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炎焔の鎧  作者: なとな
第2章 偉大な力
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第2章7話 衝突

 話し合いの末、調査班は俺とルーナ、セレナにマーレアさん。防衛班はリーシャさんにエリス、風の聖女様とレグルスさんで決まった。集落の里長の家で全員が顔を揃え、暖炉の火がパチパチと鳴る中、役割分担が決まった瞬間、俺は少し緊張が解けたような気がした。森のざわめきが窓の外から微かに聞こえ、静かな夜の雰囲気が漂っている。

 後に全員で集まり、宿泊先について話し合いになった。宿泊は俺たちが今まで通り民家を使い、風の聖女の家に聖女様とマーレアさん、レグルスさんの三人で宿泊することになった。はじめは風の聖女が「男女で別れたらどうかしら」と申し出てくれたが、男が俺とレグルスさんの二人しかいない状況に加え、ルーナが俺の腕にしがみ付き、離れようとしない様子を見た彼女は、何かを察したように「ああ、なるほど」と呟いて一人で納得していた。彼女の灰色の瞳が一瞬俺とルーナを交互に見つめ、優雅な笑みを浮かべたのが印象的だった。

 そしてレグルスさんだが、彼は一人の女性を見てニヤニヤとしていた。その視線の先にはエリスがいた。彼女はその視線に気付き、「ひっ」と小さく声を上げてリーシャさんの陰に隠れてしまった。エリスの細い肩が震え、長い髪が揺れる様子が妙に愛らしかった。


「おい! なんで隠れるんだよ!」

「だ、だって……」


 レグルスさんが強面の顔をさらに歪めて笑うと、エリスはますます縮こまる。どうやらエリスはレグルスさんが苦手なようだ。まあ、確かに彼は筋肉質で威圧感のある体格に赤い髪、黒い瞳が鋭く光る強面だしな。俺はそんな二人を見て苦笑するしかなかった。マーレアさんはそんな俺たちを眺め、紫色の瞳に微笑ましそうな光を浮かべている。彼女の上品な仕草が、まるでこの騒ぎを遠くから見守る貴婦人のようだった。

 話し合いが続き、時間もつぶれてしまったため、今日は全員で防衛に当たることに。明日の朝から調査開始という方針が決まった。俺は集落の西側の見張り台に向かうと、木製の階段を上り、周囲を見渡した。夕暮れの空が赤く染まり、遠くの森から鳥の鳴き声が響いてくる。見張り台のすぐ近くには小さな小川が流れ、さらさらと水音が静寂に溶け込んでいた。すると、背後から軽い足音が近づいてきた。


「あ、いた!」


 それはエリスだった。彼女は急いで駆けてきたのか、少し息を切らしており、頬がほんのり赤くなっている。その姿が可愛くて、俺は思わず笑ってしまった。彼女の長い髪が風に揺れ、汗で少し額に張り付いているのが妙に魅力的だ。


「どうした? 何かあったのか?」


 俺が聞くと、彼女は首をこくりと縦にうなずかせる。


「あのレグルスさん? ちょっとしつこいというか……その……」

「ああ、まあレグルスさん。強面だしな」


 エリスの言いたいことは分かる。彼は確かに強面で、ちょっと怖い印象がある。それに、さっき彼女の方をニヤニヤしながら見ていたもんな。不快だったのだろう。俺は彼女の困った顔を見ながら、少し同情してしまう。


「でも、私は……あの」


 彼女は少し言いにくそうにしている。俺は彼女の言葉を待つが、なかなか続きが出てこないようだ。彼女の小さな手がスカートの裾をぎゅっと握り、緊張しているのが伝わってくる。すると、エリスが意を決したように俺を真っ直ぐ見つめ、口を開いた。


「アクイラさんはあの人より……好ましいです」

「……ん?」


 俺は思わず間抜けな声を出してしまう。そして彼女はそのまま言葉を続ける。


「でも、あの人には……ちょっとその」


 彼女は顔を真っ赤にしてもじもじしている。俺はそんなエリスを見て微笑むと、彼女の頭に手を置き、優しく撫でた。彼女の髪はサラサラで、手に触れる感触が心地よい。


「ありがとな。俺もエリスは可愛いと思うし、好きだよ」


 俺がそう言うと、彼女はさらに顔を赤くしてしまうが、嬉しそうに微笑んだ後、俺の腕に抱きついてきた。細い腕が俺の服を掴み、少し力を込めてくる。彼女の温もりが近くて、俺は少しドキッとする。


