第3章12話 翠
大量に現れた偽フェリシアスは、ここで魔法を詠唱する前衛が炎の鎧を展開し、後衛が炎弾を連射してくる。魔力量も魔将並みだな。こいつら、一体一体が厄介すぎる。まるで本物のフェリシアスが何十人もいるみたいだ。
「流れよ、清らかな水の塊よ。相手に落ち注ぎ、その力を示さん。水塊落下」
「水よ、我が呼び声に応えて波を起こせ。波紋生成」
ルーナとネレイドさんが同時に大量の水を召喚できる魔法を詠唱し、炎弾を次々と消火していく。ルーナは淡い水色のオフショルダードレスを着てて、胸元が少し開いて柔らかな谷間がチラチラ見える。裾は膝上まででふわりと広がり、白いローヒールサンダルから覗く細い足首が色っぽい。腰に巻かれた銀のチェーンベルトが揺れるたび、俺の視線を引っ張る。ネレイドさんは青いショート丈ブラウスに黒のタイトスカート、黒の編み上げブーツだ。ブラウスは汗で濡れて張り付き、黒いブラの輪郭が浮かんでたまらねえ。
「大地よ、我が手に金属を集め、剣を創り出さん。金属創刀」
治療を終えたテラも詠唱し、剣を展開するとフェリシアスに斬りかかる。彼女は赤いオフショルダートップスに黒のフレアスカート、黒のロングブーツだ。トップスは肩と胸元を大胆に露出してて、汗で濡れた肌が鍛えられた筋肉を際立たせる。だが、テラの攻撃は偽物のフェリシアスにガードされた。そこに俺が飛び込み、鎧をまとった回し蹴りを放つが、それも偽物だ。
「炎刃煌」
偽フェリシアスか本物のフェリシアスか分からないそいつが、剣に炎を灯して俺に斬りかかってくる。慌ててその部位に鎧を展開するが、衝撃までは防げなかった。熱と衝撃が俺の体を揺らし、地面に膝をつきそうになる。
テラも俺に当たらないよう慎重に剣を振るうが、結局俺の手前のフェリシアスも偽物だった。
「くそ! また偽物か!?」
怒りに任せて、俺は偽フェリシアスの残骸を殴り飛ばす。拳が当たると炎が弾けて破片が飛び散るが、それもフェリシアスの偽物だ。すぐに修復され、俺の前にまた大量の偽物が現れる。こいつら、まるで蟻みたいに湧いてくるな。
「喰らえ! 炎よ、我が銃から放たれん炎弾、敵を焼き尽くせ。火炎弾発射」
発射された炎の弾丸が俺を狙い続ける。空気が熱くなり、視界が揺らぐ。
「くそ……面倒だな!」
炎弾はルーナとネレイドさんが上手く防いでくれている。ルーナが水の塊を落とすたび、ドレスの裾が跳ねて白い太ももが露わになり、淡い水色のショーツがチラッと覗く。彼女が「ん……」と小さく呟きながら集中する姿に、俺の下半身が反応しちまう。ネレイドさんの波が炎を消すと、スカートが水しぶきで濡れて張り付き、黒いパンティラインがくっきり浮かんでくる。忍者らしいしなやかな動きがエロすぎる。だが、それでも無限に復活する偽物の壁を超えるのは厳しい。それに、元となるフェリシアス自身も強いのか。そういえば、フェリシアスが鏡の魔族を殺して肉を食ったんだっけ……つまり、鏡の能力を攻略してるってことか。
「鏡よ、我が剣を宙に広げ、敵を切り裂け。鏡剣展開」
フェリシアスの周囲に鏡製の剣が無数に展開され、それらが襲い掛かってくる。あの剣は水じゃ防げねえ。鋭い刃が空気を切り裂き、俺たちに向かってくる音が耳に響く。仕方ない、取っておきだったが呼ぼう。
「今だ! 撃て!!!」
俺が叫ぶと、宙の剣が全て撃ち抜かれた。鋭い銃声が戦場に響き、鏡の破片がキラキラと落ちていく。そこには誰もいない。だが、この戦法を使うのは一人しかいねえだろう。
「まさか……イオン?」
テラがいち早くイオンの存在に気付く。彼女の声が少し震えてる。俺は昨日、ギルドでイオンに飯代を渡す際、多めに渡してた。その時、あえてイオンの手に余分な小銀貨を叩きつけたんだ。イオンはそこで頷き、その後、公衆浴場まで来て再度合流。今日の計画を事前に伝えておいた。
イオンは未だに声も姿も見せねえ。しかし、見えない相手がいるって情報はフェリシアスにとって不利だ。動きが鈍るはず。だが、フェリシアスは今までと変わらず特攻してくる。偽物の数もまだ増えていく。こいつ、頭おかしいんじゃねえか?
