第二話
書くの難しい・・・
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クレン/人族Lv.1
スキル/《槍術の心得Lv.1》《氷属性魔法Lv.1》《観察LV.1》《暗視Lv.1》
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名前、種族を選び終わった後、俺はアバターの製作をして種族を選ぶものだと思っていた。
だが、実際にはスキルを4つ選んだ段階でゲームスタートのファンファーレが流れ、体は青く光り、このabyssの世界に降り立つことになった。
「あれ、おかしいな? アバターを製作したり、種族とか決めるはずじゃ・・・?」
そう独り言をつぶやきながら周りを見渡してみると、どうやらここは美しい西洋の街の大広場のようだった。
現在10時32分。
始まりの街、セグメール。全体マップを開いてみるとどうやらここは最も南にあるらしい。
このゲームの時間は現実の世界とリンクしているので、太陽はギラギラと街を照らし、周囲の建物から反射光が散りばめられ街をより美しく輝かせていた。
あぁ・・・幻想的だ・・・と思いつつ大広場を離れ、大通りに向かう。
その途中、ある違和感に気がついた。
・・・何でみんな顔を見せていないんだ?
すれ違う人は皆ヘルムやサングラスなど、いずれも素顔を隠すためのものをつけていた。
また、路上には、顔を両手で覆い隠したまま座り込んでいる女性を見つけた。
「あの・・・どうされたんですか・・・?」
「・・・ガラスで自分の顔を見てみな」
声を聞くと30代くらいの方のようだった。
近くの建物のガラスで、自分の顔を見てみる。
これはどういうことだ――!?
そこには艶のある黒にに白のメッシュがところどころ入ったような髪の見慣れたような、だが確実に成長して18歳らしい、垢が抜けた俺の顔があった。
「・・・アバターが作製できなかったでしょ・・・ 運営側のバグよ・・・」
にしてもこれは致命的なバグじゃないか・・・?
しっかりとベータテストは行ったと聞いていたが・・・。
俺は小声で、「教えていただきありがとうございます」と言いその場から去ろうとした。
「まだバグはあるわよ・・・。」
「え?」
「ウィンドウを開いてみなさい、ログアウトボタンが消えているわ」
言われた通り開いてみるとそこにあるはずのログアウトボタンはなく、運営へのメッセージを送るページも存在しなかった。
通りで、顔を隠すようなプレイヤーが多い訳だ。だが、なぜこんなことができた? そして、何のために?
そこまで考えたとき、どこからともなく、頭の中に直接呼びかけるように、機械的な音声が聞こえてきた。
『やぁ、諸君。私はこの世界のゲームマスターです。今、プレイヤーの方々全員に直接話しかけています。このゲームはすでにデスゲームと化しました。よってこの世界での死は現実での死となります。人間の皆様は体が簡単に壊れてしまうのでどうか気をつけてくださいね』
デスゲーム・・・だって?
50年先の未来を先取りしたようなこのマシンだってさすがに現実世界で死亡させることは無理なはず・・・。
『現実でどうやって死ぬのかは見た方が早いでしょう。実践してくれた人がいます。』
そう言われた後、勝手にウィンドウが開き始め、ある動画を表示した。
ベッドに横たわり、バルザイ・ギアを被っている中年と思われる人が映っていた。
約30秒後、突如、体がけいれんを起こし、頭についているバルザイ・ギアが赤く発光する。
しばらくした後、けいれんは止み、中年の頭からバルザイ・ギアが外れた。
そこには・・・
そこには・・・
飛び散った頭の中身が映し出されていた。
ウィンドウが閉じると、隣から悲鳴が聞こえてきた。
そっちを見てみると先ほど両手で顔を覆っていた女性が、膝に頭をつけ、体操座りで小刻みに震えている。
俺も、「大丈夫ですか」と声をかけれるほどの余裕はなかった。
『今の通りです。このabyssの世界で4回死んでしまうとこうなってしまいます。』
誰も今の映像を見てよくできたCGだとは思わなかっただろう。
そう、これは本物だ。本能がそう言っている。
『次にこのゲームのクリア条件を言います。一回しか言いません。この世にいる “この世界に存在してはいけない者”をすべて倒しなさい。私は期待しています、彼らを上回ってくれることを・・・。』
いろいろと考えることはあった。まず、この世とはどちらの世界のことを指しているのか。
これはabyssのことだと思う。となると明らかに現実世界の者が存在するのだろうか・・・。
・・・わからない。現状どんなに考えても俺の頭では結論を出すことができなかった。
隣で泣き崩れている女性をおいて、俺は門の方に向かった。
「デスゲーム・・・かぁ・・・」
俺は門の外の草原を見ながら考える。
門の外に出て戦うか、ずっと街に引きこもりゲームがクリアされるのを待つか。
一陣の風に草花は大きく揺られ、自然の匂いが、一面に広がった。
もう答えは決まっていた。
この世界の中に入り、目が見えるようになり、自由に動けるようになり、街を一目見たときからわかってしまった。
この世界は美しく、そして、俺みたいなやつのために作られたんだな・・・と。
現実では見えないものを見たい、現実では動かせない体を自由に動かしたい、という思いはデスゲームになったとしても俺の中で変わらなかった。
「絶対にクリアしてみせる・・・!」
改めて決意した俺は門を飛び出した。
次から戦闘描写です。