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炎焔の鎧  作者: なとな
第3章 祝福の証
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第3章8話 策略

 地の聖女とのデートが終わり、館に戻るとすぐに俺の腰にルーナが絡みついてきた。腰装備のルーナは若い女の子の柔らかさを持ち、触れるだけで疲れが癒えるようなヒーリング効果がある。館のテラスから見える森の緑が朝陽に照らされ、石畳の床が少し冷たい。


「待たせたなルーナ」

「ん。すごく待った」


 ルーナは素直だ。自分の欲求をこれでもかと体すべてを使って表してくる。彼女の柔らかい胸が俺の脇腹に押し付けられ、甘い香りが漂ってくる。もちろん、俺は問題ないが、視線が痛いときはあるな。館のメイドさんたちがチラチラ見てくるのが分かる。


「ベラトリックス様旦那様、お帰りなさいませ。もうすぐ昼食のお時間になりますので、食事をされてからテミスの街にお戻りください」


 メイドさんたちが出迎えてくれる中、俺たちは部屋に戻っていった。黒いドレスに白いエプロンを重ねたメイドさんたちが、丁寧に一礼してくる。ところで「旦那様」って呼び方おかしくないか? メイドさんに案内されて客室に向かうと、部屋はすでに整えられてて快適な環境になってた。木製の床にふかふかの絨毯が敷かれ、窓からは柔らかい光が差し込んでくる。俺はソファに座って一息つく。ソファの革が少し軋む音がして、俺の体が沈み込む。膝下まである革ブーツが足音を響かせ、薄い防塵マントを肩に掛けてる。右手首にはカイラさんからもらった炎の紋様が刻まれた革バングルが光る。

 セレナは俺から離れて窓際のテーブルセットの椅子に座る。彼女は緑のノースリーブトップに茶色の膝丈スカート、膝下のレザーブーツだ。トップには葉の刺繍が施され、自然な雰囲気を漂わせてる。そして俺の隣にルーナが座った。ルーナは青いシルクのブラウスに白い膝丈スカート、白銀のショートブーツを履いてる。ブラウスは袖が長く、星の刺繍が幻想的で、スカートは軽やかだ。彼女は俺にくっついてきて言った。


「アクイラ、お疲れ?」

「ああ疲れたよ」


 俺がそう言うと、彼女は微笑んで上目遣いで見つめてきた。その仕草が可愛らしいので、つい頭を撫でてしまった。ルーナは気持ちよさそうな顔をして、目を細める。しばらく撫でた後、手を離すと、彼女は少し残念そうな顔をしたが、すぐに機嫌を直したようだ。


「アクイラ様」


 俺とルーナの間にベラトリックスが入ってきた。俺は少し横にずれると、彼女が隣に座ってくる。ベラトリックスは赤いシルクのブラウスに黒の膝丈スカート、黒のローヒールだ。ブラウスは胸元に金の刺繍が施され、聖女らしい威厳を漂わせてる。彼女は俺の肩に頭を乗せてきた。ふわりと甘い香りが鼻腔を刺激し、柔らかい感触が肩に伝わる。特に意識せずに対応したが、彼女の距離感は少しおかしいなと思うことはある。でも、不快じゃないし、別に良いかと思ってる自分が怖い。


「アクイラ様」

「なんだ?」

「協力の件ですが、謹んでお受けいたします。必要なことがありましたら、何なりと…………何でもします」

「なんでもか…………」


 俺は一瞬、彼女の胸元やスカートの裾に目が行く。赤いブラウスが胸の形をほのかに浮かび上がらせ、スカートの裾から白い太ももが覗いてる。でも、今回は欲を抑えて礼を言った。


「ありがとな」

「ええ、お待ちしております」


 イオンとの戦いに備えるには、彼女の協力が必要だ。食事の時間になり、食堂に移動する。食堂は広い石造りの部屋で、長い木製テーブルに豪華な料理が並んでる。俺はベラトリックスにお願いごとをして、テミスの街に戻ることにした。

 昼過ぎになり、俺とルーナとセレナの三人はテラやイオンを探すが、街は大きくて見つかりそうになかった。石畳の道を歩き回り、市場の喧騒や傭兵ギルドのざわめきを聞きながら探したが、その日は二人に会うことはできなかった。仕方なく宿に戻り、テラとイオンの二人組に会えたのはそれから数日後のことだった。

 宿の窓から朝陽が差し込む日、俺たちは傭兵ギルドに向かった。ギルドの木製テーブルには酒の染みが残り、壁には依頼書が雑に貼られてる。そこにテラとイオンがいた。


「アクイラ……まだいた」

「ああ久しぶりだな。テラ、イオン」

「…………」


 テラが俺に話しかけてきた。正直、そろそろ接触したかったから助かった。イオンは相変わらず何も喋らない。声に出されないことで何を考えてるかわからないものだ。


「まだいた」

「え? 何それ帰れって言ってる?」

「…………違う」


 テラもなかなか気持ちを伝えるのが下手だ。二度も「まだいた」と言われたら傷つくじゃん。まあ、良いけど。イオンはこちらを見てるから、無視されてるわけじゃないことだけはわかる。最初から疑って見てたせいか不穏だ。元々こういう奴なら仕方ないのか。


「イオン、あんたとは二度目だったな。どうだ? また一緒に依頼に行かないか?」

「…………」


 イオンは返事しないが、頷く。了承ととらえていいのだろう。なんとなくこいつとのコミュニケーションの取り方はわかってきた。できれば、生前に会いたかったものだ。俺はテラとイオンに今度一緒に依頼に行く約束だけして、その場を離れた。

