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炎焔の鎧  作者: なとな
第3章 祝福の証
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第3章10話 作戦開始

 あの後、俺はテラにもイオンにも何も言えなかった。適当にごまかしたが、テラは何か気付いてるかもしれない。昔の彼女ならもっと鈍かった気がするけど、一年で随分鋭くなったもんだ。イオンはわからない。無言でじっとこっちを見てただけだ。だから俺はイオンに飲み代を手渡してその場を離れることにした。

 イオンは手渡された小銀貨の枚数を確認して頷く。こいつ、ほんと感情が読めねえな。ギルドの喧騒が背中に響いてくる中、酒と汗の匂いが鼻につく。

 今回の接触は、テラとイオンの二人に不審がられるのが目的でもあったからだ。

 本当はゆっくり進めていくつもりだったが、テラが思った以上に勘が鋭くて助かった。

 宿に戻るとルーナが俺に気付いて飛びついてきた。今回の件で俺は一人行動を多くしていたせいか、ルーナは会うたびに抱き着いてくる。可愛いやつだ。彼女は今日、淡い水色のオフショルダードレスを着てて、裾が膝上まででふわりと広がってる。胸元には小さな星の刺繍が散らばってて、柔らかい生地が彼女の幻想的な雰囲気を引き立ててる。足元は白いローヒールサンダルで、銀髪が肩まで流れて風に揺れる。腰に細い銀のチェーンベルトが巻かれてて、ちょっとしたアクセントだ。


「そういえばセレナはどこに行ったんだ?」


 ルーナは首を傾げた。


「…………?」


 わからないのだろう。彼女はセレナとも仲良くできてはいるが、まだ距離を感じる。

 彼女の中では特に俺に依存していて俺他に親しい順番はカイラさん、エリス、リーシャ、セレナ、その他知り合いって感じだ。ルーナの柔らかい体が俺に密着してて、その感触が心地いい。


「アクイラさん……私より……他の女」


 ルーナは不満そうに言う。彼女は嫉妬深いのだ。だが可愛いものだ。俺は彼女を抱きしめて頭を撫でると機嫌が良くなり始めた。ルーナは身体接触が一番安心するんだろう。銀髪が指に絡まって、彼女の甘い香りが鼻をくすぐる。

 ルーナはまだ俺が自分よりほかの女を気にすると不機険になる。唯一、カイラさんの時だけは機嫌悪くならなかった。

 ルーナの中でカイラさんだけは他の女性でも家族認定されているのかもしれない。俺にとってもカイラさんは特別だが、今は目の前のルーナが可愛すぎて頭が一杯だ。

 そこへセレナが帰ってきたので、宿で二人に話をすることにした。彼女は緑のクロップトップに茶色のフレアスカートを履いてて、足元は軽い編み上げブーツだ。トップは肩と腹を出してて、胸の下で結ばれてるのが目を引く。スカートは膝丈で、動きやすそうな生地が彼女の狩人らしい活発さを強調してる。茶色の髪を緩く結んでて、風に揺れるたびに可愛さが溢れてる。部屋に入ると、木製の床が少し軋む音がして、窓から差し込む夕陽が二人をオレンジに染めてた。


「セレナ、ルーナ明日はついに作戦決行しようと思う」


 セレナが目を輝かせて答えた。


「わかった! アタシは何をすればいい?」


 ルーナも静かに言った。


「私も…………」


 セレナとルーナは真剣に話を聞いている。ルーナのドレスの裾が膝に少し乗っかってて、白い太ももがチラッと見える。セレナのクロップトップの下から覗く腹が引き締まってて、俺の視線を引きつける。


「ルーナはいつも通りで大丈夫だが、対人戦を想定していてくれ」


 俺がそういうと、ルーナは頷く。


「ん…………」


 彼女の水魔法は対人戦でも頼りになるからな。


「セレナは感知魔法で常に周囲を警戒し、イオンが消えたら誰にもばれないように俺に合図をしてくれないか?」


 セレナが笑顔で答えた。


「できるよ。じゃあやっぱり偽物が分かったんだね?」


 俺は返事をする。


「ああ、ばっちりだ」


 今回のイオンの遺体発見後もなおイオンが傭兵として活動できている件の真相がわかった。魔族のコピー能力だ。遺体現場の調査とテラとの接触で確信したよ。唯一わからないことは…………テラが何故イオンとパーティを組んでいるかだ。

