第4章2話 帰省の道中
アカンサが去った後、俺はすぐに旅支度を始めた。アスカリに向かわなきゃならなくなったからだ。左手の指には地の聖女からもらった大地と調和の指輪が光ってる。黄色の宝石が嵌まったこの指輪が、俺の決意を少しだけ重くしてる気がする。それとこいつを装備してから心なしか身体が丈夫になって…………あと性欲も増した気がする。最近では女性を見れば自然と胸や尻に手が伸びそうになる。
ルーナの両親を殺した犯人かもしれない。それにヴァルガスが言ってた毒砲魔将、つまり魔の九将の一人である可能性もある。だったら俺たちが行かない理由なんてねえ。今回は初めから魔の九将との戦いを想定してるから、戦力は多い方がいい。
俺は可能な限りの伝手に連絡を入れた。カイラさんにはこの小屋に置手紙で十分だ。ルナリスの街のギルドや地の聖女、風の聖女にも報告だけ入れとこう。うまくいけば誰か一人くらい来てくれるかもしれない。俺は小屋に手紙を残し、ルーナたちと旅支度を始めた。まずは食料と水だ。それから道具も新調しなきゃならねえ。馬車の旅になるから、毛布や簡易テントも必要だな。
「アクイラさん、何してるの?」
俺が荷物をまとめていると、ルーナが話しかけてきた。彼女は青い半袖シャツと白い膝丈スカート姿で、俺の隣に座り込むと一緒に準備を始めた。薄紫のレースの下着がシャツの隙間からチラッと見えて、俺の目を引く。
「アスカリに行くなら準備しないとな」
「ん。…………私…………怖い」
そうだよな。ルーナは両親を殺した相手の所に行くかもしれないんだ。どんな風に殺されたか知ってるから、怖くないはずがねえ。俺は荷物を置いて、ルーナをぎゅっと抱きしめた。彼女の細い体が俺の腕に収まる。
「大丈夫だ。俺がいるだろ?」
ルーナは静かに頷くと、俺に体重を預けてきた。柔らかい胸が俺の腕に当たって、つい手を滑らせてスカート越しに太ももを撫でちまう。彼女は気にした様子もなく、安心した顔で呟いた。
「アクイラさんがいるなら大丈夫」
俺たちは旅の用意を終え、出発する。アカンサが用意してくれた馬車には俺とルーナ、セレナ、テラが乗り込んだ。リーシャとエリスも来てくれて、もう一組のアカンサと一緒だ。馬車に揺られながら、俺たちはアスカリへ向かう。
「お噂通り、女性の方が多いのですね?」
アカンサが深緑色のベルベットブラウスとダークグリーンのフレアスカート姿でニヤリと笑う。金と赤の刺繍が映えるその服が、彼女の高貴さを際立たせてる。
「いや、まあ」
俺は何も言い返せねえ。別に女の子だからパーティに入れた訳じゃねえんだが、成り行きを説明しても仕方ねえだろう。七人で一台の馬車に乗るわけにもいかず、俺、ルーナ、セレナ、テラが一組。リーシャ、エリス、アカンサがもう一組に分かれた。
「お嬢さん、護衛もつけねえのか?」
俺が尋ねると、彼女はレースアップブーツの足を軽く組んで答えた。
「あたくしに? ここにいる唯一の上級傭兵ですよ?」
確かにその通りだ。だが、ここにいる誰よりもアカンサが一番幼いのも事実。馬車で移動しても一週間はかかる距離だ。途中に村や街を経由するだろうが、それまでこの危険なお嬢様と一緒かよ。
馬車の中じゃ、当然のようにルーナが隣を陣取る。青いシャツの裾が少し上がって、薄紫の下着が覗いてる。俺は我慢できず、スカート越しに彼女の尻を軽く揉んでやった。ルーナは嬉しそうに俺に寄りかかるが、セレナとテラから「交代制にしよう」と申請された。まあ、長い旅だ。仕方ねえな。とりあえずルーナを撫で回して可愛がる。彼女は目を細めて満足そうだ。
「そういえばアスカリってどんな場所なの?」
セレナがライトグリーンの半袖シャツと茶色のフレアスカート姿で何気なく聞いてきた。俺はルーナの太ももを撫でながら答える。
