第4章7話 事件のヒント
今日も巡回が続く。闘技場近辺のリストにある、婚姻してるドワーフと人間の夫婦がやってる武器工房だ。あいにく俺たちは刀剣を使った戦闘はしないが、剥ぎ取り用のナイフくらいなら持つこともある。朝、グラディアスとの戦いで体がまだ痛むが、左手の指には大地と調和の指輪が嵌まってるおかげで、何とか動けてる。工房に向かう途中、街の石畳は霜が溶けて少し濡れてて、冷たい風がコートをはためかせる。ルーナとエリスが俺の後ろを歩き、遠くで市場の喧騒が微かに聞こえてくる。空は薄曇りで、朝の光が弱く差し込む。
「とりあえず客のていで入ろう」
俺がそう声をかけると、ルーナとエリスが頷いた。ルーナは赤い長袖チュニックと黒いフレアスカートに黒タイツ、エリスは薄紫の長袖ブラウスと白い膝丈スカートに灰色のタイツで、外は厚手の毛皮コートだ。工房の前まで来ると、鉄の匂いが風に混じって漂ってくる。
「こんにちは」
俺がそう言って工房の扉を開ける。重い木の扉が軋む音を立て、店内に鉄と煤の匂いが広がってる。暖炉が奥でチリチリと燃え、壁には剣や槍が無造作に掛かってる。店の奥から人間の男性が出てきた。40歳くらいに見える、少し小太りの体型で、偏屈そうな印象だ。灰色の長袖シャツと茶色のズボンに革エプロンを着てて、手には油汚れが付いてる。暖炉の火が彼の顔を照らし、微かな影が揺れる。
「いらっしゃい」
その声はぶっきらぼうで、俺たちをチラッと見ただけだ。俺はその男性に用件を伝えることにした。店内の空気が暖かく、鉄の擦れる音が微かに響いてる。
「剥ぎ取り用のナイフを見せてくれ」
俺がそう言うと、男性はめんどくさそうに鼻を鳴らす。
「そこの棚にあるから勝手に見てくれ」
そう言われて俺たちは棚に目をやる。木の棚には埃が薄く積もり、様々な形状のナイフが並んでる。刃先が暖炉の火に反射して、微かに光ってる。俺はその中から一つ手に取ってみた。刃が鋭く、柄のバランスがいい。正直、どんな人か見に来ただけだったが、これは普通に買って帰ってもよさそうだ。値段はどれくらいだろうか。棚の横に値札が貼ってあって、銀貨四枚と書いてある。暖炉の火がチリチリと鳴り、店内に微かな煙が漂う。
「エリスは何か買うのか?」
「私は剥ぎ取り用じゃなくて戦闘に使える短剣も欲しいですね。銃だけではどうしても近接が厳しいので」
「そうだな、俺はこのナイフを買おう」
「私はこれかな。携帯しやすいし、刃先も綺麗」
俺とエリスは気に入った商品を手に持つ。エリスが選んだ短剣は刃が細く、柄に革が巻かれてて握りやすい。俺は銀貨四枚、エリスは大銀貨一枚を男性に渡して購入した。暖炉の火が部屋を暖め、鉄の匂いが鼻に残る。ナイフを手に持つと、刃に映る光が微かに揺れてる。
「アンタ、いい仕事してるな」
俺がそう言うと、男性が嬉しそうに笑う。
「そうだろ、俺の工房で作った武器だ」
「ああ、いい買い物ができたよ」
そう言って俺たちは店を出た。外の冷たい風がコートをはためかせ、石畳に霜の残りが光る。工房の扉が閉まる音が背中で響き、街の喧騒が遠くから聞こえてくる。とりあえずこの店の近くを回りながら、またここに戻ろう。ルーナが俺にくっついてきて、赤いチュニックが俺のコートに擦れる。
「次はどこに行きますか?」
エリスが俺に聞いてくる。彼女のコートの裾が風に揺れ、灰色のタイツがチラリと見える。俺は少し考えた後に答える。ポケットからリストを取り出し、指で次の場所を探す。
「とりあえずここの獣人と人間のとこを見て、その後は…………」
