第2章14話 人だから 人ならば 人だったら
誰かに名前を呼ばれた気がした。遠くで、でも確かに聞こえる声だ。
「アクイラさん!!!」
「アクイラさん!」「アクイラ!」「アクイラさん!!」
「……ルーナ? セレナにリーシャとエリス……夢か?」
俺は重い瞼をゆっくり開いた。視界に飛び込んできたのは、ルーナ、リーシャ、エリス、そしてセレナの顔だ。俺は冷たい石床に横たわっていて、鎖に繋がれたまま全員を見上げていた。汗と血で濡れた灰色のシャツが体に張り付き、肩と脇腹の切り裂かれた部分から冷気が染みる。黒いベストは肩からずり落ち、腹が丸出しだ。見上げた先で、彼女たちの姿が目に飛び込んできた。ついでに、下着も。
「薄緑、黒のレース、淡い水色に黄色の縞パンか」
「見るのはこの際スルーしておこう。口に出すな」
リーシャが冷たく言い放つ。彼女は隠そうともせず、しゃがんで俺の鎖を外し始めた。濃い茶色の革鎧が汗で光り、袖のない灰色シャツの下から覗く黒のレースのパンツがさらに近くに見える。俺の顔から息がかかる距離だ。ルーナは薄い水色のローブの裾が裂けて太もも近くまで短くなり、薄緑の下着を隠す気配もない。エリスは顔を赤くしてクリーム色のブラウスの下、ダークグリーンのスカートの裾を押さえ、淡い水色のショーツを隠した。セレナは少し離れて、緑のチュニックのスリットから見えていた黄色の縞パンが視界から消えた。仕方ない、目の前で一番よく見えるリーシャの黒レースをじっくり観察することにした。
そのパンツはシルクのような艶があって、サテンの滑らかさも感じさせる。触るのを躊躇うほどの上質さだ。俺は鎖に繋がれた体を引きずり、息がかかる距離まで近づいた。黒いレースのクロッチ部分が目の前で揺れ、微かに汗の匂いが混じる。触りたい衝動が抑えきれなくなった瞬間、鎖が外れた。解放された手が吸い寄せられるように伸び、クロッチをそっと撫でた。
「アクイラ!? 私のパンツを撫で回して何を!?」
リーシャが俺の手を掴んで離そうとするが、俺は無視して何度も撫で続けた。肌触りは最高だ。シルクの滑らかさとサテンのツルツル感が混ざった、しっとりした感触。クセになりそうな感覚に俺は夢中だった。
「こら! ふざけてる場合か! ここは敵陣なんだぞ! あとで! あとでなら相手してやるから!!」
その言葉をしっかり聞き取って、俺は手を引っ込めた。ゆっくり起き上がる。鎖の摩擦でシャツの袖口がさらに擦り切れ、ベストが腹を完全に露出するほどずり下がったが、そんなことはどうでもいい。
「ありがとな、黒のレース!」
「うるさい!」
リーシャが顔を赤くして俺の手を叩く。痛みより彼女の反応が面白くて笑いそうになった。すると、セレナが近づいてきて俺の手を取った。彼女は顔を紅くして目を逸らしてる。
「アクイラさん……その、約束通り助けに来ました……ああいうのは空気を読んで控えるべきかと?」
「ああ、ありがとな、セレナ。でも衝動には勝てねえよ」
どう考えても目の前にパンツがあったのが悪い。セレナの頭を優しく撫でると、彼女は嬉しそうに目を細めた。次に口を開いたのはルーナだった。
「アクイラさん、無事でよかったです」
「ありがとな、ルーナ。ルーナがあの後どうなったか心配だったんだ」
俺がそう言うと、ルーナは笑顔で頷いてくれた。でも、急にその顔が険しくなり、俺の胸倉を掴んできた。
「それはこっちの言葉! アクイラさんが心配だったんです! あの時、私が逆のことをしてたら、貴方だって同じ気持ちですよね!? 分かったらもうこんな無茶はしないでください!」
涙目で叫ぶルーナを見て、俺は言葉に詰まった。あんな穏やかな子がこんな声を出すなんて想像もできなかった。あの時俺が無茶をしなければ、彼女をこんな目に遭わせなかっただろう。胸が締め付けられる思いだ。すると、リーシャが割って入った。
「二人とも落ち着いてくれ。まだ敵地だ」
俺とルーナは互いの顔を見つめ合い、少し顔を赤くした。エリスとセレナが俺たちの間に入り、リーシャがその間に立って場を収めてくれた。俺は立ち上がって、リーシャにお礼を言うことにした。
「ありがとな、リーシャさん」
「……リーシャと呼べ。君は年上を敬ってるつもりかもしれんが、ここまで一緒に来た仲間なのに、私だけ疎外感を感じる」
「じゃあ……ドスケベパンティお姉さん。パンツありがとう」
「おい! なんでそうなる!」
リーシャが顔を赤くして言い返す。俺はそのやり取りが面白くて笑ってしまった。エリスとセレナもクスクス笑ってる。雰囲気が少し和んだところで、リーシャから現状を聞いた。どうやらカイラまでこの集落に来てたらしい。なぜあの人がここにいるのか分からないが、そんなことはどうでもいい。あの人がいるなら、今度こそアウレリウスを倒せる。そう思った時、ふと気になった。あの赤毛の獅子はどこに行ったんだ? 看守だったはずなのに見当たらない。倒されたのか? まあ、いいか。
「俺はもう一度あの魔族、アウレリウスの所に行く。ルーナ、回復してくれ」
「ん。澄み渡る水よ、癒しの泉となりて我が仲間を包め。清泉癒」