「寒い癖に暑苦しい奴らの多い土地だ。中央にでかい闘技場があってトーナメントとかしてるな。いろんな種族に会えるから、初めて行くと案外楽しめるかもな」
「闘技場…………」
テラが土色の半袖シャツとブラウンの膝丈スカートで呟く。彼女の目が少し輝いてる。目的地のアスカリは北方の地方都市だ。ルナリスから北にあるからかなり寒い。だが、温泉や火山もあるらしく、観光名所として人気らしい。温泉か……みんなで入るのも悪くねえな。俺は馬車に揺られながら、アカンサの言ってたことを思い返す。アスカリに帰るってことは、あそこに立ち寄りたいな。
馬車移動で一日が過ぎ、道中にある最初の街にたどり着いた。グラシアって村はそこまで大きくねえが、滞在するには十分だ。馬車から降りると、俺たちは荷物を整理して宿に向かう。
「乗り疲れたしな…………お嬢さん? 宿はどうするんだ?」
俺がアカンサに尋ねると、彼女はこちらを一瞥した。
「あたくしが用意した宿がありますわ…………部屋数は私一人と女性用の部屋を二つ、そしてアクイラが一部屋でよろしかったかしら?」
うーん、まあ俺はいいけどな。ルーナを見ると、少し悲しそうな顔をしてる。そりゃそうだ。ルーナは俺と寝たいだろうから。俺と離れるのが嫌なのか、彼女のしがみ付きが強くなった。可愛い奴だ。俺はルーナの腰に手を回し、スカート越しに尻を軽く叩いてやった。彼女は顔を赤らめて俺に寄りかかる。
この村で何をしようか。ルーナは俺と一緒にいる気満々だ。セレナは村の周辺を見て回りたいらしく、テラもそれに付き合う。リーシャはグレーの長袖シャツと黒い膝丈スカートで、村の特産品を見たいって言ってた。エリスは深緑色のシャツとカーキ色の膝丈スカートで、リーシャに付いていくらしい。アカンサの予定は聞いてねえ。どうせ明日まで顔を合わせねえだろう。俺はルーナの手をそっと握る。
「アクイラはこれからどうしますの?」
まさかアカンサが俺に聞いてくるとはな。俺はどうするか決めてねえ。
「俺はルーナと一緒に適当に回っておく」
「ではあたくしもご一緒いたしますね。情報収集は傭兵の基本ですから」
アカンサが俺の腕にしがみつき、体を密着させてきた。柔らかい胸が当たって、俺の理性が少し揺らぐ。ルーナが慌てて俺から引き離そうと間に入る。アカンサの奴、遊んでやがるな。アスカリにいた頃からそうだ。気に入った玩具を壊れるまで弄ぶサディストだからな。
「アクイラさんは私のもの!」
「あら? お子様にはまだ早いわ!」
アカンサがルーナを挑発する。こいつ、ルーナを気に入ったんだな。だから俺に近づいて遊んでるんだろう。昔からこんな奴だった。
「子供じゃない!」
ルーナがムキになって言い返す。いつものことだ。感情が表情に出やすいのが可愛いとこだが、アカンサに「子供」って連呼されてる。確かにルーナの依存っぷりは子供っぽいが、体は立派な大人だ。
「私は大人、アクイラさんのお嫁さん!」
「貴女がお嫁さぁん? お子様ねぇ?」
アカンサがクスクス笑う。俺はそろそろ止めなきゃ収拾が付かねえ。
「何が狙いだお嬢さん」
アカンサの狙いはどうせ俺たちで遊ぶことだ。伯爵令嬢とはいえ、無理に逆らう気はねえ。
「何って、その方が面白くてよ」
ああ、こいつは本当にそれ以上の理由がねえんだな。俺はルーナの頭を撫でてやると、少し機嫌が良くなったみたいだ。でも、アカンサへの威嚇はやめねえ。そういうとこが子供って言われるんだぞ、ルーナ。
結局、俺は両手に花状態で村を回ることになった。まあ、今のターゲットはルーナだし、俺は美少女二人を引き連れてるだけだ。
「アクイラさん、これ美味しい」
