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炎焔の鎧  作者: なとな
第8章 帰還を目指して
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第8章2話 奇跡の風

目の前でセリカ達が戦闘をしていた。


「今助ける!」


 俺はセリカと魔族の間に割って立つと、すぐに詠唱を始める。


「炎の守護、我が身を囲みて鎧となれ。炎焔の鎧(エンフレクス・アルマ)


 俺は自分の体を炎で包み込む。目の前にいる魔族に殴りかかると、アカンサやアウロラも前に出てきた。


「私も戦うわ! 暁の陽よ、その光で我が剣を照らし、我が剣に宿り力と成せ!! 暁光剣強化オリエンス・ルクス・グラディウス


 アウロラの緋色の剣がまばゆい光を放つ。それと同時に彼女の動きが速くなり、剣の光熱で目の前の魔族を焼き切る。そしてアカンサも詠唱を始めた。


「毒の針よ、無数の針となり、我が敵に嵐の如く襲い掛かれ。毒針嵐襲ヴェネヌム・アクス・テンペスタス


 アカンサが放った無数の毒針は、周囲の魔族たちを貫いていく。そして戦闘していた四人の手当てをしながら情報共有を始める事にした。


「レグルス、おかえりなさい」

「ゼフィラ様…………それからマーレア無事でいてくれた良かった」


 風の聖女のパーティは全員集合したな、俺の仲間はとくにはいないが、しいて言うなら姉のセリカくらいか。


「アクイラさん、ご無事で何よりです」

「クリスタラさん…………」


 俺がここに連れ去れるとき、クリスタラさんの判断も大きかった。あの場であれ以上犠牲を出さない最善策。だから俺は彼女を恨んでいないが、彼女からすれば数少ない犠牲として切り捨てた側の人間だ。多少は心配してくれているようだ。修行では鬼のような人だったんだけどな。


 それからネレイドさんもこちらに声をかけてくる。


「ご無事のようですね、聖女様がとても心配されていました。もちろん、私もですよ」

「ネレイドさん……」


 彼女は地の聖女の付き人で、ヴァルガスと戦った洞窟の事件から定期的に会う事もあうこともあった傭兵だ。彼女は水属性の魔法で特に波を起こして強襲する攻撃を得意とする。


「とにかくみんなと再会できてよかった」


 俺達はこれまでの事をセリカ達に話すと、俺とリーナの無事を聞いて喜ぶと同時に犠牲者が出てしまった事に暗い顔をする。特に…………特級傭兵ランクダイヤモンド森姫カイラの死は衝撃的だった。


 ここにいる面々は全員が面識のある人だ。セリカも四年前、俺の修行時代にカイラさんと親しくしてたんだっけか。そして今俺達がこの城に残っている理由も説明する。


 ここは魔王城で敵の本拠地である可能性が高い。魔王が復活する前に破壊してしまおう。ということだ。


「なるほど、状況は理解しました。そして破壊前に行方不明のメンバーを確認している最中という事ですね。城破壊に巻き込まないために」

「なるほどな…………全部理解した。破壊なら任せて置け。パワーなら特級傭兵ランクダイヤモンドにも劣ってねえ」


 クリスタラさんとレグルスさんがそう答える。やはり心強い人たちだ。


「ではまずは地の聖女、水の聖女を筆頭に行方不明のメンバーとの合流ですね、地の聖女ベラトリックス、水の聖女ルーナそれから引率していた宝石の妖精ジェンマ。彼女は貴方の位置を把握できますから再開も用意でしょう。問題は海銃のミズキ、闇鎖闘士レクサ、鋼腕のイグニス、地剣のテラ、毒剣のユウキ、煌姫リヴァイア、掃除屋リオニアですね」


