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炎焔の鎧  作者: なとな
第8章 帰還を目指して
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第8章3話 夜営開始

 魔族たちを殲滅し終えた俺達は、奥からやってくる気配に警戒する。奥から現れたのは…………二人組の女性。あの二人は!


「ベラ! それと! …………エルフのお姉さん!」


 こちらに向かって走ってきていたのは、地の聖女ベラトリックスと、カイラさんの部下の一人の女性だ。ナリアさんじゃないとすると確か海銃のミズキさんで会ってるんだよな? 会ったのはセルヴァスの集落以来だし、会話も碌にしたことがない。


 ただ、カイラさんの仲間たちの中で、一番ルーナに似ているなと印象だった。ベラの服装は、モスグリーンとクリーム色の聖女のローブが、ベラトリックスの姿を静かに包み込んでいる。その生地は滑らかで、光の下では微かに艶を放つように見えた。胸元の深いV字の切り込みが、まるで彼女の芯の強さと柔らかさを象徴しているようで、目が自然とそこに留まる。

 腰回りの金糸の刺繍が帯のように彼女の女性らしいラインをふんわりと浮かび上がらせているが、それ以上に彼女の落ち着いた佇まいが印象的だ。風に揺れるスカートの裾から、ほんの一瞬だけ見えた細い足首。派手さはないが、あの繊細な刺繍や裾の揺れに、地に根ざした優雅さが宿っている。


 ミズキさんは、海藍色のタイトなジャケットと内側のミントグリーンのノースリーブシャツだ。スカートはジャケットと同じ海藍色のタイトスカートで動きやすさのためか深いスリットが入っていて上の方まで太ももが露出している。そのスリットから覗く、彼女の白くて細い太ももは、まるで上質な絹のように滑らかで、思わず目を奪われる。


「アクイラ様! ご無事だったのですね! 信じていましたけど! 信じていましたけど!!!」


 そう言いながらベラトリックスは俺の胸に飛び込んでくる。


「ベラ! お前も無事でよかった」


 俺は彼女をそっと抱きしめ、再会を喜び合う。彼女の頭を撫でると、柔らかそうな髪に触れ、こんな環境下なのにいい匂いが鼻腔をくすぐる。彼女は俺から離れると目を潤ませて言う。


「アクイラ様……私、アクイラ様ともう会えなかったら…………いえ、もう杞憂ですね」


 そう言って彼女はにこりと笑う。そばにいたみんなはいつの間にか俺達を囲んでいた。大半は生暖かい目で囲んでいるが、火の聖女ヴァルキリーだけは少し羨ましそうに俺を見ている。


「アクイラ? ヴァルキリー様も抱き締めて欲しそうよ?」


 アウロラが言うと、ヴァルキリーは顔を赤らめてアウロラを睨みつける。


「アウロラ、余計な事を言う必要はない」

「あら? 私は事実を言ったまでよ? 私は契約者であるアクイラと火の聖女の感情には敏感なの。ちなみにアクイラは地の聖女のおっぱいが柔らかいからもっと強く抱きしめてやろうって思っているわ」

「まて! そこまで来たら読心術じゃねーか!」


 そう言いながらも俺はつい、強めにベラトリックスを抱き締めると、彼女の胸部は押しつぶされるように形を変える。


「んっ……! んん……あぁ、アクイラ様……」


 ベラトリックスは突然の抱擁に顔を赤らめるが、抵抗はせずなすがままにされる。その感触は……確かに気持ちいいな……。するとベラトリックスが少し体をよじった。


「あの……アクイラ様……」

「あ! いや、これは……」


 俺は慌てて手を離すと彼女は恥ずかしそうに言った。


「いえ……お気になさらず……私も嫌ではありませんから……むしろもっとして欲しかったです。人前でも…………アクイラ様がお望みなら」

「いや、大丈夫だ。あとでゆっくりな?」


 俺が彼女の耳元でそう囁くと満足げに離れてくれた。


 一連の流れを見慣れているアウロラやネレイドさんは特に何も感じていなそうだが、クリスタラさんやゼフィラさんは白い目でこちらを見ている事が分かる。


「あの? 改めて私は海銃のミズキと申します。カイラ様のお弟子様」


 エルフの女性、ミズキが俺に話しかけてくる。


「俺はアクイラだ、アンタとは初めて話すな。水属性の魔法と銃使いなんだって?」

「ええ、水中に溶け込んで姿を消して戦うのが基本スタイルですが、水の弾丸を自在に操って戦う事もあります」


 なるほどな、やはり銃士はイオンみたいに姿を消して戦う戦闘スタイルが多いみたいだな。

 しかし、彼女は鋭い目をした美人だ。外見年齢は二十代半ばくらいか? エルフだからもっと上だろうけどな。


「とにかく二人も合流できましたね、あとはジェンマさんと一緒にいる人たちと出会えれば良いのですが」

「そうだ、そっちのメンバーで生死…………亡くなったやつはいるか? 今はこっちに来ている人間と可能な限り合流をしようとしているから、辛いかもだけどもしいるなら、誰か教えて欲しい」


 俺がそう尋ねると、ベラとミズキさんの表情が曇る。やはり、そういう話か。


「はい……お察しの通りです」


 誰だ? ジェンマとの繋がりは感じるから彼女は無事だろう。レクサさんはなんだかんだで化け物だし、多分無事だ。心配なのはテラとルーナだ…………リヴァイアやリオニアさんだって強者って訳じゃねーしな。イグニスはなんだかんだで無事かな。あとはエルフの剣士でユウキさんがいたっけか。


「アクイラ様、辛いことをお知らせします」


 ベラがそう言うとミズキさんが代わりに話し始める。


「私たちと一緒にいた鋼腕のイグニスが魔族の群れに飲み込まれて、何とか討伐しきった頃には彼の姿はありませんでした。生存は望めないかと思います」

「そうか…………」


 ヴァルカンだけじゃなく…………イグニスまでもが…………なんだかんだこいつらは俺の大切な友人だったな。ゼファーには申し訳ない。ただ、直接死亡を確認していないなら…………いや、完全な行方不明者まで捜索している余裕はない。もし生きているなら、自力で生き延びてほしいものだ。


「悲しむのは後だ、今は全員合流をするのが先決だな」

「そうですね…………切り替えていきましょう! 海銃のミズキ、私は強いのでご安心ください」


 そう言って笑うミズキさんの笑顔はやはりどことなくルーナに似ている。カイラさんとルーナが並んでいる時も似ていたし…………いや、今は気にする事じゃないか。


「そろそろ休憩にしましょうか」


 クリスタラさんの提案。よく見ればゼフィラさんやセリカ、それからアカンサは少し体力切れだろう。肩で息をしているようだ。


「そうですね、休息も必要でしょう。休憩と見張りを交代で行いましょうか」


 そして俺、ヴァルキリー、レグルスさん、ゼフィラさんの四人は火の管理担当となった。基本的には火属性の魔法を扱う俺達三人で火をおこし、ゼフィラさんには動ける時だけ風で火の管理を手伝って貰う事になった。


 さて、この地で長い夜の始まりだ。

残り

水の聖女ルーナ、地剣のテラ、煌姫リヴァイア、毒剣のユウキ、闇鎖闘士レクサ、掃除屋リオニア、宝石の妖精ジェンマ

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