 翌日、俺はイオンの遺体発見現場に向かうことにした。地の聖女にイオンの遺体の第一発見現場と第一発見者を連れてきてもらった。同行したのはネレイドさんと、イオンの遺体の第一発見者である傭兵だ。ネレイドさんは青いタンクトップに黒の膝丈スカート、黒のロングブーツを履いてる。タンクトップには波の模様が施され、腰に革ポーチが揺れてる。第一発見者の男は赤髪で、黒のレザージャケットに灰色のズボン、ゴツいブーツだ。腰に剣と銃を携えてて、騎士風の雰囲気がある。現場は森の中の開けた場所で、地面に枯れ草が広がり、木々の間から陽光が漏れてる。


「現場はここだ。他に聞きたいことは何だ?」

「ここにイオンの遺体があったんだな?」

「そうだぜ」


 フェリシアスさんはそう言って、倒れてた場所や遺体の状態を教えてくれた。地面に血の跡が薄く残り、草が乱れてるのが見える。彼がどうやって本人確認したか、遺体の損傷が激しかったこと、時間帯や死亡推定時刻についてもいくつか質問してみた。


「そういえば、フェリシアスさんはイオンと知人だったんですか?」

「いんや知らねーよ?」

「じゃあなんでイオンさんってわかったんですか? あ、傭兵証を見たとか? イオンさんは…………俺と同じ色でしたよね?」


 俺は自分の傭兵証を見せてやると、フェリシアスさんはニコリと笑う。


「ああ、そうさ! その色の傭兵証を見て確認したのよ!」

「…………なるほど」

「ありがとう、ネレイドさん、フェリシアスさん。…………やっぱりよくわかりませんでした。せめてどんな奴が殺したかわかればよかったんだけど」

「いえ、送迎は聖女様のご命令ですので」

「俺も傭兵仲間の不審死を放置できねえ。わからないことがあればいつでも手伝うぜ」


 フェリシアスさんは好青年のいい男って感じだ。赤髪が風に揺れ、笑顔が爽やかで頼もしさがある。ネレイドさんも頼れる先輩って感じで、冷静な目つきが印象的だ。フェリシアスさんには「魔族」という言葉を濁してそういった事件があると伝えてるから、あまり協力をお願いしにくい。ただの第一発見者でしかない彼も一応は傭兵だ。


「ええ、今度よろしければ一緒に依頼に行きましょう」

「任せな!」「私の方も機会があれば」


 え? ネレイドさんは依頼じゃなくてもご一緒したい。彼女のブーツが地面を軽く叩く音が響く。さてと、そろそろルーナが寂しがる頃だし、テミスの街に戻るか。馬車に乗り込むと、木の軋む音が心地よい。

 街に戻ると、ルーナはすぐに俺にしがみついてきた。宿の入り口で彼女が飛びついてくる勢いに少しよろける。


「いやぁアタシもそこまではできないわ。でも腕は借りるよ」


 そう言ってセレナも腕にしがみついてきた。基本装備だ。ルーナは俺の腰に、セレナは左腕に絡みつき、馬車から降りたばかりの俺を包み込む。フェリシアスさんは先に降りてたが、ネレイドさんはこの光景を見て何も言わない。もう見慣れたのだろう。セレナの腕は自由が利かないが、ルーナの方は腰にしがみついてるので手が動かせる。俺はルーナの腰に手を回すと、彼女は嬉しそうに体を擦りつけてきた。柔らかい感触が伝わり、スカートの裾が少し揺れる。


「じゃ、ネレイドさん。聖女様によろしく」

「ああ、また近いうちに会うことになるだろう」


 そう言ってネレイドさんは馬車で聖女様の元に向かったのだろう。一応、気になる点は彼女に伝えた。馬車が石畳を走り去る音が遠ざかる。

 後は…………魔族側がちゃんと動いてくれるかだな。傭兵ギルドに向かうと、イオンとテラがいた。ギルドの喧騒が耳に響き、酒と汗の匂いが漂ってくる。


「よう!」

「アクイラか」

「…………」


 やっぱり返事をくれるのはテラだけで、イオンは何も言わない。俺はイオンの隣に座る。イオンは食べていたつまみの皿を俺に差し出した。木の皿に並んだ干し肉が少し揺れる。


「食べていいのか?」


 俺がそう尋ねると、イオンは頷く。こいつなりのコミュニケーションだろう。テラはそんな俺たちを眺めて呟いた。


「アクイラ…………僕らに構う理由は…………何?」


 テラがそう言った。恐らく俺の目的が見えてこないのだろう。特に彼女は昔の俺を知ってる女だ。一年前の俺は、初級傭兵ランクサファイアの癖に誰ともパーティを組もうとせず、よく受付嬢のリズさんに小言を言われたものだ。ギルドのカウンターでリズさんが「また一人で依頼受けるの?」と呆れた顔をしてたのを思い出す。

 その時、テラが剣を手に持ったまま立ち上がろうとして、鞘の先が床に引っかかり、バランスを崩した。スカートが跳ね上がり、赤いショーツが一瞬だけ丸見えに。彼女は倒れまいと俺の肩に手を置いて支え、体を捻った拍子に尻が俺の目の前に突き出された。


「っ……!」


俺は彼女の尻をじっくり眺めた。テラはすぐに体勢を整え、スカートを押さえながら俺を一瞥する。顔は微かに赤いが、声は冷静だ。


「アクイラ、忘れなさい。今の」


 イオンは無表情で何も言わず、つまみを口に運んでる。テラの羞恥が場を一瞬静かにしたが、すぐにギルドの喧騒が戻ってきた。

個人的に好きなキャラ一位はカイラさんです。

皆さんの好きなキャラはいますか?

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