ルーナの魔法で、俺の傷がみるみる回復していく。隣でエリス、リーシャ、セレナも傷を癒やしてる。ルーナは心配そうに俺の顔色を窺っていた。
「アクイラさん? もう動いて大丈夫なんですか?」
「ああ、大丈夫だ」
俺がそう言うと、ルーナは少し安心した顔を見せた。俺たちは独房から出ようとしたその時、外から魔獣の咆哮が響いてきた。どうやら集まってきてるらしい。通路の先がざわついてる。
「さて、もうひと働きとするか」
リーシャが槍を構えて提案するが、俺は首を振った。
「悪いな、ここは俺一人で行く」
両手に紅い炎を灯す。通路に集まった魔獣たちへ向かい、腕を払って拳を振り、掴んだ頭部を焼き尽くした。手が届く範囲の敵を殴り、炎で焼き払う。今日は調子がすこぶるいい。魔獣なんて何一つ脅威に感じない。ズボンの裾が焦げる匂いが鼻をつくが、そんなの気にしてる場合じゃない。
「よし、先に進むぞ」
牢屋を出て通路を進む。リーシャが何か言おうとしたが、セレナがそれを止めた。エリスとルーナが俺の後をついてくる。牢を出た時、リーシャが何か叫んでた気がしたが、無視した。遺跡の分かれ道まで来ると、そこは静まり返っていた。複数の魔獣の死体が散乱してる。真っ二つに裂かれた奴、焼かれた奴、様々だ。
奥地へ進むと、そこにはアウレリウスと魔獣の軍団がいた。そして、それに立ち向かう高ランク傭兵たち。前衛にレグルスとエルフの戦士たち、さらにはカイラもいる。戦場は熱気と血の匂いで満ちていた。
アウレリウスの剣は二本に戻ってる。速さが自慢のスピードタイプだが、カイラの方が速い。緑のドレスが翻り、葉模様の刺繍が揺れる。マーレアは淡紫色のシフォン上着を着て、鋏をチョキチョキ動かしてる。何かやってるのは分かるが、何が起きてるのか分からない。
「見てるだけで終わりそうだな」
「そうだな。ただ、まだ底が見えない。あいつ、余裕そうだ」
リーシャが話しかけてきた。俺は同意しつつも、何か引っかかるものを感じる。カイラたちが圧倒してるし、マーレアの能力もすごいんだろう。だが、アウレリウスは余裕の笑みを浮かべてる。油断ならねえな。
その時、突然エルフたちと戦ってた魔獣がカイラに向かっていった。後ろにいた奴らも動き出す。でも、それは無駄だった。カイラが一瞬で蹴り散らし、魔獣が地面に叩きつけられた。すると、レグルスの前に赤毛の獅子が飛びかかってきた。あいつ、あんなとこにいたのか。レグルスの赤茶色のチュニックが汗で濡れ、鉄板が鈍く光る。大剣を薙ぎ払って吹き飛ばそうとするが、獅子は素早い。
戦場の喧騒の中、突然ルーナが悲鳴を上げた。見ると、彼女が通路の崩れた瓦礫に足を取られ、ローブが引っかかって勢いよく裂けた。短くなったスカートが完全に捲れ上がり、薄緑の下着が丸見えに。ルーナは顔を真っ赤にして両手で隠そうとする。
「ひゃあっ!」
エリスが慌ててルーナの前に立ち、ルーナの下着を隠した。俺は肩を竦めて視線を戻した。目の前の黒レースもいいが、薄緑も悪くないな。
戦場に戻ると、「ちょきん」と音が響いた瞬間、レグルスが膝から崩れ落ち、赤毛の獅子に噛みつかれた。レグルスは痛みに耐えながら大剣を振り上げるが、獅子は離れて詠唱を始めた。
「炎よ、我が身を加速させん。炎速加護」
紅い獅子が燃え上がり、レグルスにトドメを刺そうとする。レグルスはよろめきながら立ち上がろうとするが、マーレアが鋏を掲げて詠唱した。
「鋏よ、魔力を断ち切り、我が道を開け。魔力断斬」
その瞬間、レグルスはまともに立てなくなり、獅子の攻撃をモロに食らった。マーレアがレグルスを殺そうとしてるのは間違いない。よろめきながらもレグルスは獅子に向かっていくが、マーレアの鋏が再び動いた。レグルスの体が鏡のように割れて崩れ落ちた。
「何やってるんですか、マーレアさん?」
いくら嫌な奴でも、この状況で同士討ちするメリットはない。何か意図があるんだろうが、理解できなかった。俺の声に、マーレアがゆっくり振り返る。淡紫色のスカートが軽く揺れ、優雅な笑みが浮かんでる。
「いえ、これも仕事ですので。それに、いくら私でも切断した人体を鏡みたいにすることはできませんよ。先ほどのレグルスさんが人間でしたらね」
名前: ミズキ
二つ名: 海銃
性別: 女性
種族: エルフ
年齢: 約350歳
職業: 上級傭兵
所属: 森姫カイラの部下(親衛隊の一人)
武器: 水圧強化銃(水中でも使用可能、魔力を込めた弾丸で遠距離攻撃)
服装: 濃紺色の半袖シャツ(胸元に貝殻装飾、汗で濡れ)、膝丈の薄い水色スカート(裾が波デザイン)、革ベルト(銃弾ポーチ付き)、青みがかった革製ショートブーツ(防水加工)
外見: 銀髪に青い瞳、肩まで伸びた髪が水に濡れたようにしっとり、引き締まった体型
性格: ナルシストで、自分の戦闘能力と美貌に強い誇りを持つ
戦闘スタイル: 水中戦と銃撃を得意とし、流れるような動きで敵を仕留める
特技: 水辺での索敵(水流の変化を感知し、敵の位置を正確に把握)
弱点: 自分の美貌を否定されると冷静さを失い、感情的になりやすい




