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1 死体少女④


 ポンと生き返ってみたものの、家族も友達もニアを知る者はみんなとっくに土に還ってしまった。好きだった歌手も漫画家も体温のない記録と情報だけを残して消え、あまつさえ祖国さえも限界国家として滅びようとしている未来世界にたった一人放り込まれた絶望的な孤独感。

 そして、肝心の蘇生もとても生き返ったとはいえない。

 僅かに残った脳の切れ端を動かすために他人の身体と代替臓器と生体パーツを継ぎ接ぎして奇跡的な確率で再起動したに過ぎない。山本似愛由来の身体は割合にして全体の僅か1パーセント。ニアが未来世界に持ち越せたのは缶詰の桃のように半分に切られた右脳だけ。

 当然、顔は似ても似つかない他人のロリ顔だ。医師団が自己統一性のために整形することを勧めてくれたが、断った。そもそも山本似愛の記憶自体が本当に脳に残っていたものか怪しいものだ。記憶を外部ストレージに保持する技術は未来世界ではもう実用化されているのだから。


 自分は言わば―――未来世界の“フランケンシュタインの怪物”―――。


 そして、怪物がいるなら、当然、生き返らせた男(フランケンシユタイン)がいる。


 リュウヘイ・カーター・ランドルフ


 それがニアにとっての『ヴィクター・フランケンシュタイン』である。もっとも戸籍コードが人間を定義する唯一無二のデータである未来世界において名前はそれほど意味は持たない。事実、ニアも山本似愛からさっさと改名してしまっている。さらに言えば、性別さえもアバターの設定を変更するような感覚なのだからこの未来世界には全く脱帽するしかない。

 メアリー・シェリーが著した「フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス」では怪物は創造主であるヴィクター・フランケンシュタインに対して自分の花嫁を作ることを要求し、それを拒否された怪物はヴィクターやその親類を皆殺しにしたという。

 とにかく、だ。

 その物語をなぞるわけではないが、生き返ったニアにもおおよそ二つの目的()が生まれた。

 一つは自分を生き返らせた男(フランケンシユタイン博士)をぶっ殺すこと。これは絶対。

 二つめはソイツの持っているであろう自分の右脳(花嫁)を取り戻すこと。

 どうやらニアのヴィクターは生き返らせるだけでは飽き足らず、最小のパーツで自己同一性が保てるか試みたらしい。それで缶詰の桃のハーフスライスである。とんだマッドサイエンティスト野郎であり、八つ裂きにしてぶっ殺す動機には十分すぎる

 万が一、左脳側も自分と同じように生き返っていたら、ソイツもぶっ殺す。同じ世界に自分のコピーがいるなんて想像するだけでゾッとする。ソシャゲみたいに派生キャラが何体もいてたまるか。

 無論、法律的にも能力的にも赤子同然のニアがはるかに社会的地位のある男を簡単に殺せるわけがないし、生き返らせた男(フランケンシユタイン)はどういうわけか世界の表舞台から姿を消していたので足取りすら掴めないのが実情である。

 まあ、のんびりやればいい。どうせ一度は死んだ身である。

 こうして専従看護師兼お手伝いのサポートAIのAKIとともに未来世界の(復讐)生活をそれなりに満喫していた。

 しかし、ニアは今ちょっと困ったことになっていた。山が好きでもないのに奥多摩なんぞにはるばる来たのもそのトラブルのせいだ。

 ちなみに、彼女の復讐とは全く関係がない。


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