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炎焔の鎧  作者: なとな
第4章 復讐
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第4章9話 新たな発見

 俺、リーシャ、アカンサの三人は巡回エリアの確認と活動時間を決めるために、アスカリの酒場で話し合ってた。屋内は暖炉がパチパチと燃えてて、木のテーブルには酒の染みが点々と残ってる。俺は厚手の灰色コートを脱いで椅子の背にかけ、黒い長袖シャツと灰色のズボンで座ってる。酒場の喧騒が耳に響き、時折通り過ぎる女客のスカートが目に入る。


「なあアクイラ」


 リーシャが俺に話しかける。彼女は濃藍の長袖ブラウスに焦げ茶の膝丈スカート、厚手の黒タイツを履いてて、暖かい屋内に合わせて毛皮のコートは脱いで隣の椅子に置いてる。椅子に落ち着いて座った時、焦げ茶のスカートが椅子の縁に引っかかって少しずり上がり、黒タイツに包まれた太ももが良く見える。


「どうした?」


 俺が聞き返すと、リーシャは不安そうな表情で質問する。


「ルーナは本当に大丈夫なのか?」


 その心配も分かる。だが、今乗り越えなきゃルーナは一生怯えたままだ。俺は少し考えて、口を開く。


「…………お嬢さんには事情説明の時に話したけど、リーシャにはルーナの過去の話はしてなかったな」

「ルーナの過去? 一体、何があったのだ?」


 俺は少し深呼吸する。心の中で勝手に話すことをルーナに謝りながら、リーシャにルーナの過去を話した。両親が黒い鎧の大男に襲われ、翌朝灰になって見つかったこと。ルーナがその恐怖を引きずってることを伝えると、彼女は少し同情した表情を浮かべる。


「そうか……。それならアクイラが気にかけるのも分かる気がするな」


 俺もその言葉に頷く。今回の事件はルーナの両親の敵の可能性が高い。アカンサが興味深そうに口を挟む。彼女は薄桃色の長袖ブラウスに深緑の膝丈スカート、灰色のタイツを履いてて、暖炉の熱で汗ばんだ薄桃色のブラウスが濡れて、下着が透けて見える。


「そもそも彼女の名前、『ルーナ』って本名? それとも愛称かしら?」

「どういう意味だ?」

「いいえ…。ちょ…っと気になっただけですわ」


 アカンサの口調からすると、何か裏がありそうだ。俺は少し目を細めて彼女を見つめる。


「お嬢さん、ルナリスの街で俺たちと会った時にさ。ルーナのことしばらく見つめてただろ? はじめは俺に密着してくっついてる女の子が不思議で言葉も出なかったかと思ったけど…………ルーナが何者か知ってたんだな?」

「ふふふ、さあどうかしらぁ?」


 この態度は黒だな。絶対何か隠してる。


「教えてくれないのか?」

「…………知ってはいますが、共有して何かが変わるものではない。それだけです。どうしても知りたいというのであれば…………そうですね。せめて私と違ってもっと深い関係者の方にお話を伺ってください。それが誰かはお教えすることはできませんが」


 どうやら、彼女は教えてくれる気はないようだ。隣で聞いてたリーシャも首を傾げてハテナを浮かべてる。アカンサが薄桃色のブラウスを少し直すと、汗で濡れた布地が胸に張り付いて、下着がさらにくっきり浮かび、レースの下着であることもまではっきりとわかるようになった。俺の目がそっちにいってばかりいたらアカンサに気付かれたが、彼女はニヤニヤしているだけで咎めようとはしなかった。とにかく必要なことを話し合いして、俺たちは巡回と調査を始めることにした。


「じゃあ行くか」


 リーシャは基本真面目だし、アカンサも依頼に関してはまともに対応してくれる。このグループは比較的楽だ。全員で巡回をしながら手がかりを探す。俺は酒場を出て、厚手の灰色コートを羽織り直す。アスカリの寒冷地じゃ屋外はしっかり防寒しないと凍えちまう。リーシャは焦げ茶の毛皮コートを着込み、アカンサは深緑のロングコートを羽織って、灰色のタイツがコートの裾から覗いてる。

 さすがに黒い鎧は過去の恰好で、今は違うかもしれない。なので見覚えのない大男はいないか? それで聞き込みをしてるところだ。石畳の道に霜が降りてて、冷たい風がコートをはためかせる。今のところめぼしい情報はない。だが、探し始めて数時間たった頃だろうか? リーシャが俺たちに声をかけた。


「おーいアクイラ、アカンサさんちょっと来てくれ!」


 俺たちは彼女の方に向かった。彼女はしゃがみ込んで地面を見てる。スカートの中が覗けそうだ。何か見つけたのだろうか。


「どうした?」


 俺が聞くと、リーシャが答える。


「それがな、この辺りに不思議な跡があるんだ」


 何かがぶつかって凹んだような地面。俺はアカンサの方に顔を向けるが、彼女も首を振ってよく分からない様子だ。


「関係ないんじゃないか?」

「むぅ…………さすがにそうか」


 リーシャは納得して立ち上がる。だが、俺はこの跡が気になる。砲弾とかそんな感じだろうか。石畳に残った凹みが妙に深くて、ただの足跡じゃなさそうだ。とりあえず砲弾なら灰化とは関係なさそうだが、頭の片隅に残しておく。

 しばらく巡回エリアを歩き回ったが、リストにある夫婦はすべて生存も確認。襲われてる様子もない。また空振りになりそうだ。冷たい風が吹き抜けて、俺たちは移動しながら食べれる軽食を探すと、屋台で串焼きを見つけた。香ばしい匂いが漂ってきて、腹が鳴る。俺はそれを三本購入し、一本ずつ配った。リーシャとアカンサがそれを受け取り、リーシャは落ち着いて食べ始めた。だが、アカンサはおどおどしてる。