俺とエリスが相談してる間、ルーナは俺にくっついてるだけだ。彼女の暖かい体温が俺の腕に伝わり、黒タイツが微かに擦れる音が聞こえる。まあ、彼女はまだこういう話に慣れてないだろうし、今は聞いてるだけでいいだろう。…………聞いてはいるんだよな? 俺はルーナの顔を覗き込むと、彼女が少し目を伏せてぼーっとしてるのに気付く。俺は我慢できず、ルーナのスカートを強引にめくって黒タイツ越しに赤いレースの下着を撫でまわし、尻を揉みしだいてやった。
「アクイラさん…………」
彼女が顔を赤らめて抗議する。俺はさらに太ももを撫で回してやると、彼女が声を上げる。街の冷たい風が吹き抜け、ルーナの体温が妙に熱く感じる。俺はニヤリと笑って彼女の尻を軽く叩き、コートを整えてやった。
「…………もっと構っても…………」
ルーナが何かつぶやいているが、俺は無視をする。
結局その日も空振りだった俺たちは、翌朝になり合流をかねてリーシャたちの巡回地域に向かうと事態が進展した。朝の冷気がコートに染み、街の石畳を踏む足音が響く。遠くの市場から微かな喧騒が聞こえ、朝霧が薄く漂ってる。俺は厚手の灰色コートを羽織り、ルーナとエリスも毛皮のコートで防寒してる。
「アクイラ! 変死体だ!」
リーシャが叫ぶ。俺たちはすぐに現場に向かった。路地の奥に近づくと、空気が重くなり、血と灰の匂いが漂ってくる。そこには事前に聞いてた通りの衣服と灰が残されてた。二人分だ。地面に散らばる灰が風に少し舞い、衣服が寂しげに横たわってる。路地の石壁が冷たく、朝の薄い光が灰を照らす。リーシャは深緑の長袖ブラウスと黒い膝丈スカートに灰色タイツ、厚手の毛皮コートを羽織ってる。俺はルーナの様子を確認すると、彼女の目は見開き、恐怖で震えてる。赤いチュニックが微かに揺れ、顔が青ざめてる。ああ、間違いないな。この殺し方はお前の敵なんだな。俺がルーナの肩に手を置くと、彼女は震えながら俺の方を振り向く。そして恐怖で引きつりながらも笑顔を俺に向けてくる。
「だ、大丈夫」
俺はその笑顔を見て、抱きしめたくなる衝動にかられたが、ぐっと堪えてただ頷いた。するとセレナとテラがルーナの様子がおかしいことに気付き声をかけてくる。セレナは緑の長袖シャツと茶色の膝丈スカートに茶タイツ、テラは白い長袖チュニックと黒のフレアスカートに黒タイツで、二人とも厚手のコートを着込んでる。セレナのコートが風に煽られて少しめくれ、茶タイツ越しにピンクの下着がチラリと見えた。
「ルーナ大丈夫?」
「ルーナ? 怖いなら下がって」
ルーナは二人の声にはっとして首をふるふると振る。
「だ、大丈夫! 大丈夫だから」
俺はそんなルーナを見て、強く抱きしめてやった。彼女の体が震え、赤いチュニックが俺のコートに擦れる。暖かい体温が伝わり、冷たい風が一瞬遠ざかる。セレナもテラも、リーシャやエリスだってルーナの事情は知らない。それでもみんな気にかけてくれた。路地の冷気が背中に残り、灰の匂いが鼻に残る。
「少しルーナを落ち着かせてくるから、みんなは何か手がかりがないか探してくれ」
俺はそう言ってルーナを連れて伯爵家の屋敷に向かった。路地を抜け、石畳の道を歩きながら、ルーナが俺のコートにしがみついてくる。屋敷に着くと、暖炉の火が部屋を暖かく包み、木の床に微かな埃が舞ってる。ルーナを椅子に座らせ、少し落ち着いてきたところで問いかけた。
「大丈夫か?」