「あの……もう少しこうしててもいいですか?」


 俺は少し考えてから答える。


「……ああ」


 彼女は俺の腕に抱きつきながら嬉しそうに笑っていた。見張り台の木の床が微かに軋む音を立て、風が彼女の髪をそっと揺らし、小川の水音が静かに響く。だがその時、エリスが俺に抱きついた勢いで少し強く動いた拍子に、見張り台の欄干に引っかかっていた彼女のスカートの裾が裂ける音がした。ビリッという鋭い音と共に、スカートが太ももの上まで裂け、薄い布の下に隠れていた白い下着がチラリと見える。


「えっ!? 何!? やだっ!」


 エリスが驚いて声を上げ、慌ててスカートを押さえるが、裂けた布がめくれ上がり、下着が少し見えたまま隠しきれない。俺はその瞬間、彼女の白い太ももと下着の端に目が離せなくなる。


「欄干に引っかかったみたいだ!」

「アクイラさん! 見ないでくださいってば! 恥ずかしいです!」


 彼女の顔が真っ赤になり、怒ったような恥ずかしそうな視線で俺を睨む。その表情が妙に可愛くて、俺は思わず笑ってしまう。エリスは裂けたスカートを必死に押さえようとするが、動きがぎこちなく、太ももがさらにチラチラと見えてしまう。


「さっき、レグルスさんが変なこと言ってきて……だからちょっとアクイラさんの傍なら安心かなって」

「俺は怖くないのか?」


 そう言って、俺は彼女の身体をじっと見た。裂けたスカートから覗く白い肌と華奢な体型が目に焼き付く。


「え? 平気です。それに昔、隷属の刻印がついてた時にあんな姿を見せたこともあるじゃないですか」


 彼女は俺の顔を見つめ返す。少し恥ずかしそうに目を逸らす仕草が愛らしい。


「アクイラさんなら、私……」


 俺は彼女の言葉を聞き終える前に、そっと彼女の頬に手を添えて軽くキスをした。エリスは驚いて目を見開くが、すぐに目を閉じて受け入れてくれる。彼女の唇は柔らかく、ほのかに温かい。しばらくそのままでいたが、やがて彼女が顔を離すと、名残惜しそうに俺を見つめてくる。俺はもう一度軽くキスをすると、彼女が小さく笑って俺の腕に寄りかかってきた。


「ん……嬉しいです」


 彼女は小さく呟き、俺の腕に頭を預ける。俺はそのまま彼女の肩に手を回し、優しく抱き寄せた。彼女の温もりが伝わり、静かな時間が流れる。


「はいはい! お二人ともそこまでにして下さいまし!」


 突然、マーレアさんの声が響き、俺とエリスは慌てて離れるとお互い距離を取った。彼女は見張り台の階段を上ってきており、手には小さなランタンを持っている。マーレアさんは俺たちを見てため息をつくと、上品な口調で続ける。


「お楽しみのところ申し訳ありませんが……アクイラさんは仮眠の時間ですよ? ここは私が代わります。エリスさんはどうされます?」

「す、すみません!」


 エリスは顔を赤くしながら慌てて謝罪する。裂けたスカートを押さえたまま、ぎこちなく頭を下げる姿が妙に愛らしい。俺も頭を下げて謝ることにした。マーレアさんはそんな俺たちを見て、呆れたように首を振る。


「まったく、若い方は元気でよろしいですわね。でも、エリスさん、そのスカートだと動きにくいでしょう。早く着替えてくださいな」


 エリスは自分の裂けたスカートに気付き、さらに顔を赤くしてうつむく。マーレアさんの言葉に小さく頷き、恥ずかしそうにスカートを押さえながら階段を下りようとする。俺はそのやり取りを見ながら、少し気まずい気分になりつつも、マーレアさんと交代して民家に戻ることにした。だがその時、集落の鐘が鳴り響いた。襲撃を知らせる重々しい音だ。俺は即座に民家へ向かうのをやめ、集落の入り口へと走った。

 入り口に着くと、すでにリーシャさんとエリスが到着していた。そしてレグルスさんもいた。エリスはまだスカートが裂けたままで、太ももを隠そうと手を動かしているが、戦闘準備でそれどころではない様子だ。リーシャさんがそれに気付き、眉をひそめる。


