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炎焔の鎧  作者: なとな
第5章 妖精の島
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第5章1話 エアリアの村

 毒砲魔将ドラコとの戦いから三日が経った。アスカリでのあの死闘を思い出すと、今でも背筋がゾクッとする。ルーナは水の聖女として覚醒し、アカンサとシルヴィアさん、レグルスさんの護衛のもと、テミスの街へ護送されることが決まった。あの小さな体で俺を救ってくれたルーナの姿が目に焼き付いて離れない。教会の馬車には俺たちを乗せる余裕はなく、仕方なく遅れてテミスに向かうことになった。

 出発の準備を整えるため、俺たちはルナリスの俺の家に集まっていた。セレナが深緑色のチュニックにミディ丈のスカートを履いて地図を覗き込んできた。スカートの裾がふわりと揺れて、白いレースの下着がチラリと見える。動きやすさとオシャレを両立させた格好だが、俺にはその隙間がたまらなく魅力的だ。


「アスカリからテミスまでは馬車で十日ほどか」


 俺が地図を見ながらつぶやくと、セレナが頷く。


「長旅になりそうだし、準備がいるね」

「そうだな……道中で補給できそうな村もチェックしておこう」


 すると、テラ、リーシャ、エリスも地図を囲んできた。テラは赤い革ジャケットに黒のタンクトップ、膝上の茶色い革スカート。動きやすい格好だが、スカートの短さが彼女の大胆さを際立たせてる。リーシャは茶色の革ジャケットに白いシャツ、茶色の革スカートを合わせてて、槍を手に持つ姿が凛々しい。エリスはダークグリーンのシャツに黒のレザージャケット、ハイロースカートで、前が短く後ろが長いデザインが彼女の華奢な脚を強調してる。エリスが一つの村を指さして口を開いた。


「この村に立ち寄りましょう。エアリアと言いまして、私の実家もございます」

「エリスの実家かぁ」


 エリスは貴族令嬢だよな。一応男爵家の娘だが、継ぐ爵位もなく功績もない家で、彼女のお父さんの代で爵位を返上するらしい。格式高い伯爵家ほど気取ってなさそうだから、気軽に過ごせそうだ。ただ、何度も親密に過ごした後で親に会うのは、正直ちょっと怖い。


「じゃあ、まずはエアリアの村で補給をしよう」


 俺がそう言うと、全員が頷いた。馬車に乗り込み、出発だ。道中は特に問題なく進み、予定通り三日目でエアリアの村にたどり着いた。


「皆さん! ここが私の故郷エアリア村です!」


 エリスが嬉しそうに村を紹介する。馬車から降りると、彼女のスカートが風に煽られてめくれ上がり、黒いシルクの下着がチラッと見えた。貴族令嬢らしい上品な雰囲気だ。


「ここがエアリアの村か」

「小さな村ですが、良いところなんですよ?」


 確かに小さいが、木々が茂る穏やかな雰囲気が悪くない。俺たちはエリスの家に向かった。


「ただいま帰りました!」


 エリスが元気よく挨拶すると、中からお父さんらしき男が出てきた。隣に立つ紅い髪の女性はお母さんだろう。二人とも質素な服だが、貴族らしい落ち着きがある。


「おお、エリス! よく帰ったな……そちらの方々は?」


「私の旅の仲間です。アスカリからテミスまで向かうことになりまして、この村に寄らせていただきました」

「そうでしたか。何もない村ですが、どうぞおくつろぎください」


 そう言って家に迎え入れてくれた。俺たちはエリスの部屋に案内された。小さな部屋だが、木の温もりがあって落ち着く。


「ふぅ、ようやく一息つけるな」


 俺が椅子に座ると、みんなも思い思いにくつろぎ始めた。セレナはベッドに腰掛けてスカートを直すけど、ちょっと裾がずれた隙間から白いレースが覗いてる。テラは荷物を床に置いて革スカートを軽く叩き、リーシャは槍を壁に立てかけて革ジャケットを脱いだ。すると部屋のドアがノックされ、メイドの女性が入ってきた。シンプルな灰色のワンピースを着てるが、スカートの裾が短めで動きやすい作りだ。


