第5章3話 水の聖女の付き人たち
テミスの街に着いた翌日、昼食をベラの屋敷で済ませた後、俺とセレナ、ベラ、ネレイドさんはルーナの付き人に選ばれた二人に会いに行くことにした。聖女の儀式まであと二日。ルーナを任せる奴らがどんな奴らか、ちゃんと確かめておきたかった。
「いやぁ、ルーナちゃんの付き人かぁ。なんか一気にルーナちゃんが雲の上の人みたいになったね」
セレナが呟く。今日は薄ピンクのオフショルダードレスに白いレースのスカートを履いてて、優雅で女性らしい雰囲気が漂ってる。歩くたびにドレスの裾が揺れて、華奢な足首がチラッと見えるのがそそる。俺は「あぁ」としか返せなかった。いつかルーナの秘密がバレる時が来るだろうとは思ってた。冷静に考えりゃ、水に治癒能力なんてねえし、魔獣化したレグルスさんを人間に戻したあの魔法は、一般の水魔法とはかけ離れすぎてる。おそらくベラは初対面からルーナの異常性に気付いてたんだろうな。ルーナは許してくれたけど、彼女の望まない未来を歩ませたのは間違いなく俺だ。だから、俺は……。
「アクイラさん?」
ベラが俺の顔を覗き込んできた。柔らかな緑のリネンローブが彼女の穏やかな雰囲気を引き立て、金の刺繍が光に映えてる。慌てて笑顔を作った。
「なんでもない」
俺がそう言うと、彼女は少し心配そうな顔をしたけど、それ以上は追求してこなかった。ネレイドさんが黒のタイトなベストに白いシャツ、紺のフレアスカートで俺の横を歩いてる。忍者らしいシャープな雰囲気が漂ってるけど、どこか柔らかい笑みを浮かべてた。
街の通りを抜けてしばらく歩くと、大きな建物が見えてきた。白い石造りの壁に、聖王国の紋章が刻まれた立派な門構え。どうやらここが目的地らしい。中に入ると、広いロビーには聖職者や傭兵らしき奴らが忙しそうに行き交ってる。受付らしき場所に向かうと、二人の女性が立ってた。
一人目は白銀色の髪に青い瞳を持つ女。氷のような冷静さが漂う美人だ。銀色のシルクブラウスが体にフィットしてて、青に近いクールな色合いが彼女の白い肌に映えてる。首元と袖口には氷の結晶を模した銀の装飾がキラキラ光ってて、上品さが際立つ。スカートも同じ青系のシルクで、フローティングデザインが軽やかに風になびいてる。裾には銀の刺繍で氷の結晶が描かれてて、細かい仕事が美しい。足元は銀のレザーブーツで、ヒールが低めで動きやすそうだ。
もう一人は力強さと頑丈さを感じさせる女。大地を思わせる茶色のリネンタンクトップを着てて、肩と背中に地の模様の刺繍が施されてる。筋肉質な体にピッタリ合ってて、逞しさが際立つ。スカートは緑がかったキャンバス生地で、ロング丈のフレアデザインが大地の豊かさを連想させる。足元は茶色のレザーブーツで、厚いソールが野外活動に適してる感じだ。
「私は氷雪のクリスタラです。出身はアスカリの街ですわ」
「私はシブラ族! 守護騎士! 大地の盾マッシブラだ!!」
クリスタラは落ち着いた声で、マッシブラは大声で名乗った。アスカリか、同郷だな。知らねえ奴だけど、アスカリは広いし、別の地域で活動してる奴も多いから不思議じゃねえ。シブラ族ってのは地属性に特化した部族だったはずだ。
「俺はアクイラ、こっちはセレナです」
「よろしくお願いしますね、クリスタラさんにマッシブラさん!」
セレナが元気よく挨拶すると、俺もそれに倣った。クリスタラが微笑む。
「えぇ、こちらこそお願いしますわ、アクイラさんにセレナさん」
「よろしくな! 黒髪の男!! 茶髪の女!!」