「エリス! 何!? そのスカート、どうしたの?」

「う、見張り台で欄干に引っかかって裂けちゃって……」


 エリスが恥ずかしそうに答えると、リーシャさんは俺を一瞥して「何か関係ある?」と鋭い視線を向けてきた。俺は軽く首を振って誤解を解こうとするが、時間がない。


「襲撃か!」


 俺が頷くと、リーシャさんは槍を構える。俺も剣を抜き、戦闘態勢に入った。エリスはスカートを気にしながらも銃を握り、気丈に立ち位置を整える。裂けた布が風に揺れ、時折太ももがチラリと見えるが、彼女の表情は真剣そのものだ。


「来たぞ!」


 レグルスさんが叫ぶと、森から魔獣たちが飛び出してきた。暗闇の中で蠢く影が徐々に姿を現し、牙と爪が月光に光る。数が多いな、ざっと見て20体以上はいるだろうか? ゴロゴロと唸り声を上げながら迫ってくる魔獣たちに、俺たちの緊張感も高まる。ここで逃げるわけにはいかない。俺たちは一斉に戦闘態勢に入った。

 まずはリーシャさんの槍が魔獣たちに向かって投げられる。鋭い風を切る音と共に、槍は勢いよく飛び、一体の魔獣の頭部を貫通して絶命させた。血が地面に飛び散り、土に染み込む。エリスも銃を構え、魔獣たちを撃つ。銃声が夜の静寂を切り裂き、一体ずつ確実に仕留めていく。彼女の裂けたスカートが動きに合わせて揺れ、太ももがチラリと見えるが、戦闘に集中している様子が頼もしい。

 俺も拳に炎を灯し、魔獣たちに殴りかかる。炎を纏った拳が魔獣の胴体を貫き、焦げた匂いが辺りに広がる。熱気が肌を焦がし、魔獣の唸り声が断末魔に変わる。次々と倒していく中、俺の上位互換といわれる男、上級傭兵(ランクルビー)獅子の戦士レグルスが動き出した。


「炎よ、我が刀に宿りて煌めき、敵を焼き尽くさん。炎刃煌エンブレイズ・グローリー


 レグルスの曲刀に炎が集まり、その炎の刃で魔獣たちを斬り裂く。彼の曲刀はまるで太陽の光のように輝き、赤い炎が夜闇を照らす。彼を中心に燃え上がる焔は周囲の敵を焼き尽くし、草木すら灰に変えるほどの威力だ。地面が焦げ、熱風が俺の顔を撫でる。彼が通った後は草の一本も残らないだろう。それほどの破壊力を持つ技に、俺は改めて彼の強さを実感した。やはりこの男は本物だ。俺の上位互換というのも頷ける。

 数分ほどの戦闘の後、20体いた魔獣たちは全滅したようだ。地面には焦げた魔獣の死体が転がり、血と灰の匂いが混じる。俺たちが一息つくと、レグルスさんが話しかけてきた。


「……アクイラ。強くなりたいか?」

「強くですか?」


 レグルスさんはニヤリと笑う。俺は彼の真意を掴めず、困惑してしまう。彼はそんな俺を見てまた笑った。


「俺が鍛えてやるよ」

「いいんですか?」

「ああ、その代わり条件がある」

「条件?」


 俺は首を傾げる。すると彼は俺の耳元で囁いたのだ。その内容はとんでもなかった。


「お前さ、女三人も連れてるじゃねーか。俺にも分けてくれよ?」


 俺は彼の言葉の意味を理解するまで数秒かかった。そして理解すると同時に顔が引きつったのを感じた。彼はそんな俺を見てまた笑うのだった。


「返事は?」

「……」

「おい?」

「炎の守護、我が身を囲みて鎧となれ。炎焔の鎧(エンフレクス・アルマ)!」


 俺は手足に炎を灯し、レグルスさんに殴りかかる。怒りが込み上げ、全身が熱くなる。


炎盾創造エンシールド・イグニス


 レグルスさんは詠唱破棄で炎の盾を作り、俺の攻撃を簡単に防いだ。赤い炎がぶつかり合い、火花が散る。


「殺気が高いじゃねーか」


 彼は笑いながら言うが、俺はまだ警戒を解かない。拳を握り直し、次の攻撃を準備する。


「炎よ、我が手から放たれん炎弾、烈しく飛べ」


 レグルスが右手に炎の弾を作り、それを俺に向ける。オレンジ色の炎が渦を巻き、圧倒的な熱量が迫ってくる。俺はそれを防ごうと炎の鎧を前面に集中するが、相手の魔力量がどんどん増していくのが分かる。空気が歪み、地面が微かに震える。そのタイミングだった。