 残り11人か。全員無事だと良いが、魔王城にいる以上厳しいか。


「カイラさん……」


 セリカは未だにカイラの死を引きずっているな、無理もないが……。


「とにかくこの城を探索しよう。みんなジェンマの元にいれば時期会える。そうでなくても俺達が目立てばきっと逸れたメンバーもここに集まってくれるはずだ」


 それから俺達は城の内部を探索する。エントランスには魔王軍と思われる魔族たちがおり、俺達を見つけるなり襲い掛かってきた。だが、俺の探知魔法やアウロラの暁光剣強化オリエンス・ルクス・グラディウスによって敵を切り捨てていく。


「私も加勢しましょう、鋏よ、広大な領域を断ち切り、我が道を切り開け。広域断斬(コロノ・セヴェリオ)


 マーレアさんがちょきんと鋏を鳴らす事で広範囲の空間が切り裂かれ、複数の魔族がバラバラになった。



「マーレアさん強い……あれが特級傭兵ランクダイヤモンド

「まあ、この程度でしたら問題ありませんね。それに森姫かのじょ亡き今、現役最強として雑魚相手に後れを取るわけにはいきません」


 セリカにそう答えるマーレアさん。実際彼女の魔法はどんなものでも断ち切れ、記憶や感情も斬れるすごい人だ。だが、ここにいる人たちですごいのは彼女だけではない。


「あたくし達がここで盛大に暴れれば…………」

「…………」

「へえ…………暴れるだけで味方に場所を教えられる…………わかりやすいじゃねーか! 後れを取るなよアクイラ! 炎よ、我が身を加速させん。炎速加護エクスプロス・アクセラ

「…………」

「毒の針よ、空より降り注ぎ、敵を貫け。毒針雨ポイゾン・ニードル・プレーウェ


 アカンサ、イオン、レグルスの三人が前に出るとそれぞれが攻撃を開始する。レグルスは剣を持ち、足を燃やして加速し切り付けていく。イオンは音と気配を殺しながら一体ずつ心臓をゼロ距離射撃。アカンサは毒の針の雨で後方支援だ。


 俺も拳を叩きつけながら魔族を焼き払う。魔族側も何もしてこない訳ではないが、この人たちの前では一方的な蹂躙でしかないのだろう。


「そういえばそっち側で亡くなったって情報は今のところねーのか?」

「ないわアクイラ…………でも…………楽観はできないわね 暗黒の風よ、夜を裂き、無数の花を咲かせよ。漆黒の旋風で全てを包み込め! 闇風咲花テネブリウム・ヴェントゥス・フロリス


 セリカが邪風の魔法を放つことで魔族たちをことごとく切り刻んでいく。


「…………邪…………いえ、今はそんなことを気にしている場合ではありませんね。アクイラ、奇跡を起こします、お受けなさい。聖なる風よ、汝の力を以て奇跡をもたらし、世界に希望を吹き込め。聖風奇跡セイント・ウィンド・ミラクリウム


 ゼフィラさんの奇跡の風が吹き荒れる。この風は何が起きるかわからないが周囲の状況を好転させる力がある。てゆうか、明確に風のターゲットを俺にしていないかゼフィラさん?

 そして奇跡の風が俺に吹きかかると俺は風に包まれた。


「風の鎧ですか…………いえ、そのままいつもの魔法も重ね掛けしてください」

「…………炎の守護、我が身を囲みて鎧となれ。炎焔の鎧(エンフレクス・アルマ)


 すると風と炎の鎧が混ざり合い、俺の体を覆う。


「炎が渦巻いてる…………セレナの時の蒼とは少し違うな」

「あれは火に風を送り込むことでそのものの特性を強化しています。一方今回は火、そのものを動かしているのですなので色は変わりません」

「いや、色を変えたい訳じゃねーんだけど」


 俺は炎渦巻く拳に力を籠める。そして俺はそのまま目の前の魔族を殴りつける。


「はあっ!」


 すると俺の拳から炎が吹き上がり魔族の体を焼き尽くす。


「うおこわ!?」


 しかし間違いなく強いぞこの鎧。問題は奇跡だから安定して出ないって事なんだけどな。しばらく戦闘をしていると、何人かの気配がこちらに近づいてくるのを感じた。問題は人間か魔族か…………どっちだ。

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