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炎焔の鎧  作者: なとな
第1章 出会い
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第1章14話 雷闇魔将ヴァルガス

 俺たちの目の前に立つ大男は、自らを魔の九将(マギス・ノナ)と名乗った。黒い肌に金色の瞳がギラつき、全身からバチバチと電気が漏れてる。そいつの威圧感に洞窟の空気が重くなり、俺の服の袖を掴むルーナが震えながら呟く。


「アクイラさん、あの人の魔力…………昔を思い出す」


 ルーナの声が不安でいっぱいだ。俺は彼女の肩に手を置いて落ち着かせると、ベラトリックスさんに目を向けた。こいつについてもっと知る必要がある。


「つまり、ベラトリックスさん達はあの大男に負けたってことですか?」


 俺が問うと、ベラトリックスさんがゆっくり頷いた。上級傭兵(ランクルビー)中級傭兵(ランクエメラルド)が揃ったパーティで負けたってんだから、ただ事じゃねえ。そんな俺たちの様子を見た大男が、野太い声で笑いながら答えた。


「そうだ、労働家畜にんげんよ!! それらは我が潰し、魔力量の高い雌を魔力炉にしてやったわ!! この魔の九将(マギス・ノナ)である雷闇魔将ヴァルガス!! これから貴様らの主になるものだ!!! 覚えておいた方が楽だろう?」


 なるほど、今、俺たちはこいつと戦わなきゃならねえのか。カイラさんがいるから完全な劣勢ってわけじゃないが、俺はクラマトタエムとの戦いで消耗しきってるし、ルーナは何故か異常なまでに怯えてる。どうしたもんかと思った瞬間、ルーナが震える足で前に出た。


「あ、あの…………ひ、人を灰にして殺したことは…………ありますか?」


 ルーナの声は怯えきってて、俺の胸が締め付けられる。その死に方は、ルーナの両親が殺された方法だ。こいつが犯人なんじゃないかと、彼女は考えたんだろう。


労働家畜にんげん…………答えが知りたくば、我を倒せ」


 ヴァルガスがニヤリと笑う。好戦的すぎる野郎だ。仕方ねえ、戦うしかねえみたいだ。ついでにこいつの強さを測る必要もある。次の瞬間、ヴァルガスが吹き飛んだ。だが、その場には感電したカイラさんが立ってた。


「うわああああああああ!?」

「カイラさん!! 大丈夫ですか!?」

「はぁ…………はぁ、差し違えるつもりだったん…………だけどな」


 俺は慌ててカイラさんに駆け寄った。大きな傷はねえ。雷撃に気付いてたのに、ダメージ覚悟で一撃をぶち込んだらしい。さすがだ。


「あの男……どんな威力の雷撃なんだ」


 触れるだけで感電する鎧、カイラさんとは相性が最悪だ。魔法を使わず直接攻撃しかできない彼女にとって、こいつは天敵もいいとこ。その上、カイラさんは手足が痺れてまともに動けそうにねえ。一撃でヴァルガスを吹き飛ばしてくれたが、できればそれで決着がついててほしい。そう思って奴の方を見ると、ダメージは入ってるが平然と立ち上がった。


労働家畜にんげん、そこまで消耗するとは情けないな」


 ヴァルガスが再びバチバチと帯電し始める。カイラさんはいつも一撃必殺だ。攻撃は必ず当てるし、相手の攻撃は絶対に食らわねえ。それが彼女の強さだ。だからこそ、ダメージを受けることに慣れてねえんだろう。


「仕方ありません…………私も戦います」


 カイラさんが抜けた状況で、俺とルーナの他にいるのは、ずっと磔にされてて体力の回復がままならねえ地の聖女だけだ。3対1でも圧倒的に不利だろ。


「不利だと思いましたね、アクイラさん。安心してください、私は一度、彼と戦っていますので…………戦い方は熟知しているつもりです」


 ベラトリックスさんがそう言うと、大地に手を当てて詠唱を始めた。彼女の深緑の瞳が静かに光る。


「大地の恵みよ、我が仲間を癒やし、育てよ。地芽成果(テラジェネラティオ)!」


 彼女の手が地面に触れた瞬間、俺たち三人の目の前に緑の芽が伸び、一瞬で赤い果実が実った。甘い香りが漂ってくる。


「さあ、お食べください」


 俺とルーナはそれを手に取って食べた。ベラトリックスさんは痺れて動けないカイラさんに近寄り、果実を口移しで食べさせてた。カイラさんの唇が果実と一緒にベラトリックスの指に触れ、彼女の白い頬が少し赤くなる。俺が痺れてなかったのは運が良かっただけか?

 果実は甘すぎるくらいで、口に含むと先ほどまで失ってた魔力が一気に戻ってきた。それどころか、疲労まで吹き飛んだ気がする。カイラさんも立ち上がれるくらい回復した。


「ほう? 前も見たが面白い魔法だな。だが魔族には及ばん。魔法とはそもそも魔に連なる者の法則に従った力よ! 労働家畜にんげんより魔族の方が使いこなせるのが道理ではないか?」

「本当にそうか? 人間は別に魔なんてつかないが、魔法は使える。勝手に奢って自分らの種族名に魔ってつけてる痛い種族と違って、謙虚なだけだ」


 俺たちが言い返すと、ヴァルガスが嘲笑うように鼻を鳴らした。俺たち三人はほぼ完全回復してる。ベラトリックスさんは先ほどの魔法で消耗してるみたいだから、少し休んでもらうことにした。こいつには加減なんて必要ねえし、できやしねえ。


「炎の守護、我が身を囲みて鎧となれ。炎焔の鎧(エンフレクス・アルマ)!」


 俺は全身を紅い炎で包み込んだ。熱が体を駆け巡り、拳が燃え上がる。するとヴァルガスも詠唱を始めた。


「轟く雷よ、我が身に守りを与え、鎧となれ。雷霆の鎧(ライティング・アルマ)!」


 奴は常時帯電してたのに、さらに雷の鎧を作り出し、全身を覆った。同じ鎧使いかよ。雷の強さを見る限り、もう直接触るなんて無理だ。カイラさんは下がってもらった方がいい。いや、いまだに隷属の刻印が消えてねえシルヴィアたちをこの部屋から連れ出す役目を頼むべきか?