マッシブラはどうやら名前を覚えられないタイプらしい。まあ、愛嬌があって悪い気はしねえ。
「貴方がたが水の聖女様の付き人ですか?」
ベラが尋ねると、クリスタラが頷いた。
「そうです。光栄なことですね」
「へへっ、私たちなら絶対大丈夫だぜ!」
クリスタラは落ち着いてて、マッシブラは元気いっぱい。正反対の二人だけど、ルーナと上手くやれるか? とりあえずいい奴らそうで安心した。
「貴方様が今まで聖女様と共に過ごされたことは聞き及んでいます」
「私もそう聞いている!! …………?」
クリスタラが静かに言うと、マッシブラがニカッと笑った。なんかよく分かってなさそうな感じがする。
「私と勝負だ! 黒髪の男!!」
「えぇ!?」
いきなり何だこの女!? マッシブラがやる気満々の目で俺を見てくる。
「まぁ! それは面白そうです!」
「お? くりす……たら? もやるか?」
「いえ、私はそういうのは遠慮しておきます」
セレナが目を輝かせ、クリスタラが冷静に断る。俺はため息をついた。
「なぜ勝負を?」
「強そう! 戦いたい!!」
「なるほど」
納得してしまった。この女らしい理由だ。初対面だけど、なんとなく分かる。どうしたもんか。
「……分かった。じゃあ、やろう」
結局受けることにした。仕方ねえか。こうして、俺とマッシブラの模擬戦が決まった。
教会の裏にある訓練場を借りて、一対一が始まることになった。広い土の広場には、木製の訓練用武器や盾が並んでる。石造りの観客席には、セレナとベラ、クリスタラが見守りに座ってる。ネレイドさんは「少し用がある」と別行動だ。訓練場の周りには、聖職者や訓練中の傭兵がちらほら見物に集まってきた。
「それでは、このコインが地面に落ちた瞬間から開始です」
クリスタラが審判として俺とマッシブラの間に立つ。銀のコインを天に掲げた。
「はい、分かった」
俺は拳を構える。マッシブラも盾を手に持って、戦闘態勢に入った。彼女のタンクトップが汗で少し張り付いてて、胸の谷間が強調されてるのが目に入る。でかいな。
「では……始め!!」
クリスタラの掛け声と共にコインが弾かれ、地面に落ちた瞬間、マッシブラが突進してきた。
「大地よ、我が盾に力を与え、土を押し出し突進せよ。地盾突進!!」
マッシブラが盾を地面に叩きつけると、衝撃で土が盛り上がり、壁となって立ちはだかる。そのまま土の山ごと俺に向かって突っ込んできた。俺は最小限の動きで回避した。
「まだまだ!! 大地よ、我が盾に力を与え、地を押し出し突進せよ。土壁突進!!」
続けて同じ魔法を放ち、土の山で追いかけてくる。訓練場の地面がボコボコになって、走りづらさがどんどん増していく。
「くそ! 質量が違いすぎる!!」
「どんどん行くぞ! 大地よ、我が盾に力を与え、土を押し出し突進せよ。土壁突撃!!」
また土の塊だ。俺は何とか避けるけど、回避してるだけじゃジリ貧だ。なんとかしねえと。
「どうした黒髪の男!! 逃げてばかりじゃ勝てねえぞ!!」
「くそ!! 炎の守護、我が身を囲みて鎧となれ。炎焔の鎧!」
俺は炎を体に纏わせた。鎧を高速回転させて、土の山を掘削する。
「うぉ!? 土が削られた!?」
「よし、このまま押し出す!!」
俺はそのままマッシブラに向かって突撃した。彼女は盾を構えて防ごうとする。
「大地よ、我が盾に岩の棘を生やし、敵を貫け。岩盾棘化」
土の棘が俺の体に突き刺さってくる。でも、鎧がそれを弾き、俺はそのまま炎の拳でマッシブラを殴りつけた。