「夕食の準備ができましたので、食堂までお越しください」


 俺たちは部屋を出て食堂に向かった。テーブルには豪華な食事が並んでる。さすが男爵家、貴族の風格があるな。


「うまそうだな」

「そうだね……僕もおなかすいた」


 テラが同意する。メインは大きなハンバーグだ。エリスが好きだからだろう。俺とテラは肉好きだからテンションが上がるけど、セレナは脂っこいのが苦手で、少し切り分けて食べてる。リーシャは当たり前のようにチーズソースをかけてた。


「アクイラの作るハンバーグより美味しいな」

「プロと比べるな!」

「私もいつかは料理して、皆さんに食べて欲しいです」


 エリスがはにかむ。ルナリスの俺の家じゃ一度も調理してないくせに。俺が料理当番の時にハンバーグを作るのは、エリス曰く俺のが一番好きだからだ。普段は俺、リーシャ、テラで回してるけど、カイラさんがいる時は彼女が腕を振るうこともある。俺たちは明日からの移動に備えて、しっかり食べて休息を取った。

 食事が終わり、俺は散歩がてら外を歩いてた。夜風が気持ちいい。すると、エリスが追いかけてきた。


「アクイラさん!」

「エリスか」


 彼女が隣に来て俺の手を握る。柔らかい体温が伝わってきて、ちょっとドキッとした。


「村を案内します!」


 エリスが笑顔で言うけど、もう夜中だ。


「……こんな夜中にか?」


 俺が疑問を呟くと、彼女は目を輝かせた。


「夜中だからです……夜が…………良いんですよ」


 エリスが俺の手を引く。俺たちは村の外れまでやってきた。そこには月明かりに照らされた花畑が広がってて、幻想的な雰囲気が漂ってる。


「綺麗でしょう」

「……ああ、綺麗だな」


 俺が素直に答えると、彼女は嬉しそうに微笑んだ。


「ここなら二人きりで話せます」

「へえ? 夜に俺と二人きりを希望するのか?」


 俺が冗談めかして言うと、エリスは顔を真っ赤にした。


「……」


 俺は彼女の顎を軽く持ち上げて、そっと唇を近づけた。キスする直前で止めて、彼女の反応を楽しむ。エリスは目を閉じて、少し震えてる。


「何だ、その顔は?」

「ひどい人ですね……からかうなんて」


 エリスが恥ずかしそうに言う。俺は笑って彼女の頭を撫でた。


「可愛いからついな」


 彼女が俺の胸に顔を寄せてくる。柔らかい髪が触れて、いい匂いがする。しばらく二人で花畑を眺めてたけど、やがて屋敷に戻ることにした。エリスを部屋まで送り、ベッドに座らせた。


「エリス、また明日な」

「どこ見て挨拶してるんですか!」


 スカートが少しずれてたから、つい目がいっただけだ。立ち去ろうとすると、エリスが俺の手を掴んできた。顔を赤くして言う。


「……もう帰っちゃうんですか?」


 少し考えて、俺は彼女のベッドに腰掛けた。肩を寄せてやると、エリスも俺の腕に凭れてくる。しばらく沈黙が続いた後、彼女が口を開く。


「アクイラさん……また一緒にいたいです」

「おいおい、ここで長居したらお父さんに睨まれちまうだろ?」


 エリスが悲しそうな顔をする。そんな顔されると俺だって辛いんだ。


「でも、また一緒にいたいならいつでも付き合ってやるよ」


 俺がそう言うと、彼女は嬉しそうに微笑んで胸に顔を擦り付けてきた。可愛い奴だ。頭を撫でてやると、目を細めて気持ちよさそうにしてる。やがて眠りについたみたいだ。俺も目を閉じると、すぐに睡魔に襲われた。