「アクイラぁ、もぉ、限界!」
セレナが叫ぶ。彼女は緑のクロップトップに茶色のフレアスカート、軽い編み上げブーツだ。トップは肩と腹を大胆に出してて、胸の下で結ばれてるのがエロい。魔力切れで息が上がってるらしく、送風が弱まってくる。それが終わり始めると、俺の炎は蒼から赤に戻っちまった。
蒼炎焔の鎧だったからこそ優勢だった戦場が、一気に劣勢に傾く。前衛にいた俺も魔力消費を抑えるため鎧を部分展開してたせいで、二方向からの攻撃を防げなかった時、テラが俺の盾になった。
「テラ!!!」
「…………アクイラ…………無事?」
テラは呼吸がままならねえ様子だ。胸元が裂けたトップスから赤いブラが露出している。彼女が俺をかばった瞬間、偽物の剣が彼女の肩を掠めて、血が滲んでる。ルーナが慌てて駆け寄り治療に専念する。ついに炎弾を防げるのはネレイドさんだけになっちまう。
「ああ、大丈夫だ。それよりお前は……」
「平気…………僕…………頑丈。知ってるでしょ?」
「ああ、知ってるよ」
テラの声が弱々しいが、俺への信頼が感じられて胸が熱くなる。広範囲の攻撃が必要だ。しかし、範囲攻撃ができるルーナとネレイドさんの魔法は蒸発させられちまう。もっと爆発力が欲しい。
「…………せめて…………僕の魔法…………アクイラに…………大地の力よ、我が身を強固なものとならしめよ。土身硬化」
テラの土身硬化は本来自分に纏う力だが、その対象を俺に変えることで、彼女の体を覆ってた金属の粒子が俺に集まってくる。粒子がキラキラと光りながら俺の体に絡みつき、炎の鎧に異変が生じた。
「これは…………翠?」
なんと炎焔の鎧が赤から翠に変わった。通常時と違って、炎が弾けてる。まるで爆発するみたいに勢いよく噴き出すんだ。
「…………テラ! そのまま俺にその魔法をかけ続けてくれ! 弾けろ翠炎焔の鎧!!!」
噴射した拳の炎は直線じゃなく爆散していく。偽フェリシアスたちが爆破に巻き込まれ、どんどん破片になっていく。緑色の炎が戦場を埋め尽くし、偽物の鎧が砕ける音が響き渡る。
「さあ第二ラウンドだ、半人魔将フェリシアス!!!」
「いいねぇ!! お前は鏡剣魔将以来の強敵だ! 認めてやるよ!!!」
フェリシアスの声が戦場に響く。周囲に鏡の剣と炎弾が飛び交い、偽フェリシアスが炎の剣を持って襲い掛かってくる。鏡の剣はイオンが、炎弾はネレイドさんが対処を続けてくれる。俺は周囲の偽フェリシアスを次々と爆破していく。
偽フェリシアスが左右から斬りかかってきた。俺は脚の裏を爆破させ、垂直にジャンプ。偽物同士が斬り合い、鏡の破片が飛び散る。それを爆破でさらに飛ばし、周囲の偽フェリシアスに突き刺してやった。破片が偽物の体を貫き、崩れ落ちるのが気持ちいい。
今度の偽物は三体がかりだ。二体が左斜め前と右斜め前から炎弾を発射し、もう一体が剣を振りかぶる。両手に翠の炎を展開し、クロスして剣を受け止め、前方に押し出す。そのまま正面の偽フェリシアスを破壊すると、爆破を利用して回し蹴りを繰り出し、左右にいた炎弾を発射した偽フェリシアスを蹴り飛ばす。地面が震え、偽物が粉々になる瞬間がたまらねえ。だがその時、空中に展開された鏡の剣が俺の頭上から降り注ぐ。
降ってきた鏡の剣を見て、どうしようか一瞬躊躇う。鋭い刃が俺の頭を狙って落ちてくる。どう対処する?
「声よ、我が意思に応えて弾丸となり、響き渡れ。声弾化!」
ほとんど聞き慣れねえその声を聴いたのは、姿を消す詠唱以来だ。姿を現したイオンから魔法が展開され、鏡の剣や偽フェリシアスを一掃していく。声が弾丸みたいに飛び、偽物が次々と砕ける。イオンの灰色のロングコートが風に揺れて、クールさが際立つ。
イオンが姿を現した瞬間、セレナが何かに気付いたみたいだ。彼女が魔法を再度実行する。
「風よ、我が周囲の脈動を感知せよ。風脈感知…………いた…………あそこだ」
セレナは風を使い、一点に木枯らしを起こす。彼女が風を操る瞬間、フレアスカートが強風でめくれ上がり、薄緑のレース付きショーツが丸見えなってしまう。
「うわっ!?」
セレナが驚きながら手を押さえる。そこには誰もいねえが、姿を消す能力は鏡にもあったみたいだ。
「弾けろ!! 翠炎焔の鎧!!!」
俺はその場まで炎を噴射して接近し、爆裂する飛び蹴りを指定地点に決めると、鏡が割れて本物のフェリシアスが現れた。黒と赤の軽鎧が砕け、血が滲む。俺はそのまま爆裂する蹴りで貫いてやった。翠の炎がフェリシアスの体を焼き、地面に叩きつける。
「…………ん…………あぁ…………終わったのか…………あ、ああ。今度こそ…………死ぬんだな」
「もう変なもん食うんじゃねえぞ」
「…………そ…………だな…………魔族の意思があっても…………人間…………やめられなかったわ…………」
そのままフェリシアスは絶命した。俺はずっと魔法を展開してたせいで、意識がここで途絶える。目の前が暗くなり、地面に倒れ込む。
カイラさん…………どこ?




