた。銀の鎧に青いマントを羽織り、剣を手に持つ姿が凛々しい。その後ろに、当代の水の聖女となったルーナが姿を現した。銀髪が月光のように輝き、深い湖のような蒼い瞳が幻想的だ。見てるだけで引き込まれちまう。
ルーナは優雅な白いシルクローブを纏ってる。青い刺繍が水の流れや波を象徴し、清楚な美しさが際立つ。首元には淡い青のリボンが結ばれ、華奢な印象を与える。袖口は広がり、水滴の模様が細かく刺繍されてて、水の聖女らしさが強調されてる。ローブと一体化した長いフレアスカートは、歩くたびに優雅に揺れ、裾には波や泡の青い刺繍が広がってる。足元は淡い青のサテンバレリーナシューズで、つま先に小さな水滴モチーフが付いてる。低いヒールで歩きやすそうだが、彼女の一歩一歩が神聖に見えた。アクセサリーは青い宝石が輝くシルバーペンダントで、水の流れを模したデザインが繊細だ。頭には銀のティアラが輝き、長い銀髪と調和して聖女の威厳を高めてる。
ルーナの姿に心を奪われた。聖女にふさわしい神聖さと優雅さが、大聖堂全体を包み込んでるようだ。
「綺麗だ……」
思わず呟いてた。隣のセレナやテラも、同じように見とれてるのが分かる。ルーナは聖壇まで進み、そこで立ち止まった。すると、地の聖女ベラ、火の聖女ヴァルキリー、風の聖女ゼフィラが歩み寄ってきた。
三人の衣装はルーナとほぼ同じデザインで、色と装飾が違うだけだ。ベラは黄色いローブに大地の模様、ヴァルキリーは赤いローブに炎の刺繍、ゼフィラは緑のローブに風の流れが描かれてる。みんな聖女としての威厳を放ってる。
「私は火の聖女ヴァルキリー。新たな聖女の誕生に祝福の祈りを捧げます」
「水の聖女ルーナです。皆様、本日はお集まりいただき、誠にありがとうございます」
ヴァルキリーが祈りを始め、ベラとゼフィラがそれに続いた。ルーナの声が静かに響き渡る。
「水の聖女ルーナ。貴女は今後水の聖女として、この聖王国の為に従事し、その責務を果たすことを誓いますか?」
「はい、私は水の聖女としてこの身を捧げることを誓います」
ルーナが静かに答える。ヴァルキリーが頷き、最後にルーナが祈りの言葉を口にした。
「水と慈愛の女神よ、我らに力を与えたもうたことに感謝します。我等にその力を持ってして国を守る力を授けたまえ」
儀式が終わりを迎えた。不思議と涙が溢れてた。ルーナの姿が、あまりにも神聖で美しかったからか。だが、同時に胸が締め付けられる。あの力を隠したかったルーナを、俺がこんな場所に立たせちまったんだ。
「それでは、我らは水と慈愛の女神様の祝福を受けて、新たな水の聖女の誕生を見届けました。女神様に感謝を捧げましょう」
神父の言葉に、参加者が祈りを捧げた。ルーナも静かに祈りを捧げてる。儀式が終わり、俺たちは大聖堂を後にした。大扉を出ると、人々が感動の声を上げながら散っていく。
「綺麗だったなぁ……ルーナ」
セレナが呟く。リーシャ、テラ、エリスも頷いてた。俺は少し一人になりたくて、みんなから離れて外を歩いた。大聖堂の裏手に回ると、アカンサが立ってた。エメラルドグリーンのドレスが夕暮れの薄暗い光に映え、彼女の表情はどこか後ろめたそうで、影が落ちてる。
「恨んでいますか? あたくしを?」
アカンサの声は小さく、風に消えそうだった。おそらく、ルーナが水の聖女と発覚した時に教会に連絡したことを言ってるんだろう。ルーナが力を隠してたことを考えりゃ、彼女の意思に反する行為だ。
「恨んでるかもな……でも、本当に恨んでるのはお前じゃねえ。お前は正しいことをした。本当に恨んでるのは……ルーナが隠し通したかった力を使わせた俺だ」
自嘲気味に笑ったが、声は掠れてた。ルーナの神聖な姿が頭から離れねえ。あの笑顔の裏で、彼女がどれだけ苦しんでるか考えると、胸が潰れそうだ。アカンサは俺を見て、何かを察したのか、目を伏せて黙った。夕陽が彼女の顔に影を落とし、どこか寂しげに見えた。
「そういえば、元々の約束がありましたね。火の聖女様と会いたくなりましたら、あたくしにご連絡ください。水の聖女様のことを考えれば、貴方は聖王になるべきです」
アカンサが宿泊先の宿が記された紙を渡してきた。彼女の手が少し震えてる気がした。
「御一人で来てくださいね?」
「あ、ああ。分かった?」
疑問に思いながら答えると、アカンサは薄い微笑みを浮かべて去っていった。でも、その背中は重そうで、俺と同じように何か背負ってるように見えた。俺は彼女を見送りながら、ルーナのことを考えた。聖王か……ルーナのためなら、そうなるべきなのかもしれねえ。でも、今の俺にそんな資格があるのか分からねえ。俺は屋敷には戻らず、街の暗がりを彷徨い続けた。ルーナの神聖な姿と、俺が彼女に押し付けた運命が、頭の中でぐるぐる回ってる。
名前: マッシブラ
二つ名: 大地の盾マッシブラ
地位: 水の聖女ルーナの付き人
性別: 女性
年齢: 27歳
容姿: アースブラウンのロングヘア(高く束ねる)、温かみのある茶色の瞳、頑丈でがっしりした体型、健康的な小麦色の肌、胸は大きめで張りがある、腰はがっしり
服装: 普段: 茶色と緑のタイトなアーマー(肩と腕に軽鎧)、ダークブラウンとカーキのミニスカート、アースブラウンのレース下着、盾型コート、ダークブラウンブーツ
戦闘時: 茶色と緑の強化アーマー(地の模様刺繍入り)、ミニスカートに追加の防具(膝当て)、盾を背負うスタイル
出身: シブラ族集落
職業: 中級傭兵、守護騎士
武器: 大きな盾
戦闘スタイル: 地属性魔法と盾を組み合わせた防御重視の戦闘、地面や岩を操りバリアを展開、仲間や聖女を守る冷静で力強いスタイル
特技: 地属性魔法による防御構築、物理的な耐久力、仲間への的確な指示出し、土壌管理
趣味: 園芸(特に野菜栽培)、暗算、訓練後の汗拭き(仲間との雑談付き)、岩石収集
好きな食べ物: 野菜料理(特に根菜の煮込み)、素朴なパン、温かいスープ
嫌いなもの: 辛い料理(胃が荒れる)、華奢な装飾品(動きにくい)、暑すぎる気候
性格: 安定感があり穏やか、聖女への責任感が強い、感情を抑え仲間を思いやる、力への信頼が厚く頑固な一面も
背景: シブラ族集落で生まれ育ち、幼少期から地属性魔法と盾術を学び守護騎士となる。傭兵として中級に昇進後、水の聖女ルーナの付き人に抜擢され、聖王国での任務に就く。
部族との関係: シブラ族では次期守護長候補だったが、聖王国への奉仕を選び一時離脱、現在も族長とは手紙で連絡
弱点: 素早い敵(アクイラ程度なら遅い)への対応が苦手、感情を抑えすぎてストレスを溜め込みがち