魔力断斬マジカ・セヴェリオ


 チョキンという金属音が響き、直後に女性の声が聞こえたと同時に、俺とレグルスさんの魔法が解除され、一気に脱力感に襲われる。俺たちはその場に倒れこむと、手持ち鋏を持ったマーレアさんがにっこりと笑っていた。彼女の紫色の髪が風に揺れ、上品な仕草で鋏をくるりと回す。だがその時、彼女が鋏を手に持ったまま軽く跳ねた拍子に、スカートの裾が引っかかり、ライトパープルのフレアスカートが一瞬めくれ上がった。白い太ももがチラリと見え、彼女の慌てた動きが愛らしい。


「きゃっ!? もう……」


 マーレアさんが驚いて声を上げ、慌ててスカートを押さえる。彼女の顔が珍しく赤くなり、普段の優雅さが崩れる瞬間だった。俺は倒れたままその光景を見て、少し目を奪われる。レグルスさんも地面に座ったまま「ほう」と呟き、ニヤリと笑う。


「マ、マーレアさん!? 大丈夫ですか!?」


 近くにいたエリスが慌てて駆け寄り、マーレアさんのスカートを直すのを手伝う。マーレアさんは咳払いをして気を取り直すと、俺たちに鋭い視線を向けた。


「二人とも、いい加減にしてくださいまし。こんなところで喧嘩なんて、見苦しいですよ」


 俺とレグルスさんは顔を見合わせ、気まずそうに立ち上がった。俺は戦闘の疲れと脱力感に襲われながらその場を後にしたのだった。

名前: マーレア

性別: 女性

年齢: 27歳

職業: 特級傭兵ランクダイヤモンド

通称: 紫花

出身: メガラ(花と緑に囲まれた静かな町)

外見: 肩まで伸びた黒髪に柔らかなウェーブがかかり、紫色の瞳が特徴。身長168cmで華奢だが、しなやかな筋肉が隠れている。小さめで端正な顔立ちが知性と冷静さを際立たせる。

服装: 薄紫色のシフォン生地上着に、肩から胸元にかけて大胆なカットが入る。紫色のレース付きミニスカートが脚を強調し、上品さを保つ。

アクセサリー: 銀のチェーンに紫の宝石が輝くネックレスと、紫の宝石のイヤリングがアクセント。両手首には細い銀のブレスレット。

武器: 両手に持つ鋏。紫色の装飾が施された鋏は、鋭さと美しさを兼ね備え、敵を瞬時に仕留める。

能力: 無属性の魔法を使いこなし、暗算による戦術立案が得意。鋏を使った近接戦闘と魔法の組み合わせで戦場を支配する。

戦闘スタイル: 冷静で理知的。相手の動きを先読みし、無駄のない攻撃で圧倒。戦場での治療やサポートも可能だが、前に出て戦うことを好む。

副業: 庭師。癒しの力を持つ特殊な植物を育て、仲間や負傷者の回復に役立てる。戦場でも小さな花を携行し、精神を落ち着かせる。

性格: 冷静で理知的。庭師としての繊細さと傭兵としての強さを併せ持ち、周囲に安定感と信頼を与える。仲間思いで、任務では常に全体を見渡す。

趣味: 園芸。美しい花や植物を育てることが心の癒し。紫色の花を特に愛好し、自宅の庭は紫の花で溢れている。

好物: フルーツタルト(特にベリー系が好き)。辛いものは苦手で、食べると少し顔をしかめる。

関係: 風の聖女ゼフィラとは親友で、彼女の天然な行動に振り回されることも。

過去: メガラで庭師として穏やかな日々を送っていたが、ある事件をきっかけに傭兵の道へ。鋏を手に持つ理由は、故郷で大切にしていた植物を守るためだった。

特技: 植物の知識が豊富で、薬草や毒草を見分ける能力を持つ。戦場で即席の薬を作ることも。

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