ルーナはこくりと頷き、俺の胸に顔を埋める。俺もまたそんな彼女を優しく抱きしめてやったが、しばらくすると彼女が顔を上げたので俺は彼女から離れた。暖炉の火がチリチリと鳴り、部屋に静寂が広がる。彼女の黒タイツが微かに擦れる音が聞こえ、暖炉の光が彼女の顔を照らす。
「ごめんなさい」
「お前が謝ることじゃねえ」
俺がそう言うと、ルーナは首を振る。
「ううん、大丈夫。もう落ち着いたから」
そんな彼女の笑顔はどこか無理をしてるようで痛々しかったが、それでも俺はそれ以上何も言えなかった。少し、最初に会った頃のルーナに戻った気がする。不安と恐怖が隠せない。一人寂しい儚げなルーナ。俺が手を差し伸べた時の彼女だ。暖炉の火が部屋を暖め、静かな空気が彼女の震えを包む。
「無理はするなよ。ルーナ」
俺の言葉に、彼女は俺の顔を見て再び笑う。その笑顔はやはりどこか痛々しかったが、俺はもう何も言わなかった。暖炉の火がチリチリと鳴り、部屋の隅に置かれた古い椅子が微かに軋む。
「辛いことを思い出させるようで悪いが…………同じなんだな? 両親の死に方と」
「…………うん。間違いない…………洋服と…………それを着てた人が灰になったような消え方…………絶対、同じ」
ルーナの両親の敵なら、黒い鎧の大男で間違いないだろう。確かルーナの両親は黒い鎧の大男に襲われて、その日の晩は問題なくて、翌朝灰になってたんだったな。暖炉の火がパチッと爆ぜて、部屋に微かな煙が漂う。俺は少し考え込む。
「…………? 灰化と黒い鎧の大男の明確な因果関係は同じ日ってことだけか?」
少々疑問が残ったが、黒い鎧の大男が本当に関係あるかは断定できない。じゃあ、もしかしてルーナの家には襲撃に来た黒い鎧の大男と、灰化の犯人が別々にいる可能性もあるのか? 暖炉の火が部屋を照らし、俺の頭に疑問が渦巻く。静かな部屋に暖炉の音だけが響き、ルーナの震えが微かに伝わってくる。
「遅効性の毒…………なのか?」
毒使いの知人と言えば、アカンサやシルヴィアさん、それからカイラさんの仲間のエルフにもいたな。今は屋敷にいるし、俺はとりあえずアカンサに気付いたことを報告しようと思い、彼女の部屋を訪ねることにした。ルーナを部屋で休ませ、俺は一人でアカンサの部屋に向かった。廊下の石壁が冷たく、足音が静かに響く。暖炉の遠い火が微かに見え、屋敷の静けさが耳に残る。長い廊下を進むと、アカンサの部屋の扉が見えてくる。
「お嬢さん、いるか?」
俺が扉をノックすると、中から返事が返ってくる。木の扉が微かに軋み、暖かい空気が漏れてくる。俺は扉を開けて中に入った。アカンサは淡緑の長袖ブラウスとダークグリーンの膝丈スカートに厚手の黒タイツで、暖炉の前に立ってる。部屋には絨毯が敷かれ、暖炉の火が壁に淡い影を映してる。彼女の黒タイツが暖炉の光に映え、微かに艶めいて見える。
「どうしたのかしら? アクイラ」
「情報共有がしたい。入れてくれ」
「ええ、お入り」
アカンサが快く俺を部屋に入れてくれる。俺は暖炉の近くに腰を下ろし、彼女にルーナの両親について話し始めた。暖炉の火がチリチリと鳴り、部屋に温もりが広がる。彼女の香水の甘い匂いが微かに漂ってくる。
「黒い鎧の大男と毒砲魔将ですか」
「あぁ、何か知ってることはあるか?」
俺が聞くと、アカンサは少し考え込む。暖炉の火が彼女の顔を照らし、静かな空気が流れる。彼女の黒タイツが微かに擦れる音が聞こえ、部屋の隅に置かれた古い椅子が静かに佇んでる。しばらくして彼女が口を開く。
「…………大男のことはわかりませんが、遅効性の毒というのは盲点でした。つまり、死亡時刻と犯人の現在地は必ずしも一致しない」
