第7章4話 分かれ道
フリグロウスの群れを撃破した我々は、その奥に進んでいく。ルーナが不安そうにしているので、私は彼女の手を取って一緒に歩いていくことにした。ルーナはずっと私に頼っている。それは本能的な何かで感じ取っているのかもしれないな。
「ルーナ、怖いか?」
私がそう尋ねると彼女は首を横に振る。
「いいえ、カイラさんがいるから平気です」
私はルーナの頭を撫でると、彼女の手を強く握り返す。すると彼女も強く握り返してくる。そして私たちは雪の深い森の奥深くへと進んでいくのだった。
しばらくすると大きな洞窟が見えてくる。私は先行していたアウロラとジェンマの方に視線を向ける。
「この先っぽいけど…………洞窟の中が繋がっているとは限らないわ」
「んー…………どうかなぁ? わかる人いますか?」
アウロラとジェンマがそう尋ねると、いの一番に風の聖女ゼフィラが前に出てきたのだ。
「私が確かめましょう。聖なる風よ、我に正しき道を示せ。聖風導路」
ゼフィラのフレイルから風が生まれ、洞窟の中に吹き込んでいく。しばらくして戻ってくると私にこう告げたのだ。
「どうやらここは山の向こう側まで繋がっているようです」
「そうか、では行くぞ……アウロラ、ジェンマ! 準備はいいか?」
私が呼びかけると二人共頷く。私はルーナの手を強く握ったまま洞窟へと足を踏み入れたのだった。
薄暗い洞窟を進んでいくが中々終わりは見えない。しばらく進むと天井の高い空間に出ると……魔獣の気配だ。しかし、ここでは大人数での魔法の発動は洞窟を崩す恐れがある。であれば近接格闘戦メインで対応すべきだろう。
「私が片づけよう」
そう言って私は前に出る。このくらいの数一体一体蹴っていけばすぐに終わるだろう。私は歩いて一体ずつを蹴りに行く。煩わしい作業であるが、洞窟を崩さずに確実に仕留めるなら、私が一体ずつ一体ずつ急所を選んで蹴ってやるのが確実だ。
私がそれらの面倒な作業を終わらせるとセレナが声をかけてきた。
「うわぁ…………さすがカイラさん一瞬ですね。瞬きする暇もありませんよ」
「…………ああ、そうだな。私の速さなら造作もない」
私はそう答える。しかし、セレナは私の言葉に少し違和感を感じたようだ。
「カイラさん……何かありましたか?」
「……いや、何も」
私はそう言うと洞窟の奥を見据える。この先に何が待っているのかはわからないが、私のやるべき事は決まっているのだ。私はアクイラを救う。それから、ルーナを幸せにしてやるんだ。
「さあ行こう」
私がそう言うと皆も頷くのだった。明かりはアウロラを筆頭に火属性の魔法使いのおかげで洞窟は暗く感じない。
道中も魔獣がでてきたが、近接戦闘が得意なテラ、リーシャ、ジェンマ、アウロラ、ヴァルキリー、ネレイド、レグルス、イグニス、ユウキ、レン、ナリア、ゼファー、グラディアス、ヴァルカン、クリスタラで各個撃破して貰うことで問題なく洞窟を歩み進めていく。
ほとんどが強者である為、道中でつまずくことはなかった。しかし、問題が発生する。
「分かれ道か」
「風の便りでは、どちらも繋がっているとのこと。問題はどちらが正しい道かですね」
こういう時、手っ取り早いのは…………
「二手に分かれよう。幸い、我々には人数もいるし、アクイラと契約している妖精族も二人いる。これ以上は分散出来ないが、二手までなら可能だ」
私がそう言うとアウロラが頷く。
「確かに、それなら大丈夫そうね」
「なら決まりだ。あとはどう分かれるかだな」
この場には私含め29名。妖精族を別々に分けた後に戦力を半々にと言いたいが、はっきり言えばこの人数を綺麗に分けるのは難しい。得意分野でわかるにしてもばらつきが出そうだ。
であれば…………
「くじ引きで決めよう。もうそれでいいか?」
そして右に行くジェンマチームと左に行くアウロラチームで別れることになり、それぞれくじを引く。
「ふむ、俺は左か」
「私は右ですね」
「左でいいんだな」
「私は右のようですね」
「………………………………」
それぞれくじを引いては左右に分かれて貰っている。グラディアス将軍、ゼファー、イオンは左でセリカとクリスタラは右にと別れはじめ、それに続いて皆もくじを引いてジェンマ側とアウロラ側に別れていく。
そして私も最後に残ったくじを引く。
「右…………ジェンマのチームか」
これで右側に参加するメンバーは、宝石の妖精ジェンマ、水の聖女ルーナ、地の聖女ベラトリックス、獅子の戦士レグルス、鋼腕のイグニス、海銃のミズキ、地剣のテラ、氷雪のクリスタラ、闇鎖闘士レクサ、黒影花のセリカ、掃除屋リオニア、煌姫リヴァイア、波濤の影忍ネレイド、毒剣のユウキそして森姫カイラだ。
「それではアウロラよ検討を祈る」
「任せない! そっちも…………必ず生き延びなさいよね」
私は軽く頷くと、ルーナと手を繋ぎながらジェンマチームへと向かっていくのだった。
まだおおいなぁ