ルーナがフルーツタルトを食べて、俺に差し出してきた。甘い香りが漂う。俺が一口かじると、アカンサが質問してきた。
「貴方、甘いものは苦手ではなくて?」
「えっと…………」
「え?」
ルーナと生活するようになって、彼女はよく自分の好きなものを俺に分けてくれる。俺は嫌な顔せず食べてたが、アカンサの指摘通り、甘いものは苦手だ。
「どうして?」
ルーナが不思議そうに聞いてくる。仕方ねえな。俺は理由を話すことにした。
「…………だってお前が喜ぶから」
今、これ以上なく恥ずかしい。顔が熱くなってる気がする。ルーナも顔を赤らめ、アカンサは最高に楽しそうに笑ってやがる。
「あらあら、お熱いですこと」
俺はアカンサを睨みつけた。こいつに構ってると疲れるな。まだ街を回るのか? もう宿で寝ててもいいか? 俺たちはまた歩き出す。すると、アカンサが何かを見つけたらしい。
「あら?」
「どうした?」
「あれは……珍しいわ」
アカンサが見つけたのは手工芸品の店だ。確かに珍しい。あまり見ねえジャンルの品揃えだった。木彫りの動物や刺繍入りの布製品が並んでる。
「寄ってみましょうか?」
アカンサの提案で、俺たちは店に入った。そこには小さな動物の置物、首飾り、刺繍が施されたハンカチなんかが並んでて、どれも可愛い。ルーナが目を輝かせて見ていく。どうやら可愛いものが好きらしい。
店員が近づいてきた。三十代前半くらいの女で、愛想よく話しかけてくる。
「あらいらっしゃい」
「これは良い品揃えですわね」
「そうでしょう? うちの村は手工芸品を売りにしてるんですよ」
アカンサが商品を手に取ってルーナに見せる。すると、何か思いついたように口を開いた。
「アクイラ、これをプレゼントしてあげてくださいまし?」
「え?」
俺は思わず聞き返す。アカンサが耳元で囁いてきた。
「ルーナさんが喜ぶと思いますよ」
「どういう風の吹き回しだ?」
「あら、アクイラが喜ぶ顔を見るのも悪くないと思っただけですわ」
正気か? アカンサから出る言葉じゃねえ他人への気遣いだ。俺はため息を吐いて、ルーナに商品を見せた。
「どれが良い? 気に入ったものを選べ」
ルーナが嬉しそうに目を輝かせて選び始める。どれも可愛いもんばっかりだ。
「これ!」
ルーナが指さしたのは、小さな鳥が彫られたブローチだ。俺はそれを取って、彼女の手のひらに乗せる。なんの鳥だこれ? 鳥が好きだったとは知らねえ。もっと兎とか選ぶと思ってた。
「これが欲しいのか?」
「うん!」
ルーナが嬉しそうに笑う。アカンサはその様子を微笑みながら見てやがる。こいつ、信用したら裏切るんじゃねえか? 俺はブローチを買ってルーナに渡した。彼女は喜んで胸につける。確かに可愛いが、それだけが目的じゃねえだろ?
アカンサはただついてきて笑ってる。正直不気味だ。結局、この後は何もなく、アカンサの本当の狙いは分からなかった。よく考えりゃ、こいつは自分が楽しいと思ったことを純粋に選んでるだけだ。気にしないことにした。
翌朝、俺たちは冒険用の衣装に着替えた。長旅に備えて動きやすい服だ。ルーナは青いチュニックと白いフレアスカート、セレナは緑のシャツと茶色の膝丈スカート、テラは赤いチュニックと黒のフレアスカートだ。リーシャは深緑のブラウスと黒いスカート、エリスは水色のシャツと白い膝丈スカートで準備万端。アカンサは緑の長袖チュニックとダークグリーンのスカートに着替えてた。俺は荷物を確認し、馬車に乗り込む。
「次はもっとでかい街だな。準備はいいか?」
みんなが頷く。馬車が動き出し、アスカリへの旅が再開した。
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