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炎焔の鎧  作者: なとな
第7章 敵地
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第7章9話 スピードの向こう側

 我々ジェンマ先導組は魔族たちの住む古城のようなものに入り込む。魔王の城であれば一気に叩きたいものだが、ここから感じる禍々しいものはカラスティアに来た魔の九将(マギス・ノナ)の二人の様だ。


 さて…………今の私ならセプティムスより速く動けるだろうか。あれは以前の私より速く、それでいて空間も移動する。決して見つかってはいけない相手だ。


 特に、今回の目的はルクレティアとセプティムスの討伐ではない。だから避けて通る手もあるのだが…………


 きっとセプティムスを倒せるのは世界でただ一人。…………私だ。さて…………私の考えを伝える手段があれば良いのだがもう声が届かないのだから、皆に任せよう。


 ユウキに背負われたまま周囲を見渡す。魔族がくる気配はないが、この大人数だ。バレるのも時間の問題だろう。


 アウロラ先導組はどうなったかも気になるところだが、ジェンマもアウロラもアクイラのいる場所に向かうはず。であれば最終的には合流できるだろう。


「カイラさん」


 ルーナが私の服を掴んで不安そうにしている。彼女にしてあげられる事がない。でも、せめて抱き締めるくらいなら彼女も私を感じられるだろう。ユウキから降りてルーナを抱き締める。ルーナは私にしがみ付き、震えている。


「カイラさん……私……」


 ルーナが何か言いかけた時だ。ジェンマの声が聞こえた。


「みんな! こっちよ!」


 どうやらアクイラのいる方角を探ってくれているみたいだ。彼女の案内に従い全員で移動するが…………しかし我々の進む先の空間が割れ始めた。どうやら私が同行できるのはここまでのようだ。


「よく来たな、人の子よ」

「!?」


 我々の目の前に現れたのは、大きな剣に磔にされ、宙を浮く大男の魔族、園剣魔将セプティムスだ。しかし…………


「言葉を話せただと?」

「ほう? 貴様も俺のステージまで来たか」


 セプティムスは私の言葉を正確に理解している。となると…………なるほど、こいつも元の早さに戻れなくなった孤独の世界の住民。いいや、私達たった二人きりの世界の住民というわけだ。


 周囲の者はまだセプティムスが現れたことに気付いていない。だが時期に時間も追いつくだろう。そのころには…………こいつとの決着をつけねば皆が危険だ。


 私は飛び蹴りを決めるも、向こうも私のモーションを見てから回避した。こいつ……


「どうした? まさかその程度ではなかろう?」


 セプティムスが挑発してくる。だが私はそれに乗るほど馬鹿ではない。こいつは私の攻撃に反応できるほどの実力者だ。しかし、この程度かと言われるのは心外である。ならば……


 私は更に加速する必要がありそうだ。


「森羅万象よ、我が意に従い、その流れを止めよ。時間停滞テンポス・ステーシス


 もう……………………誰も私の声が届かないなら…………せめて…………私の生きた証を…………君たちを生きて返す事で!!!!!!


 私はセプティムスを掴んでみんなから一気に駆け離れる。こいつの出現に誰もが気づく前に私が消えたことを誰も気づく間もなく……………………


「さあセプティムス!!!!! 私の生涯最後の戦闘(ラスト・ダンス)パートナーになってくれるか?」


 城外にセプティムスを投げ飛ばし、私は声をかける。


「良かろう…………同じ速さの領域に達した者同士。すべてをここで終わらせてやる」


 私はセプティムスと殴り合いを始める。互角のスピードであるために久しぶりに攻撃して回避して防御する等といった攻撃以外の行動をとることになる。


「久しい! 久しいな! これが戦闘だ!!!!」

「ふはは、貴様エルフの癖に好戦的な所は魔族と変わらんぞ」

「貴様も人の事言えんだろうが!」


 セプティムスの拳を躱して蹴りを入れる。だが、セプティムスはそれを受け流し、私の足を掴もうとしてきた。それをジャンプで回避しそのまま踵落としをくらわす。しかしセプティムスはそれも受け流した。


 私は着地と同時に回し蹴りを放つ。これはさすがにガードされたが、その隙に私は距離をとる。


「やるな」

「そっちこそ」


 私とセプティムスは互いに笑い、再び殴り合いを始めるのだった。


「さあ! 残り時間までやり合おうではないか!!」


 私は床を踏み砕き、セプティムスの喉元めがけて蹴りを入れる。セプティムスもすぐに両腕をクロスしてガードする。まだだ、まだ速さが足りない!!!!!


「森羅万象よ、我が意に従い、その流れを止めよ。時間停滞テンポス・ステーシス

「森羅万象よ、我が意に従い、その流れを止めよ。時間停滞テンポス・ステーシス


 私とセプティムスは同時に同じ魔法を詠唱する。更に加速する世界の中で私たちは刹那の攻防を繰り広げ続けた。


 これ以上の加速は……………………ふふ、はははははは!


 もう笑う事しかできないや…………

この一瞬はまだ誰もカイラさんがセプティムスを連れ出したことにすら気づけていない。

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