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第六話

『セグメール大森林のボスが討伐されました。セグメール大森林の中間ポータルが使用可能になります。次の街、エルムテルダムへと転移できるようになりました。』

「勝った・・・のか?」

 HPの回復も忘れ、俺は数秒立ち尽くしていた。

 先ほどまでの戦いとは打って変わり、部屋の中は音一つ無い静寂で包まれていた。

 「やりましたね・・・ 私絶対に死んだと思いました・・・」

 静寂は、白髪の少女によって破られた。

 勝ったのだ。俺たち二人であのボスに。

 「ありがとうございます・・・ 本当に・・・ありがとうございます・・・」

 涙ぐんだ声の直後、後ろから少し衝撃をうけた。

 少しの間放心状態だったが、徐々に頭が働くようになり、今の状態に気づく。

 これは・・・抱きつかれている・・・!?

 「あの・・・カザキ・・・?」

 「しばらく・・・このままでも良いですか・・・?」

 駄目・・・とは言えなかった。彼女は、本当に死ぬ寸前まで至ったのだ。恐怖なども大きかっただろう。


 しばらく経った後、2人でドロップ品の確認を行っていたときだった。

 「グランド・サイズ・・・」

 ボスからのドロップ品の中に大型の鎌があった。

 ポーチから取り出してみると、真っ黒ながらところどころ赤黒くなっている、グランド・ウルフの尾についていたような大鎌であった。

 「すごいじゃないですか!!ボスドロップの武器!!」

 目を輝かせながらカザキは言う。

 「しかし重いな・・・」

 攻撃力は俺が先ほどまで使っていた槍とは比べものにならないほど高かった。

 だが如何せん重すぎるのである。正直、槍はもう諦めようと思っていたので使おうとは思ったが、とても扱いきれるとは思えない。

 「まあ、扱えなければ慣れている武器よりも弱くなっちゃいますもんね・・・」

 少し残念そうにカザキは小声で言った。

 諦めるか・・・と思っていたところ、横からの大きな声に驚いた。

 「あ!!スキルが進化できるようになってます!!!」

 このゲームは他人のウィンドウを見ることができないのでわからないが、聞くとレベルが10になったスキルは進化できるらしい。

 ということは俺もいくつかのスキルが進化できるというわけか・・・

 久々に、慣れない手つきでステータスを確認する。

____________________


クレン/人族Lv.12


スキル/《槍術の心得Lv.10》《氷属性魔法Lv.10》《観察LV.10》《暗視Lv.10》

____________________


 あれ?いつからステータス見てないっけ?

 俺の持つ4つのスキルはすべて赤く強調表示されている。

 試しに《槍術の心得》をタップしてみると、進化先の表示が記載された。


 長槍の使い手。

 薙刀の使い手。

 大鎌の使い手。


 ・・・なんてタイミングが良い。

 俺は特に考えることもなく、無意識に《大鎌使い》を選択していた。

 選択してから、薙刀にすれば良かったと思うところもあったが、悪い方向に思考をシフトせず、ボスドロップ武器を使える喜びを前面に押し出した。

 他のスキルも順当に進化し、自分のステータスが成長することを初めて楽しく思った。

____________________

 

クレン/人族Lv.12


スキル/《大鎌の使い手LV.1》《氷結魔法Lv.1》《追跡LV.1》《金眼Lv.1》

____________________


 《大鎌の使い手》は、大鎌の重量を軽くし、レベルが上がるごとに攻撃倍率が上がっていくようなスキルである。

 《氷結魔法》は今まで使っていた魔法の他に、「領域魔法」というある一定の範囲で物や地面などを凍らすことができる魔法が使えるようになるスキルだ。

 《追跡》は《観察》のスキルの効果はそのまま、それに加え、何秒か前の足跡が見えるようになるものである。

 《金眼》というスキルがわかりにくいのだが《暗視》の効果に加えて、月が出ている夜になると全体的にステータスにバフがかかるようになるようだ。

 それにしてもやはりスキルが少ないような気がする。

 10個までスキルの枠があるのだから次の街では何かを買おう。

 

 「あの・・・今更ですけど・・・フレンド登録しませんか?」

 不意にカザキがそう言った。

 「あぁ、もちろん」

 当たり前だろう。今回の勝利は俺たち二人で掴んだものだ。

 道中での遠距離攻撃、ボスに対してのヘイト稼ぎ、ダメージソースとしても活躍して貰った。

 正直に言って俺は、ここから先もパーティを組み続けていたい。

 でも、俺はきっとこれから先も好奇心を抑えることができない。

 先を見たい、もっといろんな景色を見たい、という理由だけで人の命を奪ってしまうかも知れない。

 だから辞めておこう。好奇心で死ぬのは、自分の命だけで十分だ。誰も巻き込むな。

 そう思ったときだった。

 「これから先もずっとパーティを組んでくれませんか?」

 「え・・・?」

 自分にとって都合が良すぎる誘いだったので、思わず言葉が出てしまった。

 「嫌だったら言ってください。今回私は助けられてばっかりだったですし、これからも足手まといになるかも知れませんけど・・・」

 そんなことは一切無い。むしろ俺の方こそ助けられていた。

 でも言わなくちゃならない。自分のエゴを。

 「嫌・・・ではないけどさ。俺は正直、デスゲームになってもこの世界に魅了されているんだ。

風景やそのほかの、いろいろな好奇心を刺激してくるものに対して興味を抑えられない。だから命を危険にさらしてしまうかも知れない。実際、今回だって俺は君の命を危険にさらした。2人でボスに挑んで、本当に君は死ぬところだったんだ。だから・・・」

 「私も、好奇心でここにいるんです。デスゲームだからなんだ、と思いました。そうじゃなかったら、ソロで森にまで来てないし1人で街でこもってますよ!」

 白く美しい髪を振るいながら、胸を張り、満面の笑みでそう答える。

 ・・・やっぱりこの人俺と似てたな。

 俺の中に何か温かい気持ちが芽生えたような気がした。

短くなってしまい、申し訳ございません。

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