 でも、そうなると戦力は中級傭兵(ランクエメラルド)の俺と見習い傭兵(ランクアメジスト)のルーナ、消耗した地の聖女の三人だけだ。

 カイラさんは何かを考えてる様子で下がる気配がねえ。次の瞬間、俺の視界から消え、ヴァルガスの頭に岩が叩きつけられた。岩には人ひとり分の足跡がくっきり残ってる。


「ぐわぁ!?」

「これなら蹴れるな」


 カイラさんが自慢げに笑うが、ヴァルガスはダメージを受けてても余裕そうだ。岩が尽きる前に倒しきれねえだろう。やっぱり俺たちで決定打を作らなきゃならねえ。


「行くぞ、ルーナ!」

「うん!」


 俺とルーナはヴァルガスに向かって駆けた。カイラさんも遅れて追ってくる。俺は走りながら炎を纏い、ルーナはロッドに水球を纏わせる。俺の腕が炎の腕に、ルーナのロッドが水のハンマーに変わった。左右から挟撃する形でヴァルガスの腕に一撃を叩き込むが、奴に避けられた。だが、それが本命じゃねえ!

 避けた先にカイラさんが待ち構え、クラマトタエムの死骸を足で叩きつけた。


「甘いわ!!」


 ヴァルガスの雷の鎧が広がり、カイラさんは雷が届く前に回避して離脱した。ダメージを与えられねえ。奴が前進し、俺とルーナを同時に殴りかかってきた。

 俺は両腕を前に出し、炎の出力を上げて盾を作った。ルーナは殴られた体が水に変わり、別の場所から現れる。今度はロッドの先に水の刃を作り、切りかかった。だが、どっちもヴァルガスの雷に弾かれちまった。その瞬間、ルーナのローブが雷で焦げて裂け、胸元の白い肌と薄い下着がチラリと見えた。


「ひゃっ!? や、やだっ!」


 ルーナが慌てて胸を押さえ、顔を真っ赤にして俺を睨む。


「ふむ……つまらんな。やはり家畜。我が元で労働することに残りの生を費やすと良い」


 ヴァルガスが嘲るように言うと、俺の腕を無理やり掴んできた。俺は全力で炎を灯し、奴は全力で雷を生じさせる。先に鎧がなくなった方がダメージを受ける勝負だ。俺は掴まれた腕に全身の炎を集中させた。奴も掴んだ腕に雷を集中させる。

 その一瞬が命取りだった。

 たとえ一瞬でも、雷の鎧が薄くなれば、カイラさんは感電覚悟で蹴りを入れるつもりだった。洞窟の床と天井にヒビが入る轟音と共に、ヴァルガスの脳天にカイラさんのかかと落としが炸裂した。ヴァルガスがダメージで鎧を解除した瞬間、俺の炎が奴の腕を焼いた。


「ぐううううううううううううおおおおおおおおお!?」


 ヴァルガスが苦痛に悶える。すると、俺の足元が大量の水で隆起した。ルーナが水魔法で援護してくれたんだ。サンキュー!

 俺はすべての炎を右足の裏に集中させ、跳ね上がってヴァルガスに飛び蹴りを決めた。


「喰らいやがれ!!!」

「うおおおおおおおおおおお!!」

「ぐああああああああああああああ!!!!」


 着地した瞬間、よろけて膝をつきそうになった。俺の炎がヴァルガスを包み込み、ついに奴が膝をついた。


「面白かったぞ、宿敵(にんげん)! おお、そうだ。そこの雌、いや小娘!! 問いに答えよう。労働家畜(にんげん)を灰にして殺した経験だったな? 我にはないが、魔の九将(マギス・ノナ)の一人、毒砲魔将がそのような毒を使っておったわい!!!」


 ヴァルガスは最後まで笑いながら燃え尽きた。その強さには驚愕しかない。魔の九将(マギス・ノナ)って何なんだ? 俺一人じゃ絶対に勝てなかった。カイラさんの攻撃、ルーナのアシスト、そもそもベラトリックスの回復がなけりゃ、俺たちは隷属の刻印をつけられてここを守る兵にされてたかもしれない。


「勝った…………のか」

「はぁ……はぁ……やりましたね、アクイラさん」


 ルーナが俺の回復を始めた。彼女の青い魔法が体を包み、疲れが癒えていく。カイラさんもベラトリックスに治療してもらってた。確認すると、ベラトリックスと同行してたシルヴィアたちの隷属の刻印もちゃんと消えてたようだ。やっと一息つける。

名前: リーシャ・ヴァル・エルシュワルト

二つ名: 突撃のリーシャ

年齢: 25歳

職業: 中級傭兵ランクエメラルド

出身: リヴァルディア公国

容姿: 金髪ストレート、緑の瞳、引き締まった体型

服装: 薄緑ブラウス、金装飾深緑スカート

性格: 冷静、面倒見良い、情熱家

戦闘: 槍術、迅足化シュプリータス

趣味: 旅行、薬草調合

好物: チーズ(甘いもの苦手)

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