「まだ推測の域を超えないが、そういう可能性も考慮する必要があるな」
「そうね」
俺の言葉を聞いて、アカンサが頷く。暖炉の火がパチッと爆ぜて、微かな煙が部屋に漂う。彼女の淡緑のブラウスが暖炉の光に映え、静かな雰囲気が部屋を包む。
「ああ、そういえばアクイラ。見事盾将軍グラディアスをこちら側に引き込みましたね。偉い偉い」
アカンサがそう言うと、俺の頭を撫で始めた。暖炉の熱が彼女の体温と混じり、甘い香水の匂いが鼻をくすぐる。俺は彼女のスカートを強引にめくってやろうとしたが、アカンサはそれに気付いて防御態勢に入った。そのせいか彼女はよろけ、俺の肩に手を付けて転倒を回避。しかし、俺の視界はアカンサの胸部で埋まり、このまま顔を押し込んでいいだろうか。俺はさらに顔を近づけて匂いを嗅ぐと、柔らかい感触が顔に触れる。
「アクイラ? 感想は?」
「感想? なんというか、良い匂いの胸だな。次は生で頼む」
俺がそう言うと、彼女の撫でる手が止まる。暖炉の火がチリチリと鳴り、部屋の空気が一瞬重くなる。
「あたくしは…………撫でていた手の感想を…………胸? 匂い?」
アカンサが何かブツブツと呟く。俺は彼女の胸から顔を離すと、彼女が俺を睨んでる。暖炉の光が彼女の目を映し、微かな怒りが混じってる。
「アクイラ……あなた……」
少し怒ってる? いや、これはどっちかっていうと恥ずかしがってるのか? 俺がそう考えてる間にも、彼女は徐々に顔を赤らめていく。そしてついには耳まで真っ赤になってしまった。暖炉の火が彼女の赤い顔を照らし、部屋に微かな緊張感が漂う。
そのまま俯いてしまうので表情は見えない。どうやら想定外の事でかなり動揺してるようだ。しかしそんな反応を見せられると、俺も恥ずかしくなってくる。暖炉の熱が部屋を暖め、彼女の香水の匂いが鼻に残る。俺は今度こそ彼女のスカートをめくり、黒タイツ越しに尻を撫で回してやった。
「アクイラ! 許可していません!!」
彼女が声を上げる。俺はニヤリと笑ってさらに尻を揉みしだいてやると、彼女が顔を真っ赤にして叫ぶ。
「や、やめて!」
「あーその……なんだ。エロいな」
思いっきりビンタされた。暖炉の火が一瞬大きく揺れ、部屋に響く平手打ちの音が耳に残る。アカンサが俺を睨み、顔が真っ赤なままだ。
「それではこちら、来週のトーナメントの出場権よ。トーナメントの組み合わせは少し弄らせてもらうわ。貴方とオクトが初戦になるように頑張るけど、必ず成功する訳ではないから、あまり期待しちゃダメよ?」
「あぁ、分かったよおっぱい…………あ、違うお嬢さん!」
おっと、つい視覚情報が漏れてしまった。アカンサが俺を睨むが、暖炉の火が彼女の顔を照らし、赤みがまだ残ってる。
「そうですか。…………今回の依頼がすべて解決したら……あたくしのむ……いえ、なぁんでもありません!」
アカンサが何か言いかけてやめた。暖炉の火がチリチリと鳴り、部屋に静寂が戻る。何を言いかけたのか聞き出そうと思ったが、本人が話を逸らしたので、俺は流した。彼女の香水の匂いが部屋に漂い、暖炉の熱が静かに響く。
■変死体事件調査レポート
・アスカリの街で発生した変死体事件。
・遺体は衣服だけを残して灰化する変死体事件が発生。
・遺体の共通点は全て他種族と婚姻した夫婦であること。
・犯人の手がかりはルーナの見た”黒い鎧の大男”と、ヴァルガスの証言”毒砲魔将”
・ルーナの両親の時は”黒い鎧の大男”に襲われた翌朝、両親が灰化していた。
・ルーナの両親が何族かは未確認。




