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【VRMMO】イースターエッグ・オンライン【RPG】  作者: 浦田 緋色 (ウラタ ヒイロ)
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幕間 観客席にて

ガンター達が、運営による鬼畜ムーブイベントに健気に挑戦し続けていた頃。


「新興クランすごいなぁ」


クラン対抗戦イベント。

イベント専用フィールドにある、古代の建築物を模倣したコロシアム。

そのコロシアムの観客席にて、トッププレイヤーの中でも五指に数えられているプレイヤーたちが、それぞれの席で新興クランの戦いを観戦していた。

ロロピカルは一緒に観戦していたエトルリアにそう話しかけた。


「……そうだね」


エトルリアの声は暗い。

本当は、エトワールとしてシャーロットを観戦に誘ったのだが断られたのだ。

エトワールがエトルリアとしてクラン対抗戦に参加するのは、明日だ。

だから、一日目は新興クランの実力を見るためにも観戦を予定していた。

どうせなら、とシャーロットを誘っていたのだ。


「もう、そんなに落ち込まないの。

仕方ないでしょ、シャーロットには予定があったんだから」


エトルリアはロロピカルに、シャーロットとのことを話してある。

ロロピカルはエトルリアのサブアバターについて知っているからだ。


「てっきり、リアルで予定があるものだとばかり思ってたんだもん」


シャーロットに観戦を断られた時、その日は予定があるからと言われた。

本人もいま口にしたように、てっきりリアルでなにかしら予定があるのだとばかり考えていたのだ。

しかし、エトルリアがゲームにログインしてみれば、シャーロットもログインしていたことが、フレンド登録でわかった。

おそらく、ゲーム内で知り合ったプレイヤーと狩りにでも行ったのだろう。

もしくは、新しいイースターエッグを見つけたのか。


「まあ、予定がある、だけだとねぇ」


わからなくはない、とロロピカルは苦笑した。

それから、会場の観客席をそれとなく見回す。


「それにしても、私が言うのもなんだけどトップファイブがほぼ全員揃うとは」


その視線の先には、ライバル関係にあるプレイヤー達、トップファイブと称されているもの達がいた。

クラン構成員たちと、この一日目の対抗戦を観戦しているのだ。

ロロピカルとエトルリヤ、そして視線の先にいる二名。

計四名がこの場にいる。

しかし、EEO内で最強と称されるプレイヤーはいなかった。

ランカーで、イベントの度に首位を独占しているそのプレイヤーは一匹狼で知られており、クランに所属することも、作ることもしていない。


「新興クランでも特に強そうなのは、傘下に入れようとしてんでしょ」


クランの勢力拡大を狙っている者は少なくない。

【EEO】攻略のために必要だとされているからだ。

ロロピカルとエトルリアのクランだってそうだ。


「でも、どのクランも面白いくらい隠し武器(イースターエッグ)の所持率が低いんだよねぇ」


というより、皆無に近い。

レア武器と、隠し武器であるイースターエッグは似て非なるものだ。

どちらも入手困難でレアなのは変わらない。

違いは、前者はただ強い武器でしかない。

一方、イースターエッグである隠し武器はこのゲーム内においてチートである。

隠し武器は、レア武器の上位互換なのである。

一つでも持っていれば、一騎当万の力が与えられるとされている。

けれど、このイースターエッグは公式の攻略サイトでも情報が載らず、どうやって手に入れるのかは謎とされている。

一部のガンター達の間では情報共有されているものの、その情報ですら滅多に流れてこないし。

流れてきても、尾ひれがつきまくり、なんなら偽情報でコーティングされているのだ。


「探しても、せいぜい隠し演出止まりだからね」


さらに、ガンター達を仲間に引き入れようとしても中々表に出てこない。

ガンター達はソロプレイを好み、またマイペースにゲームを遊んでいるからだ。

見つけてクランへ勧誘しても、ほぼ確実に断られる。

そして、逃げられる。

里におりてきた、猿かタヌキのごとく、逃げられるのだ。


イースターエッグを探すには、それなりの時間を掛けなければならず、また時間を掛けていると今度はゲーム攻略が疎かになってしまう。

誰よりもはやく、先に行きたい。

けれど、それをするにはイースターエッグ探しはノイズにしかならない。

しかし、そのノイズを手に入れることで強くなれるのだ。


「ほんと、面倒なシステム」


そんな雑談を交わす二人を、トップファイブの一人であるハリグヴィラは何気なくみていた。

ハリグヴィラは男性のアバターで、ガチムチマッチョな体つきをしている。

柔道着のような衣装をまとい、装備と言えば篭手くらいだ。

彼は【格闘家】のジョブであり、キャラクターもそれにそったものになっている。

その視線は、やがて二人から観客席へとうつる。

けれど、観客全てを把握することはできない。


「………さすがに見つけられない、か」


ハリグヴィラが呟いた時、隣の席に彼の右腕たるプレイヤーがやって来て座った。

それは、真っ白な衣装を纏った【聖女】のジョブにあるプレイヤーだ。

名前はアスアティカである。


「ダメでした」


残念そうにアスアティカが言う。


「どうやら、シャーロットはこの対抗戦を見に来てはいないみたいです」


「そうか」


ガンターとして、名前が知れ渡りつつあるプレイヤー。

それがシャーロットだ。

あのエトルリアが勧誘して、断られたプレイヤーである。

何よりも、ガンターとして1番有名になってしまったプレイヤーでもある。

シャーロットを仲間に加えられれば、ゲーム攻略も進むと考えていた。

なんなら、このクラン対抗戦に出場することも考えられたが、それは無かった。

とことん、ソロプレイを楽しむのがガンターらしい。

それはシャーロットだけではない。

どこのクランにも所属せず、またパーティも組まず馴れ合わない。

それが、ハリグヴィラが認識しているガンター像であった。


「なら、仕方ないな。

まぁ、これからゆっくり探せばいい」


そう呟いてハリグヴィラは、有力そうな新興クランの戦いを観戦するのだった。



そんなコロシアムの会場の外。

イベント専用フィールドであり、コロシアムの周囲は荒野が広がっている。

空は晴れ渡ったままだ。

その空に、亀裂が入り始めていた。

けれど、このフィールドに集まったプレイヤーは、クラン対抗戦の参加者か観客のどちらかのため、コロシアムの外に出ることはなく。

また、コロシアムからはその亀裂が見えなかったので誰も気づくことはなかった。

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― 新着の感想 ―
>トッププレイヤーの中でも五指に数えられているプレイヤーたちが、 >それぞれの席で新興クランの戦いを観戦していた。 ぽぽんた(パイルバンカーニキ)はガンター用イベントに参加中
[一言] あんまりな扱いしてるといつか ガンター勢力VS表向きトップ層の全面抗争に発展しそうな気がするけど(というかなって欲しい) ガンター側が相手にしてないからなぁ
[気になる点] ゲームのプレイの仕方を強制されるのってなんか違う気がしますね、形が変わるとどいつもこいつも好き勝手言って来てどつきまわしたくなりました
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