幕間 教えなくて良かったかもしれないこと
区切りとして、やりたかったホラークエストを終えた後。
シャーロットの中身こと、新太はベッドに横になって自分の手と、腕を見つめていた。
ゲーム内では、手形や髪の毛が絡みついていた。
でも、現実では当然そんな痕は全く無い。
「…………」
新太はゲーム内で、自分を川の底へと引っ張りこんだ、移民たちのことを思い出していた。
新太の記憶力はいい方だ。
そしてまだ、そんなに時間は経過していない。
だから、ほぼほぼ完璧にその時の光景を思い出すことが出来た。
あの時、薄暗い川の中でそれでも移民たちの姿ははっきり見えた。
おそらく、そう調整されていたのだろう。
そして、おそらく、わざとそうされていた。
移民たちの姿、デザイン、ほかの街や村にいるモブとそう変わらないデザインだ。
でも、一つだけおかしいことがあった。
黒髪が、いなかったのだ。
村の生者のモブにも、死者の移民のモブにも。
そしてキーキャラである、幼なじみやホムンクルスも、みんな、茶髪か金髪のような明るい髪色だったのだ。
川に引っ張り込まれたシャーロットの、腕に絡みついた真っ黒な髪の持ち主は、いなかったのである。
その事に気づいた時、新太はゾッとした。
「そういう演出だとしても、怖いよ、おばさん」
新太は苦笑しようとしたけど、さすがにちょっと怖いのを引きずっていたので、笑うことはできなかった。