「ぐわぁ!?」
彼女が吹き飛び、地面を転がる。でもすぐに起き上がって盾を構えた。
「むぅぅ!! やるなぁ!!」
まだやる気満々だ。だが……。
「そこまでですわ」
「勝負ありです! アクイラさんの勝ちです!!」
クリスタラとベラが戦いを止めた。俺とマッシブラはお互いに構えを解く。セレナが観客席から飛び降りて駆け寄ってきた。勢い余って俺にぶつかり、オフショルダードレスの胸元がずれて、薄ピンクのレースブラが丸見えになる。彼女は気付かず俺に抱きついてきた。
「すごいねアクイラ! さすがだよ!」
柔らかい胸が俺の腕に当たって、たまらねえ感触だ。
「ああ、なんとか……。セレナ、胸出てんぞ」
「えっ!? うそ!」
慌ててドレスを直す姿が可愛い。観客席含め、たくさんの男たちに見られてセレナは顔を真っ赤に染める。俺は苦笑いしながらマッシブラに向き直った。彼女はまだ本気じゃなかった気がする。
「いや、これは私の負けだ!! 強いなお前!!」
マッシブラがニカッと笑って言った。納得してくれたみたいだ。でも……。
「どうした黒髪の男?」
「いや……まだ本気を出してないように思えて」
俺が言うと、彼女は目を大きく見開いて驚いた。急に笑い出すと、右手を差し出してきた。
「当たり前だろ? 私は人殺しをする趣味はない」
握手を交わす。確かに、俺の炎の拳を受けても無傷だ。聖女の付き人はみんな強すぎるな。
訓練場から屋敷に戻る途中、俺はセレナを脇に引き寄せた。観客席から飛び降りた時にずれたドレスがまだ少し緩んでて、胸の谷間が覗いてる。俺は彼女を壁に押し付け、オフショルダーの肩を軽くずらして、胸元を覗き込んだ。
「アクイラ!? 何!?」
「静かにしろよ、セレナ。こんなとこで騒がれたら恥ずかしいだろ?」
俺は彼女の胸に軽く手を当てて、ドレスを直してやった。セレナが体をビクッと震わせる。
「んっ……や、やめてって……」
俺は笑って手を離した。セレナが顔を赤らめて睨んでくる。
「はぁ……アクイラ、ひどい……」
屋敷に戻ると、ベラが俺たちを待ってた。さて、ルーナの付き人たち、悪くねえ奴らだった。安心して任せられそうだ。
名前: クリスタラ
二つ名: 氷雪のクリスタラ
地位: 水の聖女ルーナの付き人
性別: 女性
年齢: 29歳
容姿: 白銀色のロングヘア(軽やかに束ねる)、青白い瞳(氷のように冷たい)、スリムで凛々しい体型
服装: 銀色のシルクブラウス(氷結晶モチーフの銀装飾)、青系シルクフローティングスカート(銀刺繍)、銀のレザーブーツ(低ヒール)。戦闘時は透け感のある青白いアーマーとミニスカート、エメラルドグリーンの刺繍、白銀の防具を追加
出身: アスカリ
職業: 上級傭兵
武器: 斧(冷気を帯びた攻撃を放つ)
戦闘スタイル: 氷属性魔法と斧を組み合わせた冷静で力強い攻撃、氷の結界で敵を防ぐ
特技: 氷魔法の精密操作、武器作成、冷静な戦況判断
趣味: 登山、武器作成、読書、氷彫刻
好きな食べ物: アイスクリーム、冷たいデザート(シャーベットなど)
嫌いなもの: 熱い食べ物や飲み物(熱湯、辛い料理)
性格: 冷静沈着、感情に流されない、理性的で上品、聖女への忠誠心が深い、効率を重視
背景: アスカリで生まれ育ち、傭兵として頭角を現す。氷魔法の才能を開花させ、上級傭兵に昇進。水の聖女ルーナの付き人に選ばれ、聖王国に忠誠を誓う。
目標: ルーナを守りつつ、自身も特級傭兵に昇進し、聖王国の歴史に名を刻むこと。