「どうした?」


 俺はアカンサの腰に手を回して引き寄せる。


「アクイラ! 何!?」


 顔を赤らめたアカンサが声を上げて体をよじるが、俺は笑って手を離す。


「なんかおどおどしてたからな。驚いたか?」

「え、ええ。それより人前で大口を開いてこんなものを食べるのはちょっと」


 確かに彼女の見た目は優雅なお嬢様だ。串焼きを手に持つ姿が妙に不釣り合いで、抵抗があるのだろう。アカンサは串焼きを見つめたまま動かない。俺はニヤリと笑って提案する。


「俺が口移しで食べさせてやろうかお嬢さん?」

「バカは放っておきましょう」


 リーシャが俺の頭を軽く叩く。地味に痛いぞお前。彼女は串焼きを丁寧にかじりながら、アカンサをチラッと見る。


「もういいです。食べればいいのでしょう食べれば! いただきますわ」


 アカンサはこちらに背を向けて串焼きを食べ始めた。やっぱり大口を開いてるところは見せたくないようだ。俺は彼女の食事が終わるまで待った。それが終わると、再び巡回を始めたが何も結果は出なかった。冷たい風が顔を叩き、空振り続きに少し苛立ちが募る。

 翌朝、俺たちの巡回エリアで変死体が発見された。現場はあの砲弾のような跡の近くだった。石畳に灰が散らばり、衣服が寂しげに横たわってる。だが関係性は分からないままだった。そんな時、アカンサが声を出す。


「灰化は朝に起きてるのではないでしょうか?」

「…………そうか、言われてみれば朝になってから変死体の発見報告が多いな。もちろん夜に灰化して朝見つかってる場合もある。だが灰化が朝だとして何か関係あるのか?」


 俺がアカンサに尋ねると、彼女がそのまま答える。


「ルーナさんのご両親の件と今回の犯人が同一人物か分かりませんが、殺人の手段が同じ可能性がより強固になったかと」


 そうか、ルーナも確か翌朝に灰になってたって言ってたな。俺が考え込んでると、リーシャがしゃべりだす。


「であれば襲われる時刻は夜前の可能性も高かろう。寝静まってる家屋が襲撃されてる様子もない。外を出歩く機会で毒を貰い、朝、灰化してると考えるなら私たちは夜の巡回をしなくてもいいのかもしれんな」

「そうですわね。今日はもう休憩にして屋敷に戻りましょう。その際に他のグループの方が戻ってきたら共有してもらえるよう使用人にお話ししておきます」


 俺たちは屋敷に戻ることにした。歩いてると、また砲弾のような跡を発見する。石畳に深く刻まれた凹みが、昨日見たものとそっくりだ。


「これはもう決定じゃないか?」


 砲弾のような跡のあった場所は、被害者リストの方になってた家屋の近くだった。過去の被害者の家の近くも確認すべきかもしれない。俺がそう言うと、アカンサが頷く。


「そうですね、関係性を確立させましょう」


 現在時刻は朝だ。本当は日中の巡回もしておきたいが、一度屋敷に戻り、昼まで仮眠をとることにした。その際、今回話し合った俺達の考えを共有できるように使用人に頼んでおく。屋敷に戻ると、俺は暖かい室内でコートを脱ぎ、黒い長袖シャツと灰色のズボンで椅子に座る。リーシャは濃藍の長袖ブラウスに焦げ茶の膝丈スカート、黒タイツのまま、アカンサは薄桃色のブラウスに深緑のスカート、灰色のタイツで、それぞれ仮眠の準備をしてた。

 屋敷から出ていく際、ルーナ、セレナ、エリスとすれ違った。ルーナは白い長袖ブラウスに赤い膝丈スカート、厚手の白タイツで、毛皮のコートを羽織ってる。セレナは黄緑の長袖ブラウスに茶色の膝丈スカート、焦げ茶のタイツで、灰色の毛皮コートを着込んでる。エリスは水色の長袖ブラウスに薄紫の膝丈スカート、灰色のタイツで、黒い毛皮コートを手に持ってる。


「アクイラさん!」


 ルーナは俺を見つけるとすぐに抱き着いてくる。幼い表情で俺にしがみつき、銀髪が俺の腕に絡まる。セレナとエリスが俺たちのとこに歩いてくる。寒風が吹き抜けて、エリスの薄紫のスカートが膝まで捲れ上がり、灰色のタイツの奥に紫色のような下着が一瞬覗く。


「二日ぶり? くらいか?」

「朝と夜活動して明け方とかに仮眠してるからねぇ」


 セレナが返事をする。少しだけ話したが、特に新情報はなさそうだ。ルーナが俺のコートにしがみつき、幼げな瞳で俺を見上げてくる。俺は三人には砲弾のような跡のことや、灰化の時間、襲われてる推定時間が日中野外じゃないかって共有した。

■変死体事件調査レポート

・アスカリの街で発生した変死体事件。

・遺体は衣服だけを残して灰化する変死体事件が発生。

・遺体の共通点は全て型種族と婚姻した夫婦であること。

・犯人の手がかりはルーナの見た”黒い鎧の大男”と、ヴァルガスの証言”毒砲魔将”

・ルーナの両親の時は”黒い鎧の大男”に襲われた翌朝、両親が灰化していた。

・ルーナの両親が何族かは未確認。

・灰化は朝説濃厚。(NEW)

・灰化事件の現場付近には砲弾のような跡有。(NEW)

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