 翌朝、エリスのお父さんに呼び出された。


「君がエリスと一緒にパーティを組んでいる傭兵だな?」


 正確には違うけど、まあ似たようなもんだ。女しかいないパーティに混じる唯一の男だから、父親として気になるのは当然か。問題は、俺が全員から好意を持たれてて、エリスもその一人だってことだ。


「はい、その通りです」


 正直に答えると、お父さんが驚いた表情を浮かべた。


「そうか、君が……」


 複雑な気持ちだろうけど、エリスが俺を選んだことを反対してないみたいだ。むしろ喜んでるように見える。


「それで、何の用ですか?」


 俺が尋ねると、お父さんが真剣な顔で言った。


「娘を、エリスを頼む。昨夜妻と相談してね。エリスはどうやら君の事をかなり信頼しているようだ。本当は貴族として結婚させてやりたかったが、我が家の家計が傾いた時、真っ先に傭兵になって支えてくれたのはエリスなんだ。だからエリスには貴族としてもそうでもなくても娘の選んだ幸せな道を進んでほしいと考えている」


 そう言って頭を下げる。俺は困惑しながら答えた。


「わかりました」

「娘を泣かせたら承知しないからな?」


 お父さんから釘を刺されたけど、大丈夫だろ。俺はエリスの部屋に向かった。扉をノックして入ると、着替え中の彼女がいた。下着姿で、黒のシルクキャミソールが彼女の華奢な体を際立たせる。


「ノックをしたなら、返事を待ってください」


 エリスが恥ずかしそうに言う。


「すまん」


 俺は素直に謝って近づき、身体に軽く触れた。キャミソール越しに柔らかい感触が伝わる。


「んっ……もう! まだ朝ですよ?」


 そう言いつつ抵抗しない。少し肩を撫でてやると、彼女がもじもじし始めた。楽しんで手を離すと、物足りなそうな顔をした後、俺に抱きついてきた。


「どうした? そろそろ着替えて出発する時間だぞ?」


 エリスが上目遣いで俺を見つめ、服の裾をキュッと掴んでくる。お父さん、この子はもうダメです。俺は近くの服を渡した。白いオフショルダーブラウスに薄手のダークグリーンケープ、黒のフレアスカートを着させ、黒のショートブーツを履かせて装飾品をつけたら準備完了だ。


「何気に俺に着替えを手伝えさせたか?」

「でもアクイラさん、匂い嗅いでましたよね?」

「あれは別に変な意味じゃなくてだな……」


 エリスが俺の言い訳を無視して言う。


「まあ、私もアクイラさんの匂い好きなんですけどね」


 旅支度を終えて、みんなの待つ広間に向かった。セレナは薄いクリーム色のコルセット風ベストに白い長袖シャツ、深緑のプリーツスカートで茶色のレザーサンダルを履いてる。テラは黒のクロップドジャケットに赤いキャミソールと茶色のタイトスカート、リーシャは茶色のレザーベストに白シャツとダークブラウンのラップスカート。みんな個性があって目に楽しい。


「よし、全員スカートをたくし上げてくれ」

「あまり調子に乗るなよアクイラ?」


 リーシャが槍の先を俺に向ける。


「おいおい、冗談だって……」

「いいや、アクイラはどーせそれで誰か一人でも見せてくれたらラッキーって思ってたでしょ?」


 セレナに図星を突かれて言い返せなかった。


「僕は良いよ?」

「テラ!? 貴女は恥じらいくらいは持ちなさい!」


 俺たちは馬車に乗り込み、テミスの街へ向かった。エリスの両親に見送られる時、お父さんが俺を睨んでるように見えた。娘を頼んだんじゃないのか? まあ、父親ってそういうもんだろ。エアリアの村を後にした。

 アクイラのよく使う魔法炎焔の鎧(エンフレクス・アルマ)は、一般的には防御魔法で攻撃や推進力を利用して移動に利用するのは熟練まで使いこなしているアクイラのみ。

 ちなみに、火属性の防御魔法を覚える際に二番目くらいに覚える程度の魔法。

 最初に覚える火の防御魔法は一般的には炎盾創造エンシールド・イグニスが多いし、これで十分だから以降を使える人は少ない。

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