 …………まあそんなことはどうでもいいか。二人と一緒に街にある大衆浴場に向かい、二人が女湯の方に入ることを見送った後に俺は呟いた。


「明日は頼む。このことを貴方から聖女様に伝えてくれ」


 振り返ると、後ろには誰もいなかった。

 俺は風呂から上がると、二人と合流し宿に戻る。食事を簡単に済ませ、そのまま寝ることにする。こうしてみてると、ルーナとセレナ…………仲が悪い訳じゃないんだけど、やはり俺がセレナを優先すると彼女は嫉妬心で対抗するところはまだあるみたいだ。

 翌朝、俺たち三人はギルドに向かい依頼掲示板を眺めていると俺に声をかけてきた人がいた。


「アクイラ君ではないか」


 そこにいたのはネレイドさんだった。彼女と一緒にいたのはイオンの遺体発見者でもあるフェリシアスさんだった。


「おお! 兄ちゃんか! どうだ? 一緒に依頼に行かないか? さっきそこの姉ちゃんに誘われてな!」


 そういってフェリシアスさんはネレイドさんを指さした。ネレイドさんは頷くだけだ。俺はギルド内を見渡すと目的の人物を見つけた。赤い髪の女性の傭兵を見つけ、近づいて声をかけた。


「よ! テラ! お前もどうだ?」

「アクイラ…………そうだね、今日は…………イオンもいない。ついていくよ」

「そうだなアイツはいねえ」


 俺の言い方にどこか引っかかったのかテラは首を傾げた。

 俺たちは六人ということで大型の魔獣依頼を探すことにした。今回のターゲットはグレイエレファントスという象のような魔獣で巨大な身体の割には高速で移動し長い象牙を突き刺したり、薙ぎ払いに使用してくる化け物だ。

 六人がかりでようやく討伐申請が通る凶暴な魔獣だ。


「よし、じゃあ行くぞ」


 俺たちはギルドを出るとすぐに準備を始める。そしてグレイエレファントスが暴れて街や森に被害が出る前に討伐しに行った。

 現場に着くと既にグレイエレファントスは大暴れしているようだ。巨大な魔獣が咆哮を上げると地面が大きく揺れ動き始めたのだ。


「おいおい! こりゃないぜ!」

「常に暴れていると聞きます。落ち着いて対処しましょう」


 そういったネレイドさんは先頭に立った。彼女の二つ名は波濤の影忍、水の魔法と一部の民族が継承する忍術と言われる技を複合した技を使う。


「水よ、我が呼び声に応えて波を起こせ。波紋生成ウェーヴ・クリエーティオ!」


 ネレイドさんが大地をたたくと突然水があふれ出てそこから巨大な波が発生し、グレイエレファントスに襲い掛かる。その波の中にネレイドさんは紛れ込むと、手にしたかぎ爪でグレイエレファントスに斬りかかる。


「俺たちも行くぞ!」


 俺がそういうと、ルーナ、セレナ、テラが俺と一緒に詠唱を始めた。


「炎の守護、我が身を囲みて鎧となれ。炎焔の鎧(エンフレクス・アルマ)!」

「流れよ、清らかな水の塊よ。相手に落ち注ぎ、その力を示さん。水塊落下(スプリペルカット)

「風よ、我がボウガンの矢に加わり、疾風となれ。疾風矢付与ラピデウス・フラクトゥス

「大地よ、我が手に金属を集め、剣を創り出さん。金属創刀(メタルクリエイティオ)


 俺は火を纏い、ルーナは水の塊でグレイエレファントスを押しつぶそうとする。セレナも風魔法を付与したボウガンの矢を発射し、柔らかい部位を貫通させていく。テラも大剣を生成し、攻撃に参加してくれた。

 フェリシアスさんは剣と銃を使い、ヒット&アウェイ戦法で戦っている。


「とどめだ! 喰らいやがれ!」


 俺は全身に炎を纏い、グレイエレファントスの頭上まで飛ぶ。そして落下しながら全体重を乗せた一撃を叩き込んだ。その一撃でグレイエレファントスは倒れたのだ。

 その時だった。セレナが俺の服の裾を掴む。

 イオンが来たようだ。

四人同時詠唱ってなんかいいよね。

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